Peter Finger/Isato Nakagawa

in Taiwan その2

#1 Peter Finger/Isato Nakagawa in Taiwan その2


ワークショップの行われるところは色んな文化教室が同居したピルの中の一室で、

時々講演会の時に使われる部屋らしい。

僕は今夜はプレイしないのでピーターのサウンド・オペレーターとしてサポートする事になった。

サウンド・チェックを済ませる頃には今夜のワークショップに参加する生徒達が少しずつ集まってきた。

ところで今夜のワークショップのタイトルがとてもユニークで"手指的對話"となっているのだ。

漢文を思い出して解釈していただきたい。

でも何となくそのままでもニュアンスは伝わってくると思いませんか?


ワークショップのプログラムとしては二部構成になっていて、

一曲ずつを一部、二部に分けて各曲のポイントを質疑応答を交えながら説明してゆくと言った、

正に生徒達にとっては理想的なワークショップなのである。

最初は緊張していたピーターもChi-wei君のうまい通訳もあり、直ぐに会場内は熱気を帯びてきた。

休憩をはさんだ1時間30分はあっという聞に過ぎてしまい、

それでも何人かの生徒違はピーターに質問していた。

又彼らは僕の事も既にCDで知ってくれていて、僕の楽曲についても質問されたのには驚いたし、嬉しくもあった。

ワークショップの終わったのが8時過ぎだったので、

途中から合流した中林さん、ウドーさん達と夕食を食べに行くことになった。

Chia-wei君に案内してもらい、今風のモダンな造りのタイワン料理店に入った。

地下にあるそのレストランはビルの中が吹き抜け風に作ってあり、

屋台のような雰囲気を醸し出している面白いレストランだ。

料理はまあまあといったところか。

でも皆で台湾の音楽状況とか、色んな会話をしながらの食事は楽しかった。

ところでピーターはビールが好きなので、てっきり青島ビールを注文するんだと思っていたら、

Chia-wei君が言うには台湾ビールというメーカーの方が美味いと言っていた。

青島ビールより少しだけ酸味の強い仲々美味しいビールであった。

1 1時頃ホテルに戻り今夜は早めに寝ることにする。


1 0月3日。

今日も快晴だが昨日と同じで気温が30度近くあり、おまけに湿度が高いのでやたらと蒸し暑く感じる。

日本より南に位置している国なのでこれは仕方のない事だと自分に言い聞かせることにした。

朝の9時過ぎにホテルの地下にあるレストランでピータ一夫妻、

AERというドイツのギター・アンプ会社のMr.ウドーさん、

そして台湾には詳しい中林さん達と一緒に朝食をとる。

トースト、ハム・エッグ、フレッシュ・ジユース、

それにコーヒーといったウエスタン・スタイルの朝食メニューだ。

今日のコンサートは夕方の6時30分からなので、

昼間はChia-wei君達が台北市内を案内してくれることになった。


まず僕達の向かったのが中華民国の元総統であった蒋介石を記念して建てられたという、

中正記念堂という広大な公園である。

蒋介石は1975年に逝去し、その後彼に対する敬意や思慕の気持ちから多くの献金が内外から集まり、

政府に対して中正記念堂の建立を求める国民の声が高まったという。

工事は1977から始まり、完成したのは1980年の3月だという。

大中至正門というメイン・ゲートをくぐると左右に国家音楽庁と国家戯劇院があり、

その建物の鮮やかな色使いを見て日光の東照宮を思い出してしまった。

東照宮はあきらかに中国の寺院などの建造物を真似て作られたのは間違いない。

芸文広場を突き進むとまた左右に光筆池、雲漢池といった、中国庭園によくあるような造りの池があり、

その池に沿って長い回廊が中正記念堂を囲むように作られている。

回廊の全長は何と1.2Kmlこも及ぶそうだ。

そして回廊の壁画には透かし窓が組み込まれているのは言うまでもない。


一番奥にある中正記念堂の中に入ると巨大な蒋介石の銅像が設置されたロビーがあり、

銃剣を持った二人の衛兵が左右に別れて、それこそ微動だにせず護衛の任務に付いている。

ピータ一夫妻の写真を一人の衛兵の近くで撮ろうとしたら、

向かい側の衛兵が靴を地面に叩きつけて駄目だという合図を送ってきたのには驚いてしまった。

軍隊を持った国家というものは、このような状況はそこら中で見られるのであろう。

ピータ一夫妻も僕も思わず緊張してしまった。


園内をゆっくりと回っていたら知らない間にお昼を過ぎていたので、皆でランチにしようという事になった。

Chi-wei君の知っている店があるというのでそのレストランに向かった。

台湾料理そのものは普段あまり食べる機会がないんだけど、

それでも神戸の丸玉食堂とか名古屋の味仙で何度かは食した事がある。

ただアジア料理につきもののパクチーが僕は駄目なので、Chi-wei君にその事を伝え

パクチーの入っていない料理を選んでもらう事にした。

海鮮野菜スープなどは生姜味がよく効いていて仲々美味しい、日本人の口にあった味付けだ。

チキン料理も甘辛味の美味しいものだった。

ここでもピーターは無言で黙々と食べている。

友人のアドバイスだと台湾に行ったら屋台の台湾料理を食べに行ったほうがいいと言われてたんだけど、

今回は夜にワークショップやコンサートが行われるので、どうも屋台には行けそうにない。

でもどっちにしろカエル料理だけはちょっと遠慮させていただく。


昼食後は台北市内の楽器屋を少しだけ覗き、その後ホテルで夕方の5時頃までくつろぐ事にした。

僕は今回ピーターのゲストとして数曲プレイするだけなので気分的には楽である。

でもピーターは例のごとく自室でフィンガー・トレイニングしているようだ。

今回の台湾ツアーをピーターはとても楽しみにしていたようで、

だから余計にギター・プレイにもいつも以上に集中したいのだろう。

僕もこの辺は見習わなくてはと思ってしまった。


次回に続く


2000.10.26

中川イサト