JAIST Nakawake Lab
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 知識科学系
中分遥 研究室
研究室の主なテーマ
等研究室では、心理学(主に社会心理学・実験心理学)や文化情報学の手法を中心に、実験室実験・社会調査・計量テキスト分析・計算機シミュレーション・フィールド実験などを通じて、文化と人間社会の関係を実証的に明らかにすることを目的としています。
研究では「文化進化論」のアプローチに従い、「文化 = 社会的伝達による情報/知識体系」と定義し、以下の3つのテーマを中心的な対象に実証的な観点から研究しています(これら3つは広義なカテゴリーであり、厳密なカテゴリーとしての定義は目的としていません)。
① 物語(e.g.,フィクション、流言、民間伝承、フェイクニュース)
② 技術(e.g.,石器、ロボット、人工知能、技術投資)
③ 信念体系(e.g.,俗信、宗教、儀礼、道徳観)
この3つのテーマは下のセクションを参考にしてください。
なお中分遥の経歴はこちら(Reserach Map)にあります。
現代的な問題に関して
信念体系と科学技術の関連として、人工知能がもたらす恩恵と倫理的問題。また、科学技術を伝達・探索される文化情報の一形態としてメタ的に研究(適応度地形における探索課題)を推進しています。また、物語や信念体系の応用研究として、デマやフェイクニュースを含む、社会やメディア空間における意図せざる情報の拡散や操作といった認知情報戦略に関心があります。
また、生態学(群集生態学・数理生態学・行動生態学)の理論や分析手法(e.g., 生物多様性指標, 個体群動態, 最適採餌理論)を文化に適用する研究に関心があり、生態学の研究者と共同研究を実施しています。動植物のみならず、人間の文化的行動を含んだ生物文化多様性について考察し、持続可能な社会について貢献したいと考えています。
上記以外でも企業文化や地域文化、多数決といった社会制度のみならず、武術・服飾・舞踏・意匠・ポップカルチャーといった様々な文化の変遷も興味の対象となっています。人工知能やデータ科学を様々な人文科学・社会科学のテーマについて応用する方法に関心があります。
大学院生として、本研究室への配属を希望する方は 配属研究室入学前内定制度 [大学webへのLINK] の利用を強くお勧めします。利用せずに、入学した場合、①配属が大幅に遅れる、②本研究室への配属自体ができなくなる(別の研究室への配属となる)可能性があります。受験を考えた時点で早めに相談いただけると嬉しいです。研究室の方針は大学のWebページを参照ください。受験・配属を希望する方は、こちらのページ(研究室への配属を希望する方へ)を必ずお読みください。
(※ 心理学を専門としていますが、個人の精神的健康や職場のモチベーションといったテーマは専門外となるため、研究指導は難しいです。ただし、数理モデル[e.g., ゲーム理論, 社会的選択理論]などの理論的な形式で表現できる場合は、テーマとして選択可能となります。また、上記の物語・技術・信念体系と組み合わせた内容であると、私の専門と関連してきます。事前に相談いただけると提案できることも多いので、相談いただけると嬉しく思います。)
ただし、現在、臨床心理士・公認心理師で活動されている方で博士号を取得を希望する方はできる限り広いテーマに広げたいと思っています(方法は基本的には実証や計量になる)。
また、あらゆる心理学・人文社会科学領域で博士号取得を目指したが、中途退学・単位位取得退学で研究論文がいくつかある方についても、なるべきテーマを広く設定し寄り添えるように努力します。ただ、どうしても私は実証・計量を専門としますので博士論文を審査するのが難しい場合もあります。一度、相談いただければと思います(また、研究論文が無い方でも相談に乗ります)。
文化と生態学
生態学の知見、分析手法を人間文化に適応する以下の2つのプロジェクトが進行しています。こちらに関心がある方は、一緒にできると嬉しいです!
旭硝子財団 サステイナブルな未来への研究助成
「文化的多様性を評価し保全する新たな枠組み:生態学の手法を応用した定量的アプローチ」
中分遥(代表)・中䑓亮介・柴﨑祥太
地球環境学研究所 実践プロジェクト インキュベーション研究(IS)研究
「負の関係価値から考える 人間・文化・自然の連環と共創」
中䑓亮介(代表)・柴崎翔太・館石和香葉・中分遥・藤井修平
テーマ① 民間伝承・物語
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世代を超えて伝承される物語には、どのような特徴、人間の注意を奪う伝承にはどのような特徴などを研究しています。デマ・流言などの現在的テーマにも関心があります。
研究例
民話に埋め込まれた動物に関する知識:国際昔話話型カタログに収録されている動物物語を分析することで、現実の動物に関わる知識(野生動物と家畜動物の捕食・非捕食関係)が民話にも反映されていることを示した(Nakawake*, Y., & Sato*, K. (2019). Systematic quantitative analyses reveal the folk-zoological knowledge embedded in folktales. Palgrave Communications, 5(1), 1-10. [PDF] )
物語の認知的制約と適応的機能:非現実の世界を語ることができる物語は一見すると無限の可能性を持つように見える。しかし、実際には人間の持つ認知的機能によって制約を受けており、そうした制約により適応的機能(社会・自然環境への適応に役立つ機能)を獲得した可能性について議論(中分遥・久保京介・柿沼舞花・佐藤浩輔. (2024). 物語の文化進化:適応的機能と認知的基盤の観点から. 認知科学 [PDF])
その他のテーマ/取り組み中の課題
物語の残酷さの低減
生態環境が物語に与える影響
架空の生き物(e..g, 妖怪・ポケモン)を想像する認知的基盤
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テーマ② 技術探索・革新
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科学や技術を文化の一形態(多峰型適応度地形における探索課題)として捉え、メタ的な研究を行なっています。また、高度な技術を伝達する人間の心に関心があります。
研究例
AIが科学の多様性と革新に及ぼす影響:ChatGPT等のAI言語ツールが科学やイノベーションに与える影響を文化進化論の観点から議論。AIにより研究文化の均質化が起こり、長期的な視点に立つと革新を阻害する可能性を議論(Nakadai*, R., Nakawake*, Y. & Shibasaki*, S. AI language tools risk scientific diversity and innovation. Nature Human Behaviour (2023). 7, 1804-1805. [LINK] [request] via Research Gate])
人間は失敗者に学び技術を構造させるのが苦手:一見すると非合理的に見える宗教は、環境や社会に適応する上で、ヒューリスティック(準最適)として有効であることを理論・実証研究に基づき議論 (Nakawake, Y., & Kobayashi, Y. (2022). Negative observational learning might play a limited role in the cultural evolution of technology. Scientific Reports, 12(1), 970. [PDF])
その他のテーマ/取り組み中の課題
未来への科学技術投資
技術の累積的文化進化
科学のメタ的研究
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テーマ③ 信念体系
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一見すると、非合理的に見える信念体系の社会的機能、時間の経過による信念体系の変遷、信念体系が社会に与える影響などに関心を持ち研究しています。
研究例
宗教がロボットへの道徳態度に与える影響の文化差:大規模調査(4000人)ロボットに対する道徳的配慮と宗教の関係が日米で異なることを示した研究:宗教的信仰、アニミズム的信念、人間中心主義について日米で比較(Ikari, S., Sato, K., Burdett, E., Ishiguro, H., Jong, J., & Nakawake, Y*. (2023). Religion-related values differently influence moral attitude for robots in the US and Japan. Journal of Cross-Cultural Psychology. 54(6-7),742-759. [LINK][request via Research Gate])
宗教的信念の適応的合理性:一見すると非合理的に見える宗教は、環境や社会に適応する上で、ヒューリスティック(準最適)として有効であることを文化進化論の観点から理論・実証研究に基づき議論:特に、迷信・超自然的信念・儀式について着目した。 (中分 遥・石井辰典 (2022). 適応的なヒューリスティックとしての宗教の合理性 認知科学, 29(3), 433-445. [PDF])
その他のテーマ/取り組み中の課題
儀礼的行為の構造、社会的機能
占術の心理的基盤
多数決の正当性に関する信念
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