ヒーロー口上戦!α
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3・ヒーロー口上戦!α
(登場人物)
・(アルファ)レッド:♂
アルファグループのリーダーで、直情型のバカ。
本名は赤沼(あかぬま)。
・(アルファ)ブルー:♂
アルファグループの一員で、クールな好青年。
本名は青葉(あおば)。
・(アルファ)ブラック:♂
アルファグループの一員で、普段は暗く、戦闘時はハイテンション。
本名は黒豆(くろまめ)。
・(アルファ)ピンク:♀
アルファグループの紅一点で、怒るととても怖い。
本名は桃地(ももち)。
・オベリスク:♂
人間界を侵略せんと目論む、魔界の四天王のひとり、大地のオベリスク。
名前を間違えられたり、部下が付いて来なかったり、なにかと不憫な体質。
人間としての偽名は斎藤(さいとう)。
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(役表)
レッド:
ブルー:
ブラック:
ピンク:
オベリスク:
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ピンク:(ナレーション)
さんさんと光り輝く太陽。
雲ひとつ無く、どこまでも続く澄み切った青空。
今日も今日とて、平穏で、平和な1日。
……と、なるはずでした。
しかし、この世に潜む悪は前触れも無く突然に、いつでも、どこにでも現れます。
この日も某所で、1人の悪が、私達の日常を脅かさんとしていました。
オベリスク:えーっと。
……もう入っていいやつか?
ピンク:どうぞ、お好きなタイミングで。
オベリスク:あ、そう。
(咳払い)
脆弱なる人間共よ、傾聴せよ!
魔王様の御意志により、これよりこの地は、我が魔王軍が占拠する!
賛同し付き従う者には、永遠なる下僕の証たる従属の首輪を、
そうでない者には、我が闇の力を以て、嗚咽の間も無く平等なる死を与える!
さあ、10秒だけ待つ、望む方を選ぶが良い!
選ばぬと言うならそれも良いだろう、その時も等しく、無に還すまでだ!
なぁに……心配は要らぬぞ、苦痛は一瞬だ。
自らの意志すら持たぬ弱者は、安心して虫けらのように死に絶えるが良いわ!!
ピンク:そこまでよ!!
オベリスク:ぬっ、何やつ!?
レッド:トォーウ!!
ブルー:ハァーッ!!
ブラック:ヒャッホォーウ!!
オベリスク:きっ、貴様らは!
レッド:この世に悪がある限り、我らはそこに現れる!
ブルー:この世に悪がある限り、我らはそれを許さない!
ブラック:皆の笑顔を守るため、皆の平和を守るため!
ピンク:我ら、悪を誅する正義の使徒なり!
レッド:爆炎の右手! アルファレッド!!
ブルー:絶対零度の剣! アルファブルー!!
ブラック:深淵の射手! アルファブラック!!
ピンク:魅惑の鞭! アルファピンク!!
レッド:我ら、4人合わせて、
レッド:(同時に)アルファフォース!!
ブルー:(同時に)アルファフォース!!
ブラック:(同時に)アルファフォース!!
ピンク:(同時に)アルファフォース!!
オベリスク:やはり現れたか、我ら魔王軍の怨敵、アルファフォースよ!
ここで会ったが百年目、今日こそ貴様らを討ち滅ぼしてくれるわ!!
レッド:さあ、覚悟しろ!
……えーっと、なんだっけ。
オベリスク:なに?
レッド:お前、名前なんだったっけ!
名を名乗れ!
この、えー、あー、あく、悪野郎!!
オベリスク:誰が悪野郎だ!!
ふざけた奴だ、忘れたと抜かすのなら、今一度教えてやろう!
我こそは、魔王様に仕えし魔族、
ブルー:実際、社会の灰汁みたいなもんだから、強ち間違ってはいないよね。
オベリスク:魔界の四天王が1人、
ブラック:確かに、言えてるかも。
オベリスク:我が名は、大地の、
ピンク:やーい灰汁野郎ー。
オベリスク:うるせえー!! 名乗らせろよ!!
なんだよ灰汁野郎って!
中途半端に上手いこと言ってんじゃねえぞ!
大地のオベリスクだ!!
レッド:ハイチのアラベスク?
オベリスク:大地のオベリスク!
ブルー:愛知のバジリスク?
オベリスク:大地のオベリスク!!
ブラック:毎日、登別(のぼりべつ)?
オベリスク:大地のオベリスク!!!
ピンク:あ、斎藤さん。
オベリスク:仮の名前の方で呼ぶな!!
大地のオベリスク!!!
ピンク:いや、その天丼もう良いですから。
オベリスク:俺だってやりたくてやってる訳じゃないんだけど!?
そもそもお前ら、元々俺の名前知ってるだろ!
これまで散々、刃を交えているだろうが!
ピンク:あーうん、知ってます知ってます。
オベリスク:なんだその、投げやり感の極まった相槌は……
ピンク:良いから、とりあえずちょっと、作戦会議するから待ってください。
オベリスク:は?
ピンク:はい、一旦集合ー。
ブルー:えー、また?
レッド:なんだ桃地、今度は何が気に入らないんだ。
今回はちゃんと、誰も間違えなかっただろ、あいつの名前は出てなかった所までは。
ブラック:俺も、今回は大丈夫かと思ったのに。
オベリスク:おーい……?
ピンク:いや、あのね。
前々から言おうと思ってたんだけど。
長いし、小難しいのよ、口上が。
ブルー:え、とうとうそこ掘り下げちゃう?
ブラック:まあ確かに、ちょっと思ってはいたけど……
レッド:今更わざわざ言うほどの事か?
これくらいの方が様になるし、かっこいいじゃないか。
ヒーローたるもの、キャッチーなフレーズと、ダイナミックな必殺技があってこそだろ。
ピンク:それに関しては私も同意見よ、そういうのは必要だと思う。
だけど、例えそうだとしても、やっぱり、主なターゲットはちびっ子でしょ。
小さなお友達からしたら、さっきの口上の9割方は、もはや異国語なのよ。
普段使わないような言葉を並び立ててるから、雰囲気すら伝わらないわけ。
オベリスク:もしもーし。
ブルー:そうは言うけど、じゃあどこから削るんですか?
これでも結構縮めた方だと思ってましたけどね、最初に比べたら。
ブラック:……この世に悪が、の辺りとか?
ピンク:うん、まずはそこね。
正直そこ必要かなって、私も思ってた。
レッド:まずはって、そこ削ったらもう、ほぼ名乗り上げしか残らないんだけど。
ピンク:良いじゃない、それで。
ぶっちゃけ、色と名前と雰囲気さえ伝われば良いのよ。
ブルー:うわぁー、元も子も無いこと言い出した。
ブラック:正直、それくらい短い方が、俺も助かるかな。
声張るの、疲れるし……
オベリスク:おぉい!!
敵を目の前にして、何をいつまでも悠長にくっちゃべってる!
ブルー:あ、そういえばいたね。
レッド:もうちょい待てって、すぐ終わるから。
ピンク:あなたもですよ、斎藤さん。
オベリスク:だからそっちで呼ぶのやめろ!
今は大地のオベリスクだっつってんだろ!!
来ないというのならこちらから、
ピンク:……ビービーうるせえな、話聞けよ。
オベリスク:えっ。
レッド:あ、やばい。
ブラック:……裏桃地さんが出ちゃった。
ブルー:あーあ、いちいち口挟むから。
ピンク:オベリスクっつったかお前、いいか?
元はと言えばお前が、こんな人も疎らな公園の周りを、
不審者感バリバリでいつまでも彷徨いたりしてるから、
入りやすいようにわざわざ私がナレーションまで付けて、お膳立てしてやったんだろうが。
何の目的があんのか知らねえけど、こっちにもこっちの都合ってモンがあんだよ。
分かるか、おい。
分かるだろ、なあ、聴いてんのか?
オベリスク:……あ、はい。
その通りです、すみません。
ピンク:……はい、よろしい。
だからですね、斎藤さんの前口上も、大概に長いし、言葉選びがいちいち小難しいんですよ。
もっと、簡潔に纏められるでしょう?
2行、長くても3行くらいに。
オベリスク:え、はい、まあ……
やろうと思えば……出来ますけど……
ピンク:じゃあ、やってください。
やっぱり、その辺お互いに波長を合わせないと、全体のテンポが崩れるので。
オベリスク:ええ……?
いや、仮にも俺、貴様らの敵なんだけど。
そんな波長を合わせるとか言われても、
ピンク:返事は?
オベリスク:あっ、はい、分かりました。
ブラック:……よっわ……
レッド:いや、裏桃地相手は仕方無い。
シンプルに怖いもの。
ブルー:誰も勝てないよね、あんなの。
四天王相手であれならもう、僕達要らないんじゃないの?
ピンク:なんか言った?
レッド:いえ。
ブルー:別に。
ブラック:なにも。
ピンク:はい、じゃあ始めからね。
ナレーション飛ばして、斎藤さんの入りからで。
ほら、3人も一旦物陰に戻って。
ブルー:はーい、スタンバイしまーす。
レッド:一体今日は、あと何回やり直しになるかねえ。
凝り性なのも考えものだ。
ブラック:早めに帰りたいな、俺……
オベリスク:……なんだこれ、なんでこうなった。
いっそ出直したいけど、逆らったらマジで殺されそうな雰囲気だったしな……
ピンクじゃなくてブラックじゃないのか、あいつ……
……えーっと、2行、長くて3行……?
ピンク:はいテイク2、アクト!
(テイク2開始)
オベリスク:(咳払い)
ひれ伏せ、脆弱なる人間共よ!
我が名は魔界四天王が一柱、大地のオベリスクなり!
人間界はこれより、魔王軍が支配する!!
ピンク:そこまでよ!!
オベリスク:ぬっ、何やつ!?
レッド:トォーウ!!
ブルー:ハァーッ!!
ブラック:ヒャッホォーウ!!
オベリスク:きっ、貴様らは!?
レッド:爆炎の右手ぇ! アルファレッドォ!!
ブルー:絶対零度の剣ぃ! アルファブルー!!
ブラック:深淵の射手ぅ! アルファブラックゥ!!
ピンク:魅惑の鞭ぃ! アルファピンクゥ!!
レッド:我ら、4人合わせて、
レッド:(同時に)アルファフォース!!
ブルー:(同時に)アルファフォース!!
ブラック:(同時に)アルファフォース!!
ピンク:(同時に)アルファフォース!!
オベリスク:やはり現れたか、我らが宿敵アルファフォース!
今日こそ返り討ちにしてくれるわ!!
レッド:さあ、覚悟しろ!
……えー……ち、中古のテレビデオ!!
オベリスク:大地のオベリスクだよ!!
ピンク:はい、ストップ。
(テイク2終了)
ブラック:……はぁー……
ブルー:ちょっとー、赤沼さん。
せっかく良い感じだったのにさあ。
レッド:すまん、全然名前が出て来なかった。
なんだっけ、大地のオベリスクな?
オベリスク:もはやわざとだろ、中古のテレビデオってお前……!
1文字たりとも掠ってすらないし、ていうか、冒頭でちゃんと名乗っただろ!
聴いとけよ!!
レッド:悪い悪い、次はちゃんとするから。
……ん、どうした、桃地?
ピンク:いや、えっとね。
まだ改善の余地あるなー、って。
名乗り上げのくだり、もう少し簡略化しましょう。
ブラック:……え。
ブルー:え、桃地さん、それ本気で言ってます?
だいぶ省略されましたよ。
ピンク:うん、長さはまあ、今ぐらいで良いんじゃないかと思うけど。
言い回しが小難しいっていう方の改善点が直ってないのよ。
赤沼さんはなんだっけ?
レッド:え、なんだっけって、アルファレッドだけど。
ピンク:違う違う、その前。
レッド:その前……爆炎の右手?
ピンク:うん、それ。
青葉くんは?
ブルー:絶対零度の剣。
ピンク:黒豆くんは?
ブラック:……深淵の射手。
ピンク:うん、やっぱりそこなのよね、最大の問題箇所は。
レッド:なにが?
ピンク:爆炎とか絶対零度とか深淵とか言われても、
子ども相手じゃよく分かんないというか、難し過ぎると思うのよ。
ブルー:とうとう初期設定を斬り捨て始めた。
ブラック:でも、一応それぞれの代名詞的な技を表してる部分だし、そこも直しちゃうと……
ピンク:いや、無くせとまでは言わないわよ。
もっと端的で良いと思うの、爆炎とか云々かんぬん言わずに。
オベリスク:あの、俺もう帰っていいかな?
その辺はさ、貴様らで勝手にやってもらって、
ピンク:斎藤さん。
オベリスク:……なんでしょうか。
ピンク:魔界の四天王って、どんな名前でしたっけ?
オベリスク:誰ひとり覚えられてないのかよ、自信無くすわ。
一応貴様らの宿敵なんだけどな、立ち位置としては。
ピンク:そういうの良いですから。
オベリスク:……「大地のオベリスク」、「炎のグレン」、
「風のジン」、「水のルサルカ」だ。
ピンク:ほら、どう?
ブルー:あー、分かりやすいね。
誰がどんな攻撃してきそうか、名前だけですぐ分かる。
レッド:いや、大地のオベリスクは分からんだろ。
何お前、大地に働きかけて何してくるの?
ブラック:そっちに合わせて、俺たちも属性だけ言うってこと?
ピンク:そんな感じ。
今よりは分かりやすくならない?
レッド:分かりやすくはなるだろうけどさぁ。
属性にしちゃうと、炎だけは俺と被るんだよな。
ブルー:じゃあ、火とかで良いんじゃない、シンプルに。
レッド:「火のアルファレッド」ってことか?
なんか弱そうじゃないか、語呂も悪いし。
ブルー:そこは自分で考えてよ。
ピンク:というか、そう言えばなんで今日、斎藤さん1人なんですか?
他の3人は?
オベリスク:……休みだよ、今日は。
レッド:休みって、え、マジ?
そんな事ある?
近くで身を潜めて、機を窺ってるとかじゃなくて?
オベリスク:マジでいない、俺一人だ。
レッド:炎のグレンは?
オベリスク:サボリ。
ブルー:風のジンは?
オベリスク:バイト。
ブラック:水のルサルカは?
オベリスク:有給休暇。
ブルー:四天王に有休ってあるんだ。
ピンク:それならいっそ、別の日にすれば良かったのに。
四天王じゃなくて、一天王じゃないですか。
オベリスク:正直今、俺も心底そう思ってる。
ついでに言えば、未だにこんな茶番にずっと付き合わされてる意味が分からん。
レッド:まぁ良いや。
じゃあ次はそういう感じに直して、もう1回やるか。
スタンバイスタンバーイ。
ブルー:絶対零度……は、氷なのかな。
氷でいいか。
ブラック:疲れてきたんだけど……休憩しない?
ピンク:斎藤さん、前口上まだ長いから、縮めて下さいね。
ピンク:もう一言か二言くらいにしちゃってください、どうせ誰も聴いてないので。
オベリスク:あ、はい……
オベリスク:一言一句で心抉ってきやがるな、あいつ……
オベリスク:……マジで隙を見て抜け出さんと、終わらん気がしてきた。
ピンク:テイク3、アクト!
(テイク3開始)
オベリスク:我が名は大地のオベリスク!
人間共よ、我らに従え!!
ピンク:そこまでよ!!
オベリスク:ぬっ、何やつ!?
レッド:トォーウ!!
ブルー:ハァーッ!!
ブラック:ヒャッホォーウ!!
オベリスク:きっ、貴様らは!?
レッド:爆えッ、じゃなかった、なんだっけ!
あの、えー、ひ、火!
火ッ!! アルファレッドッ!!
ブルー:氷ッ!! アルファブルーッ!!
ブラック:毒ッ!! アルファブラックッ!!
ピンク:魅了ッ!! アルファピンクッ!!
レッド:我ら、4人合わせ……
ごめん、ちょっとストップ。
(テイク3終了)
ブルー:えー。
ブラック:今度はなに。
オベリスク:帰っていいかな?
レッド:ごめん、聞き捨てならないワードが聞こえたもんで、つい。
え、黒豆、お前の属性って毒なの?
ブルー:あ、確かにそこは、僕もちょっと気になった。
深淵って言ってたからてっきり、闇属性とかかと。
ブラック:まあ、一応、毒だよ。
流石に、死にはしない程度の毒を使ってるけど、
当たり所が悪かったら、3日は動けないかもね。
レッド:おっとっと、割とやべえの使ってるな、おい。
そういうの、予め言っといてくれないかな?
俺、全然知らなかったんだけど。
そんな事は露知らず、お前の弾がビュンビュン飛ぶ前線で戦ってたじゃん。
後生だから、間違っても誤射しないでくれよ。
ブラック:した事無いでしょ、ちゃんと気を付けてるよ。
ピンク:おい、赤沼。
レッド:えっ、はい!
ピンク:そんな事でいちいち止めんな、時間おしてんだよ。
ボコるぞお前。
レッド:すみません!!
……い、いやでも、今のに関しては、桃地にも問題があったんじゃないかと思うんだが。
ピンク:あ?
レッド:あっ、いや、そのぉ……
ブルー:まあ確かに、「魅了」っていうのは、分かりにくいかもね。
鞭で叩いてるのに魅了って、完全に方向性が歪んでるもの。
ピンク:あー……それもそうね。
それ以外に思い付かなかったんだけど、
確かに子どもが見るのを想定するなら、教育上よろしくなかったわ。
……じゃあ、もう、そこも無くしましょうか。
ブラック:……そこもって……
レッド:いや、それやっちゃったらもう、もはや名前だけじゃないか。
ピンク:そうだけど逆に、むしろ最初に名前さえ覚えてもらえれば、あとはこっちのもんじゃない?
極論言っちゃえば、ちゃんと名前と見た目が一致して、他と区別してもらえれば良いんだから。
細かい設定は、この際二の次よ。
ブルー:だんだん桃地さん自身も、やっつけになってきてる気がする。
ブラック:同感。
ピンク:はい、じゃあもう1回ね。
斎藤さん、あなたももう前口上要らないので、名乗りだけで良いですよ。
オベリスク:あのさ、ここまで来たら、もう俺要らなくない?
帰っていいかな?
ピンク:ダメです。
オベリスク:ええ……
ピンク:はい、冒頭からお願いします。
テイク4、アクト!
(テイク4開始、全員食い気味になるくらい巻きで)
オベリスク:(溜息)
我が名は、大地のオベリスク!!
ピンク:そこまでよ!!
オベリスク:まだ何もしてねえんだけど!?
何やつ!?
レッド:トォーウ!! アルファレッド!!
ブルー:ハァーッ!! アルファブルー!!
ブラック:ヒャッホォーウ!! アルファブラック!!
ピンク:アルファピンク!!
レッド:我ら、4人合わせて、
レッド:(同時に)アルファフォース!!
ブルー:(同時に)アルファフォース!!
ブラック:(同時に)アルファフォース!!
ピンク:(同時に)アルファフォース!!
オベリスク:やはり現れたか、アルファフォース!!
レッド:(被せて)さあ覚悟しろ、今日こそお前を倒す!!
オベリスク:え、ちょっ。
レッド:(被せて)さあ来い、さあ!!
オベリスク:生き急ぎ過ぎだよ!!
ピンク:はい、ストップ。
(テイク4終了)
オベリスク:なんだこれ、全員尿意催してんのか?
レッド:途中から迸るリビドーに抗えなくなった。
ブルー:疾走感は凄かったよ、疾走感しか無かったけど。
ブラック:もう殆ど、ただのヤケクソだったよね。
ピンク:うーん……
ブルー:総監督は、まだ何か気に入らないご様子ですけど。
レッド:おいおい冗談だろピーチガール、これ以上何をどうしようってんだ。
ピンク:いやね、ここまで来たならいっそダメ元で、1回だけやってみたいのがあるのよ。
突き詰めたら、どこまでいけるかなって。
オベリスク:ダメ元ならどうせダメだからやめとこう。
もう既に、迷走極まりつつあるから。
ここらでお開きにしよう。
ピンク:黙れ。
オベリスク:ごめんなさい。
レッド:一応聞くだけ聞くが、どんなのだ、やってみたいっていうやつは。
ブルー:何でもいいから、もうやるだけやって、今日は帰らない?
僕お腹減ってきたんだけど。
ブラック:俺も、もう飽きてきた……
オベリスク:俺はだいぶ前から、飽きてるっていうか、呆れてきてるよ。
もう帰りたいよ、切実に。
ピンク:はいはい、分かったわよ。
じゃあ、泣いても笑ってもこれが最後ね。
イメージとしては……
(間)
ピンク:はい、じゃあラストいきましょう。
テイク5、アクト!
(テイク5開始)
オベリスク:人間よ、聴くがよい!
我こそは、なんか、アレだ!
なんかすごい、すごい悪くてすごいヤツで、敵だ!
貴様らを、こう、泣いちゃうくらい大変な目に遭わせるっていうか、えー、
シッチャカでメッチャカな思いをさせてやる、逃げ惑うがいい!!
ピンク:そこまでよ!!
オベリスク:ぬっ、何やつ!?
レッド:トォーウ!!
ブルー:ハァーッ!!
ブラック:ヒャッホォーウ!!
オベリスク:きっ、貴様らは!?
レッド:赤!!
オベリスク:っお、おう、うん、そうか赤か!
そうな、お前は赤いな!!
貴様は!?
ブルー:青!!
オベリスク:青い!!
青いやつだな、分かるぞ、見れば分かる!
貴様は!?
ブラック:黒!!
オベリスク:黒だろうな、そうだろう!
むしろそうじゃなかったら、逆に困るまであるぞ!!
貴様は!?
ピンク:魅惑の鞭!
アルファピンク!!
オベリスク:ピンクであれよ!!
なんで貴様だけ最初の口上に戻ってるんだよ!
おかしいだろ!!
レッド:我ら合わせて!
レッド:(勝手なタイミングで)4人!!
ブルー:(勝手なタイミングで)4人!!
ブラック:(勝手なタイミングで)4人!!
ピンク:(勝手なタイミングで)4人!!
オベリスク:ちょっとは合わせようとしろ!!
4人なのは分かっとるわ!!
レッド:さあ、かかって来い!
この、あー、えー、てっ、敵!
この敵野郎!!
殴ったり蹴ったり、あとなんか、引っ叩いたりとかしてとっちめてやる、観念しろ!
結局名前なんだっけお前、えーっと、あれだ!
いくぞ、アラベスク!!
ブルー:覚悟しろ、バジリスク!!
ブラック:年貢の納め時だ、登別!!
ピンク:おとといきやがれ、斎藤!!
オベリスク:オ、ベ、リ、ス、ク、だって言ってんだろおが!!!
もういいよバカ!!
勝手にやってろよバカども!!
帰る! 俺はもう帰る!!
テンポだの波長だのなんざ知ったことか!!
次に会った時は四天王の力を結集して、そのふざけ散らかした息の根を止めてやるからな!!
その時まで、せいぜい怯えて暮らすが良いわ!!
あと、もう、あれだ!!
……もう何も無いわ、バーカ!!
覚えてろバーカ、バーカ!!!
(オベリスク、走り去る)
レッド:……帰ったな。
ブルー:帰っちゃったね。
ブラック:一応、戦う気はちゃんと、かろうじてあったんだけどな。
ピンク:かろうじてなのね。
レッド:いやー、今日も今日とて平和を守ったな。
戦わずして敵を退けることで、周囲の被害を最小限に抑える。
完全に、俺の作戦通りだ。
ブラック:噓ばっかり。
ブルー:それは良いけど、結局どうする、次から?
テイク数を重ねる毎に、やっつけになっていってたけど。
桃地さん的には、どのテイクが一番良さげでした?
ピンク:そうねえ。
やっぱり、元々のままでいきましょうか。
色々試したけど、なんだかんだ、元通りが一番しっくりくるわ。
ブラック:……何となく、そんな事だろうとは思ったけど。
完全に、無駄な時間だったね。
ブルー:ちょっと楽しかったのは認めるけど、全く戦ってないのに凄い体力使ったよ。
もう今日は、真っ直ぐ帰って即寝たい。
ピンク:そうね、流石に今回は、ちょっとはしゃぎ過ぎたわ。
四天王もどうせ、また暫くは何もして来ないだろうし、ゆっくり休みましょう。
今更だけど、ごめんなさいね。
散々勝手な事言って、振り回しちゃって。
私もちょっと、途中からなんか面白くなってきちゃって。
レッド:よぉし、それじゃ帰るぞ、諸君!
我らは明日も、悪と戦う!
いつまでも続く、平穏と平和のために!!
ピンク:(ナレーション)
こうして、正義の味方、アルファフォースによって、今日も平和は守られました。
ありがとう、アルファフォース。
ブルー:(ナレーション)
がんばれ、アルファフォース。
ブラック:(ナレーション)
負けるな、アルファフォース。
レッド:……あ、やべ。
戦闘用スーツに着替えるの、ずっと忘れてたわ。
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