アレルギーについて
アレルギーは「国民病」とも呼ばれ、今や国民の約3分の2が何らかのアレルギーに罹患しています。アレルギーは別名を「過敏症」といい、本来であれば身体を守る免疫系が無害な因子に過敏に反応することで起こります。最も典型的なⅠ型アレルギーは、抗体の一種である「IgE」が関与しており、IgEが結合する物質のことを「アレルゲン」や「抗原」と呼びます。IgE抗体は、T細胞やB細胞といった免疫細胞の働きによって作られ、マスト細胞が発現している高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合します。ここに再度抗原がやってくると、マスト細胞の活性化が起こり、ヒスタミン等を放出します。放出されたヒスタミンは、浮腫や局所の炎症を誘導したり、循環に乗り気道閉塞・血圧低下・嘔吐などの全身症状を誘発します。
体内に侵入した抗原(アレルゲン)は、樹状細胞に捕捉され、HLAを介して提示される。これを特異的に認識する抗原受容体(TCR)を持つヘルパーT細胞(Th)が活性化されると増殖を始め、同じ抗原を特異的に認識するB細胞を活性化する。活性化B細胞は増殖を開始するとともに、クラススイッチを経てIgE抗体を産生するようになる。IgEは血流に乗り高親和性IgE受容体(FcεRI)を介してマスト細胞を感作し、抗原により架橋されると、ヒスタミン等の脱顆粒を惹起する。
アレルギーの治療や予防のためには、正しい診断が不可欠です。最も信頼性の高いアレルギー試験法は、患者に少量のアレルゲンを与えてみて、実際に症状が現れるかどうかを調べる「負荷試験」です。ただし、この試験は患者に大きな負担を強いることになります。皮膚に少量のアレルゲンを投与して、腫れ(膨疹)などの軽微な症状を誘発する「皮膚試験」もありますが、やはり患者の負担となることに違いはありません。一方、患者の血液を採取して、アレルゲンに特異的に結合するIgE量を測定する試験法(ImmunoCAP™法など)は、長期保存が可能な血清試料を用いて測定できることから、患者の負担は軽微です。ただし、アレルゲンに結合するIgEの中には、実際には症状の発現には結びつかないものもあることが知られています。
EXiLE法について
マスト細胞がIgEを介して活性化されるには、アレルゲンに結合した複数分子のIgEが、その特異的受容体である高親和性IgE受容体(FcεRI)とともに「架橋(crosslink)」される必要があります。架橋を引き金とする活性化メカニズムは、免疫系の細胞で広く共有されている自己と非自己を見分ける巧妙な仕組みの一つです。その結果、カルシウムイオン濃度上昇などの細胞内シグナル伝達が誘導され、ヒスタミンなどの物質が放出(脱顆粒)され、全身にアレルギー症状が起こることは上で述べたとおりです。カルシウムイオン濃度上昇に引き続く細胞内のイベントとして、脱顆粒以外に、転写因子NF-ATの活性化が起こることが知られています。
そこで私達は、定評あるラットの培養マスト細胞株(RBL-2H3)に、ヒトのFcεRIを発現させ、さらにNF-ATの活性化によりホタル由来の発光酵素ルシフェラーゼが発現するように遺伝子改変した細胞(RS-ATL8)を作りました。この細胞にアレルギー患者の血清をふりかけると、血清中に存在するIgEをFcεRIに結合します。そこにアレルゲンを添加することでIgEの架橋が起こると、それを引き金として誘導されるNF-ATの活性化を、ルシフェラーゼの発光として検出、定量することができます。この手法を、「IgE-Crosslinking-induced Luciferase Expression(EXiLE)法」と命名しました。
EXiLE法は、単純に血清中のアレルゲン特異的IgEの量を測定するのではなく、そのIgEの生理学的な活性を指標にするという点に特色があります。また、類似する評価法である好塩基球活性化試験(BAT)が患者の新鮮な全血試料を必要とするのに対し、EXiLE法は長期間保存可能な血清を用いて測定ができるため、後方視的研究やハイスループットスクリーニングなどにも最適です。これまでに、種々の食物アレルギーや花粉症、加水分解コムギアレルギーなど、多くのアレルギー疾患においてEXiLE法の有用性を報告しています。
近年、従来のEXiLE法よりも数倍の感度を有する新しい細胞株(HuRa-40)を用いる次世代EXiLE法を開発しました。この細胞は、ヒトとラットのキメラIgE受容体を発現しており、ヒトのIgEを介する架橋刺激を効率よくラットの細胞内シグナル伝達に変換することができます。
ヒトFcεRIを発現し、転写因子NF-ATによりルシフェラーゼ遺伝子を発現するよう改変したレポーター細胞株を用いて、患者血清中のIgEの架橋活性を感度よく評価することができる(特許第5386691号)。
ImmunoCAPに代表される従来のアレルギー試験法は、固相化抗原に結合したIgEを二次抗体を用いて検出する。
(工事中)
(工事中)