Peter Finger/Isato Nakagawa

in Taiwan その1

#17 Peter Finger/Isato Nakagawa in Taiwan その1


1 0月2日の早朝(am5:15 )にピータ一夫妻と僕は吉祥寺のホテルを出発し、成田空港に向かった。  

 何しろ朝の9時30分の便なのでこんな早い時間に移動しなくてはならない。

それにしても都心から成田空港までが遠すぎる。

昔の羽田空港の時代はまだましだったので、何故こんな遠い所に無理やり国際空港を作ったのかいまだに疑問である。


少し早めにチェック・インを済ませ、空港内のレストランで朝食をとる。

今日の便はシンガポール・エアラインのSQ987便で、台北空港まで約2時間30分のフライトである。

まあ考えてみれば琉球諸島の与那国島からは天気の良い日には台湾が見えるそうなので、

日本と台湾はとても近い距離にあるということだ。

そして時差は丁度1時間で、現地では日本時間の1時間前ということになる。

テイク・オフ後しばらくしてからブランチが運ばれてきた。

機内食というのはいつも美味いと思ったことがなくて、

まあファースト・クラスやビジネス・クラスは当然のことながら良いのだろうけど、

エコノミー・クラスはどうも座席の狭さといい、機内食といいまったく駄目である。

でも今回のシンガポール・エアラインはエコノミー・クラスでも仲々のサービスであった。

搭乗したボーイング747-400"メガトップ"は座席も多少はゆったりしていて、

機内食もエコノミー・クラスにしては良かった。

食事後に映画を楽しんでから少しすると機内アナウンスがあり、間もなく台北国際空港に着陸するという。

あっという間の本当の短いフライトであった。


到着後すぐに入国手続きをしなくてはならないので、僕とピーター達はイミグレイション・カウンターに向かう。

一昔前はこの台湾に入国する時のチェックがかなり厳しいという話をよく耳にした。

ある有名な長髪のシンセサイザー・プレイヤーが入国審査で髪が長いからという理由だけで入国を拒否されたそうだ。

そんな話を知っていたので少し緊張しながら入国審査を受けたんだけど、

すんなりと許可してくれたんで何か肩すかしをくった気分になってしまった。

でも内心ほっとしたというのが本音である。

そのあとパッゲージ・カウンターでギターとバッグを受け取り、出口に向かった。

出口には今回のワークショップとコンサートをオーガナイズしてくれているChia-wei Huang君と、

彼のギター・スクールの教え子というChi-wei Fung君が迎えに来てくれていた。

Chi-wei君と僕は1年前に面識があり、というのは彼の親戚が日本に住んでいて、

丁度1年前に彼が親戚を尋ねて来日した時に僕を尋ねてくれたのだ。

僕の事はCDを聴いて以前から知っていてくれたそうで、

ギターやギター・プレイについて話をしている時の彼の輝いている眼が今でも印象に残っている。

一方のChia-wei君はこの台湾で最初にフィンガー・スタイル・ギターに取り組んだという若者で、

と言っても35歳になるそうだが、今や台湾ではフィンガー・スタイル・ギターの第一人者だそうだ。

そして全台湾でギター・スクールを開校していて、そのスクールの校長も務めているという。

又Chi-wei君は彼の最初の教え子だとも言っていた。


台北空港からは彼らの運転する車で高速道路を走り台北市内に向かう。

取り敢えずホテルのチェック・インを済ませ、夕方から始まるワークショップまでは時聞があるので

ピーター達には部屋で休んでもらうことになった。

僕はあまり疲れていないのでChia-wei君達とコーヒーを欽みがてら市内へ出かけることにし、

向かったのはスターパックスで少しだけアメリカ・ナイズされている店が街で目に止まった。

でも以前に香港に行った時に感じたような、ほとんど西洋化されたアジアというような変な違和感はなく、

なんかとても懐かしい感じがして台湾という国が好きになってしまった。

暫しコーヒーを飲みながら彼らと話をしたあと、Chia-wei君の台北オフィスに行こうということになった。

そのオフィスでは彼らのCDや楽譜の他に、

ピーターのレーベルの何枚かのCDと楽譜も中国語の解説を加えたりして扱っていた。

その中には僕の"ドリーム・キャッチャー"も含まれていて、不思議なかんじがした。

けどよく考えてみれば、日本でも洋盤をリリースする時に日本語のライナー・ノーツや帯をつけて発売されるので、

それってオリジナル盤の国の人から見ればやっぱり不思議な気がすると思う。

でも僕のCDがこの台湾でリリースされているということはとても嬉しいし、

こちらの若いギター・ステューデン卜達に聴かれ、また教材としても使われていることを光栄に思う。


次回に続く


2000.10.6

中川イサト