多文化社会の心理学研究

世界の多民族国家や移民国家と比べて、日本は単一民族国家とみなされがちである。しかし、実際には古くから在日コリアンなどの民族的マイノリティの存在があり、また近年では日系ブラジル人の労働者としての受け入れや、技能実習生、留学生の受け入れ、グローバル化による海外との人材交流の活発化などにより、外国にルーツを持つ人々は日本国内で増加している。日本政府は移民政策に消極的であると言われるが、現実には日本社会はすでに移民社会に突入しているといっても過言ではない。日本社会はいま、多文化化への過渡期という重要な時期にある。そこでは、人々の間に葛藤や軋轢も生じているだろう。

 このような多文化化する日本社会の中で、(狭義の)日本人と(民族的)マイノリティは互いをどのように認識し、どのような関係を結ぶのだろうか。そして、人々の多文化社会への接し方は、人々のウェルビーイングとどのように関係しているのだろうか。これら問いに迫ることは、私たちがよりよい多文化社会の実現のために何をするべきかの手がかりを得ることにつながるだろう。