僕のギター・メンテとネイル・ケアーについて

20  僕のギター・メンテとネイル・ケアーについて


よくアマチュアの人達から、弦がよく切れるのですがそれって弾き方が悪いのでしょうか?

という質問をされる事がある。

まあ弾き方によって弦が切れるというのは、

泉谷しげるのような弾き方をしない限り滅多に切れるもんじゃありません。

(これは泉谷しげるの音楽が悪いと言っているのではないので、くれぐれも誤解のないように。)

その多くはナットの溝のスべりが悪い為に、強く弾いた時にペグとナットの間に強い張力がかかり、

その結果ペグの近くで切れてしまうのです。

ですからナットの溝のスべりを良くしてやればある程度この問題は解決できると思います。

ただブリッジ側でよく切れる場合は、サドルからブリッジ・プレートのストリング・ホールへの角度が強すぎるか、

サドルそのものが弦に対して良い当たりがしていないかのどちらかです。

まあフィンガー・ピッカーがこのブリッジ側で弦を切るということはまずないと思いますが。


僕はナットの溝のスべりを良くする為に、以前は鉛筆(2Bとかの濃いやつ)で

溝を何度かなぞってやるということを行っていました。

これは鉛筆に使われている主成分である鉛の微粒子を、ナットの溝に塗り込んでやる事によって、

弦とナットの摩擦を少し和らげるという目的があります。

丁度ボール・ベアリングとかエンジンのシリンダーをスムーズに動かす為の

潤滑油のような役目と思っていただきたい。

僕は特に3弦が最もスベリが悪いので入念に行いました。

簡単な方法なので、1~3 弦をよく切る方はお試し下さい。

ただ注意することは鉛筆の芯をよく尖らせておいて、溝全体に塗り込むようにして下さい。

ただしナットの溝が黒く汚れたように見えるので、

ギターをいつもピカピカに磨いておかないと気が済まないような綺麗好きの人にはちょっとお薦めしかねる。

でも僕は楽器の実用性の方が大事なので、全く気にしていません。


最近はハイテク素材のナットが考えだされ、カーボン・ファイパーのナットが市販されていて、

これが仲々スペリが良いのです。

僕のメインのギターのナットは全てこのカーボン・ファイバー・ナットに交換したぐらいです。

ただ素材がカーボンの為に真っ黒なナットなのです。

つまり見た目が人によっては違和感があるかも知れません。

でも僕は見た目より実用的で優れているほうが良いので、ためらう事なく取り付けました。

まあヴィンテージ・ギターのオリジナル・コンディションに拘っている人達には

無縁のパーツだとは思いますが。

後は金属の微粒子を練り込んだ練り物のナットもあるようです。

こちらは色が白いので、普通のナットを見慣れている人には違和感がないかも知れません。

又このカーボン・ファイパー・ナットに交換してから、それまでの音と変わったのです。

それも僕好みの深みのある音に。

このナットというのはとても重要なもので、ただブリッジから伸びてきた弦を受止めているだけじゃあなくて、

弾かれた弦の振動をネックやヘッドに伝えるという役目もしています。

そしてナットに使われる素材によって微妙に弦振動が変わるようです。

アイボリーに拘っている人がよくいますが、音的に優れているという根拠は全くありません。

それより直ぐにすり減ってしまうという欠点の方が目立っています。

僕はこのカーボン・ファイバー・ナットをナットの滑りも含めてとても気に入っていますが、

これはあくまでも僕が納得して使っているという事です。

個々に奮の好みが違うのは当たり前なので、貴方がどの材質のナットを使われようがそれは自由です。


さて次の話はフィンガー・ピッカーには最も大切な爪についての話です。

まあこれも必ずしもフィンガー・ピッカーだからといって、

爪で弾かなければならないという事ではありませんので、

あくまでも爪で弾いたクリーンな音が好きだという人に参考になればと思ってお教えいたします。

これも本当は自分の生爪で弾くのが良いのですが、いかんせんすぐに割れたり、欠けたりするので

なにか爪の代用に使える素材はないものかと探し回った結果ある素材を見つけたのです。

これも以前は既製品のメタルとかプラスティックのフィンガー・ピックを、

それこそ数多く試してみましたが、そのどれもが指にフィッ卜しないというか、何か違和感があるのです。

つまり指先が弦に触れているという実感がない為に微妙なタッチでの音の表現が出来ないのです。

そこで何か別の素材を直接、自分の爪に貼り付けてみようと思い、色んな素材を試してみたところ、

貴重も爪に近い素材を見つけました。

それは意外な素材で、ピンポン玉が優れていたのです。

これはセルロイドという石油から作られた素材で、その厚さといい、硬さといい、

また加工のし易さでもこれ程扱いやすい素材は他にはないでしょう。

僕は硬さがある程度しっかりしている方が良いので、オレンジ・イエローの硬球を愛用していて、

ホワイトの軟球より弦に対しての当たりがしっかりしています。

(ホワイトの硬球もひょっとしたらあるのかも知れませんが。)

接着に関しては瞬間接着剤を使うのですが、初めて装着する時かなり勇気がいりました。

でも何ら問題もなく、今では僕にとっては無くてはならない大事な備品となっています。

そして取り外しも少しだけ注意して行えば問題ありません。

アマチュアのギタリストの中には職業の関係で爪を伸ばせない人がいて、

でも爪で弾くギターのサウンドが好きだという人には良いかもしれません。

ただ瞬間接着材を使うので作業は慎重に行って下さい。

何か不都合があっても僕は責任を負い兼ねますので。

又、接着後の仕上げに関しては荒さの異なった何種類かのサンド・ペーパー

(塗料屋さんに行くと耐水ペーパーというものを販売していると思います。

 因みに800番-1500番までの何種類かの荒さのペーパーを持っているとベストです。)

を使って、ピンポン玉の表面をツルツルになるまで研ぎ出します。

最後はベルトに使っているようなレザーで研磨すればパーフェクトです。

当初は少しだけ違和感があると思いますが直ぐに慣れるでしょう。


まあ今回のお話は、あくまでも僕の個人的なギターやギター・プレイに対するアプローチなので、

参考にしようがしまいが貴方の自由です。

でもお互いに素敵なサウンドでプレイをしたいですね。


2000.12.3

中川イサト