ヒーロー口上戦!α

(関連作品)

1・たとえば、こんな四天王。

2・ヒーロー喫茶と山田さん

3・ヒーロー口上戦!α


(登場人物)

・(アルファ)レッド:♂

アルファグループのリーダーで、直情型のバカ。

本名は赤沼(あかぬま)。


・(アルファ)ブルー:♂

アルファグループの一員で、クールな好青年。

本名は青葉(あおば)。


・(アルファ)ブラック:♂

アルファグループの一員で、普段は暗く、戦闘時はハイテンション。

本名は黒豆(くろまめ)。


・(アルファ)ピンク:♀

アルファグループの紅一点で、怒るととても怖い。

本名は桃地(ももち)。


・オベリスク:♂

人間界を侵略せんと目論む、魔界の四天王のひとり、大地のオベリスク。

名前を間違えられたり、部下が付いて来なかったり、なにかと不憫な体質。

人間としての偽名は斎藤(さいとう)。


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(役表)

レッド

ブルー:

ブラック:

ピンク:

オベリスク

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ピンク:(ナレーション)

    さんさんと光り輝く太陽。

    雲ひとつ無く、どこまでも続く澄み切った青空。

    今日も今日とて、平穏で、平和な1日。

    ……と、なるはずでした。

    しかし、この世に潜む悪は前触れも無く突然に、いつでも、どこにでも現れます。

    この日も某所で、1人の悪が、私達の日常を脅かさんとしていました。


オベリスク:えーっと。

      ……もう入っていいやつか?


ピンク:どうぞ、お好きなタイミングで。


オベリスク:あ、そう。

      (咳払い)

      脆弱なる人間共よ、傾聴せよ!

      魔王様の御意志により、これよりこの地は、我が魔王軍が占拠する!

      賛同し付き従う者には、永遠なる下僕の証たる従属の首輪を、

      そうでない者には、我が闇の力を以て、嗚咽の間も無く平等なる死を与える!

      さあ、10秒だけ待つ、望む方を選ぶが良い!

      選ばぬと言うならそれも良いだろう、その時も等しく、無に還すまでだ!

      なぁに……心配は要らぬぞ、苦痛は一瞬だ。

      自らの意志すら持たぬ弱者は、安心して虫けらのように死に絶えるが良いわ!!


ピンク:そこまでよ!!


オベリスク:ぬっ、何やつ!?


レッド:トォーウ!!


ブルー:ハァーッ!!


ブラック:ヒャッホォーウ!!


オベリスク:きっ、貴様らは!


レッド:この世に悪がある限り、我らはそこに現れる!


ブルー:この世に悪がある限り、我らはそれを許さない!


ブラック:皆の笑顔を守るため、皆の平和を守るため!


ピンク:我ら、悪を誅する正義の使徒なり!


レッド:爆炎の右手! アルファレッド!!


ブルー:絶対零度の剣! アルファブルー!!


ブラック:深淵の射手! アルファブラック!!


ピンク:魅惑の鞭! アルファピンク!!


レッド:我ら、4人合わせて、


レッド:(同時に)アルファフォース!!

ブルー:(同時に)アルファフォース!!

ブラック:(同時に)アルファフォース!!

ピンク:(同時に)アルファフォース!!


オベリスク:やはり現れたか、我ら魔王軍の怨敵、アルファフォースよ!

      ここで会ったが百年目、今日こそ貴様らを討ち滅ぼしてくれるわ!!


レッド:さあ、覚悟しろ!

    ……えーっと、なんだっけ。


オベリスク:なに?


レッド:お前、名前なんだったっけ!

    名を名乗れ!

    この、えー、あー、あく、悪野郎!!


オベリスク:誰が悪野郎だ!!

      ふざけた奴だ、忘れたと抜かすのなら、今一度教えてやろう!

      我こそは、魔王様に仕えし魔族、


ブルー:実際、社会の灰汁みたいなもんだから、強ち間違ってはいないよね。


オベリスク:魔界の四天王が1人、


ブラック:確かに、言えてるかも。


オベリスク:我が名は、大地の、


ピンク:やーい灰汁野郎ー。


オベリスク:うるせえー!! 名乗らせろよ!!

      なんだよ灰汁野郎って!

      中途半端に上手いこと言ってんじゃねえぞ!

      大地のオベリスクだ!!


レッド:ハイチのアラベスク?


オベリスク:大地のオベリスク!


ブルー:愛知のバジリスク?


オベリスク:大地のオベリスク!!


ブラック:毎日、登別(のぼりべつ)?


オベリスク:大地のオベリスク!!!


ピンク:あ、斎藤さん。


オベリスク:仮の名前の方で呼ぶな!!

      大地のオベリスク!!!


ピンク:いや、その天丼もう良いですから。


オベリスク:俺だってやりたくてやってる訳じゃないんだけど!?

      そもそもお前ら、元々俺の名前知ってるだろ!

      これまで散々、刃を交えているだろうが!


ピンク:あーうん、知ってます知ってます。


オベリスク:なんだその、投げやり感の極まった相槌は……


ピンク:良いから、とりあえずちょっと、作戦会議するから待ってください。


オベリスク:は?


ピンク:はい、一旦集合ー。


ブルー:えー、また?


レッド:なんだ桃地、今度は何が気に入らないんだ。

    今回はちゃんと、誰も間違えなかっただろ、あいつの名前は出てなかった所までは


ブラック:俺も、今回は大丈夫かと思ったのに。


オベリスク:おーい……?


ピンク:いや、あのね。

    前々から言おうと思ってたんだけど。

    長いし、小難しいのよ、口上が。


ブルー:え、とうとうそこ掘り下げちゃう?


ブラック:まあ確かに、ちょっと思ってはいたけど……


レッド:今更わざわざ言うほどの事か?

    これくらいの方が様になるし、かっこいいじゃないか。

    ヒーローたるもの、キャッチーなフレーズと、ダイナミックな必殺技があってこそだろ。


ピンク:それに関しては私も同意見よ、そういうのは必要だと思う。

    だけど、例えそうだとしても、やっぱり、主なターゲットはちびっ子でしょ。

    小さなお友達からしたら、さっきの口上の9割方は、もはや異国語なのよ。

    普段使わないような言葉を並び立ててるから、雰囲気すら伝わらないわけ。


オベリスク:もしもーし。


ブルー:そうは言うけど、じゃあどこから削るんですか?

    これでも結構縮めた方だと思ってましたけどね、最初に比べたら。


ブラック:……この世に悪が、の辺りとか?


ピンク:うん、まずはそこね。

    正直そこ必要かなって、私も思ってた。


レッド:まずはって、そこ削ったらもう、ほぼ名乗り上げしか残らないんだけど。


ピンク:良いじゃない、それで。

    ぶっちゃけ、色と名前と雰囲気さえ伝われば良いのよ。


ブルー:うわぁー、元も子も無いこと言い出した。


ブラック:正直、それくらい短い方が、俺も助かるかな。

     声張るの、疲れるし……


オベリスク:おぉい!!

      敵を目の前にして、何をいつまでも悠長にくっちゃべってる!


ブルー:あ、そういえばいたね。


レッド:もうちょい待てって、すぐ終わるから。


ピンク:あなたもですよ、斎藤さん。


オベリスク:だからそっちで呼ぶのやめろ!

      今は大地のオベリスクだっつってんだろ!!

      来ないというのならこちらから、


ピンク:……ビービーうるせえな、話聞けよ。


オベリスク:えっ。


レッド:あ、やばい。


ブラック:……裏桃地さんが出ちゃった。


ブルー:あーあ、いちいち口挟むから。


ピンク:オベリスクっつったかお前、いいか?

    元はと言えばお前が、こんな人も疎らな公園の周りを、

    不審者感バリバリでいつまでも彷徨いたりしてるから、

    入りやすいようにわざわざ私がナレーションまで付けて、お膳立てしてやったんだろうが。

    何の目的があんのか知らねえけど、こっちにもこっちの都合ってモンがあんだよ。

    分かるか、おい。

    分かるだろ、なあ、聴いてんのか?


オベリスク:……あ、はい。

      その通りです、すみません。


ピンク:……はい、よろしい。

    だからですね、斎藤さんの前口上も、大概に長いし、言葉選びがいちいち小難しいんですよ。

    もっと、簡潔に纏められるでしょう?

    2行、長くても3行くらいに。


オベリスク:え、はい、まあ……

      やろうと思えば……出来ますけど……


ピンク:じゃあ、やってください。

    やっぱり、その辺お互いに波長を合わせないと、全体のテンポが崩れるので。


オベリスク:ええ……?

      いや、仮にも俺、貴様らの敵なんだけど。

      そんな波長を合わせるとか言われても、


ピンク:返事は?


オベリスク:あっ、はい、分かりました。


ブラック:……よっわ……


レッド:いや、裏桃地相手は仕方無い。

    シンプルに怖いもの。


ブルー:誰も勝てないよね、あんなの。

    四天王相手であれならもう、僕達要らないんじゃないの?


ピンク:なんか言った?


レッド:いえ。


ブルー:別に。


ブラック:なにも。


ピンク:はい、じゃあ始めからね。

    ナレーション飛ばして、斎藤さんの入りからで。

    ほら、3人も一旦物陰に戻って。


ブルー:はーい、スタンバイしまーす。


レッド:一体今日は、あと何回やり直しになるかねえ。

    凝り性なのも考えものだ。


ブラック:早めに帰りたいな、俺……


オベリスク:……なんだこれ、なんでこうなった。

      いっそ出直したいけど、逆らったらマジで殺されそうな雰囲気だったしな……

      ピンクじゃなくてブラックじゃないのか、あいつ……

      ……えーっと、2行、長くて3行……?


ピンク:はいテイク2、アクト!


(テイク2開始)


オベリスク:(咳払い)

      ひれ伏せ、脆弱なる人間共よ!

      我が名は魔界四天王が一柱、大地のオベリスクなり!

      人間界はこれより、魔王軍が支配する!!


ピンク:そこまでよ!!


オベリスク:ぬっ、何やつ!?


レッド:トォーウ!!


ブルー:ハァーッ!!


ブラック:ヒャッホォーウ!!


オベリスク:きっ、貴様らは!?


レッド:爆炎の右手ぇ! アルファレッドォ!!


ブルー:絶対零度の剣ぃ! アルファブルー!!


ブラック:深淵の射手ぅ! アルファブラックゥ!!


ピンク:魅惑の鞭ぃ! アルファピンクゥ!!


レッド:我ら、4人合わせて、


レッド:(同時に)アルファフォース!!

ブルー:(同時に)アルファフォース!!

ブラック:(同時に)アルファフォース!!

ピンク:(同時に)アルファフォース!!


オベリスク:やはり現れたか、我らが宿敵アルファフォース!

      今日こそ返り討ちにしてくれるわ!!


レッド:さあ、覚悟しろ!

    ……えー……ち、中古のテレビデオ!!


オベリスク:大地のオベリスクだよ!!


ピンク:はい、ストップ。


(テイク2終了)


ブラック:……はぁー……


ブルー:ちょっとー、赤沼さん。

    せっかく良い感じだったのにさあ。


レッド:すまん、全然名前が出て来なかった。

    なんだっけ、大地のオベリスクな?


オベリスク:もはやわざとだろ、中古のテレビデオってお前……!

      1文字たりとも掠ってすらないし、ていうか、冒頭でちゃんと名乗っただろ!

      聴いとけよ!!


レッド:悪い悪い、次はちゃんとするから。

    ……ん、どうした、桃地?


ピンク:いや、えっとね。

    まだ改善の余地あるなー、って。

    名乗り上げのくだり、もう少し簡略化しましょう。


ブラック:……え。


ブルー:え、桃地さん、それ本気で言ってます?

    だいぶ省略されましたよ。


ピンク:うん、長さはまあ、今ぐらいで良いんじゃないかと思うけど。

    言い回しが小難しいっていう方の改善点が直ってないのよ。

    赤沼さんはなんだっけ?


レッド:え、なんだっけって、アルファレッドだけど。


ピンク:違う違う、その前。


レッド:その前……爆炎の右手?


ピンク:うん、それ。

    青葉くんは?


ブルー:絶対零度の剣。


ピンク:黒豆くんは?


ブラック:……深淵の射手。


ピンク:うん、やっぱりそこなのよね、最大の問題箇所は。


レッド:なにが?


ピンク:爆炎とか絶対零度とか深淵とか言われても、

    子ども相手じゃよく分かんないというか、難し過ぎると思うのよ。


ブルー:とうとう初期設定を斬り捨て始めた。


ブラック:でも、一応それぞれの代名詞的な技を表してる部分だし、そこも直しちゃうと……


ピンク:いや、無くせとまでは言わないわよ。

    もっと端的で良いと思うの、爆炎とか云々かんぬん言わずに。


オベリスク:あの、俺もう帰っていいかな?

      その辺はさ、貴様らで勝手にやってもらって、


ピンク:斎藤さん。


オベリスク:……なんでしょうか。


ピンク:魔界の四天王って、どんな名前でしたっけ?


オベリスク:誰ひとり覚えられてないのかよ、自信無くすわ。

      一応貴様らの宿敵なんだけどな、立ち位置としては。


ピンク:そういうの良いですから。


オベリスク:……「大地のオベリスク」、「炎のグレン」、

      「風のジン」、「水のルサルカ」だ。


ピンク:ほら、どう?


ブルー:あー、分かりやすいね。

    誰がどんな攻撃してきそうか、名前だけですぐ分かる。


レッド:いや、大地のオベリスクは分からんだろ。

    何お前、大地に働きかけて何してくるの?


ブラック:そっちに合わせて、俺たちも属性だけ言うってこと?


ピンク:そんな感じ。

    今よりは分かりやすくならない?


レッド:分かりやすくはなるだろうけどさぁ。

    属性にしちゃうと、炎だけは俺と被るんだよな。


ブルー:じゃあ、火とかで良いんじゃない、シンプルに。


レッド:「火のアルファレッド」ってことか?

    なんか弱そうじゃないか、語呂も悪いし。


ブルー:そこは自分で考えてよ。


ピンク:というか、そう言えばなんで今日、斎藤さん1人なんですか?

    他の3人は?


オベリスク:……休みだよ、今日は。


レッド:休みって、え、マジ?

    そんな事ある?

    近くで身を潜めて、機を窺ってるとかじゃなくて?


オベリスク:マジでいない、俺一人だ。


レッド:炎のグレンは?


オベリスク:サボリ。


ブルー:風のジンは?


オベリスク:バイト。


ブラック:水のルサルカは?


オベリスク:有給休暇。


ブルー:四天王に有休ってあるんだ。


ピンク:それならいっそ、別の日にすれば良かったのに。

    四天王じゃなくて、一天王じゃないですか。


オベリスク:正直今、俺も心底そう思ってる。

      ついでに言えば、未だにこんな茶番にずっと付き合わされてる意味が分からん。


レッド:まぁ良いや。

    じゃあ次はそういう感じに直して、もう1回やるか。

    スタンバイスタンバーイ。


ブルー:絶対零度……は、氷なのかな。

    氷でいいか。


ブラック:疲れてきたんだけど……休憩しない?


ピンク:斎藤さん、前口上まだ長いから、縮めて下さいね。

ピンク:もう一言か二言くらいにしちゃってください、どうせ誰も聴いてないので。


オベリスク:あ、はい……

オベリスク:一言一句で心抉ってきやがるな、あいつ……

オベリスク:……マジで隙を見て抜け出さんと、終わらん気がしてきた。


ピンク:テイク3、アクト!


(テイク3開始)


オベリスク:我が名は大地のオベリスク!

      人間共よ、我らに従え!!


ピンク:そこまでよ!!


オベリスク:ぬっ、何やつ!?


レッド:トォーウ!!


ブルー:ハァーッ!!


ブラック:ヒャッホォーウ!!


オベリスク:きっ、貴様らは!?


レッド:爆えッ、じゃなかった、なんだっけ!

    あの、えー、ひ、火!

    火ッ!! アルファレッドッ!!


ブルー:氷ッ!! アルファブルーッ!!


ブラック:毒ッ!! アルファブラックッ!!


ピンク:魅了ッ!! アルファピンクッ!!


レッド:我ら、4人合わせ……

    ごめん、ちょっとストップ。


(テイク3終了)


ブルー:えー。


ブラック:今度はなに。


オベリスク:帰っていいかな?


レッド:ごめん、聞き捨てならないワードが聞こえたもんで、つい。

    え、黒豆、お前の属性って毒なの?


ブルー:あ、確かにそこは、僕もちょっと気になった。

    深淵って言ってたからてっきり、闇属性とかかと。


ブラック:まあ、一応、毒だよ。

     流石に、死にはしない程度の毒を使ってるけど、

     当たり所が悪かったら、3日は動けないかもね。


レッド:おっとっと、割とやべえの使ってるな、おい。

    そういうの、予め言っといてくれないかな?

    俺、全然知らなかったんだけど。

    そんな事は露知らず、お前の弾がビュンビュン飛ぶ前線で戦ってたじゃん。

    後生だから、間違っても誤射しないでくれよ。


ブラック:した事無いでしょ、ちゃんと気を付けてるよ。


ピンク:おい、赤沼。


レッド:えっ、はい!


ピンク:そんな事でいちいち止めんな、時間おしてんだよ。

    ボコるぞお前。


レッド:すみません!!

    ……い、いやでも、今のに関しては、桃地にも問題があったんじゃないかと思うんだが。


ピンク:あ?


レッド:あっ、いや、そのぉ……


ブルー:まあ確かに、「魅了」っていうのは、分かりにくいかもね。

    鞭で叩いてるのに魅了って、完全に方向性が歪んでるもの。


ピンク:あー……それもそうね。

    それ以外に思い付かなかったんだけど、

    確かに子どもが見るのを想定するなら、教育上よろしくなかったわ。

    ……じゃあ、もう、そこも無くしましょうか。


ブラック:……そこもって……


レッド:いや、それやっちゃったらもう、もはや名前だけじゃないか。


ピンク:そうだけど逆に、むしろ最初に名前さえ覚えてもらえれば、あとはこっちのもんじゃない?

    極論言っちゃえば、ちゃんと名前と見た目が一致して、他と区別してもらえれば良いんだから。

    細かい設定は、この際二の次よ。


ブルー:だんだん桃地さん自身も、やっつけになってきてる気がする。


ブラック:同感。


ピンク:はい、じゃあもう1回ね。

    斎藤さん、あなたももう前口上要らないので、名乗りだけで良いですよ。


オベリスク:あのさ、ここまで来たら、もう俺要らなくない?

      帰っていいかな?


ピンク:ダメです。


オベリスク:ええ……


ピンク:はい、冒頭からお願いします。

    テイク4、アクト!


(テイク4開始、全員食い気味になるくらい巻きで)


オベリスク:(溜息)

      我が名は、大地のオベリスク!!


ピンク:そこまでよ!!


オベリスク:まだ何もしてねえんだけど!?

      何やつ!?


レッド:トォーウ!! アルファレッド!!


ブルー:ハァーッ!! アルファブルー!!


ブラック:ヒャッホォーウ!! アルファブラック!!


ピンク:アルファピンク!!


レッド:我ら、4人合わせて、


レッド:(同時に)アルファフォース!!

ブルー:(同時に)アルファフォース!!

ブラック:(同時に)アルファフォース!!

ピンク:(同時に)アルファフォース!!


オベリスク:やはり現れたか、アルファフォース!!


レッド:(被せて)さあ覚悟しろ、今日こそお前を倒す!!


オベリスク:え、ちょっ。


レッド:(被せて)さあ来い、さあ!!


オベリスク:生き急ぎ過ぎだよ!!


ピンク:はい、ストップ。


(テイク4終了)


オベリスク:なんだこれ、全員尿意催してんのか?


レッド:途中から迸るリビドーに抗えなくなった。


ブルー:疾走感は凄かったよ、疾走感しか無かったけど。


ブラック:もう殆ど、ただのヤケクソだったよね。


ピンク:うーん……


ブルー:総監督は、まだ何か気に入らないご様子ですけど。


レッド:おいおい冗談だろピーチガール、これ以上何をどうしようってんだ。


ピンク:いやね、ここまで来たならいっそダメ元で、1回だけやってみたいのがあるのよ。

    突き詰めたら、どこまでいけるかなって。


オベリスク:ダメ元ならどうせダメだからやめとこう。

      もう既に、迷走極まりつつあるから。

      ここらでお開きにしよう。


ピンク:黙れ。


オベリスク:ごめんなさい。


レッド:一応聞くだけ聞くが、どんなのだ、やってみたいっていうやつは。


ブルー:何でもいいから、もうやるだけやって、今日は帰らない?

    僕お腹減ってきたんだけど。


ブラック:俺も、もう飽きてきた……


オベリスク:俺はだいぶ前から、飽きてるっていうか、呆れてきてるよ。

      もう帰りたいよ、切実に。


ピンク:はいはい、分かったわよ。

    じゃあ、泣いても笑ってもこれが最後ね。

    イメージとしては……


(間)


ピンク:はい、じゃあラストいきましょう。

    テイク5、アクト!


(テイク5開始)


オベリスク:人間よ、聴くがよい!

      我こそは、なんか、アレだ!

      なんかすごい、すごい悪くてすごいヤツで、敵だ!

      貴様らを、こう、泣いちゃうくらい大変な目に遭わせるっていうか、えー、

      シッチャカでメッチャカな思いをさせてやる、逃げ惑うがいい!!


ピンク:そこまでよ!!


オベリスク:ぬっ、何やつ!?


レッド:トォーウ!!


ブルー:ハァーッ!!


ブラック:ヒャッホォーウ!!


オベリスク:きっ、貴様らは!?


レッド:赤!!


オベリスク:っお、おう、うん、そうか赤か!

      そうな、お前は赤いな!!

      貴様は!?


ブルー:青!!


オベリスク:青い!!

      青いやつだな、分かるぞ、見れば分かる!

      貴様は!?


ブラック:黒!!


オベリスク:黒だろうな、そうだろう!

      むしろそうじゃなかったら、逆に困るまであるぞ!!

      貴様は!?


ピンク:魅惑の鞭!

    アルファピンク!!


オベリスク:ピンクであれよ!!

      なんで貴様だけ最初の口上に戻ってるんだよ!

      おかしいだろ!!


レッド:我ら合わせて!


レッド:(勝手なタイミングで)4人!!

ブルー:(勝手なタイミングで)4人!!

ブラック:(勝手なタイミングで)4人!!

ピンク:(勝手なタイミングで)4人!!


オベリスク:ちょっとは合わせようとしろ!!

      4人なのは分かっとるわ!!


レッド:さあ、かかって来い!

    この、あー、えー、てっ、敵!

    この敵野郎!!

    殴ったり蹴ったり、あとなんか、引っ叩いたりとかしてとっちめてやる、観念しろ!

    結局名前なんだっけお前、えーっと、あれだ!

    いくぞ、アラベスク!!


ブルー:覚悟しろ、バジリスク!!


ブラック:年貢の納め時だ、登別!!


ピンク:おとといきやがれ、斎藤!!


オベリスク:オ、ベ、リ、ス、ク、だって言ってんだろおが!!!

      もういいよバカ!!

      勝手にやってろよバカども!!

      帰る! 俺はもう帰る!!

      テンポだの波長だのなんざ知ったことか!!

      次に会った時は四天王の力を結集して、そのふざけ散らかした息の根を止めてやるからな!!

      その時まで、せいぜい怯えて暮らすが良いわ!!

      あと、もう、あれだ!!

      ……もう何も無いわ、バーカ!!

      覚えてろバーカ、バーカ!!!


(オベリスク、走り去る)


レッド:……帰ったな。


ブルー:帰っちゃったね。


ブラック:一応、戦う気はちゃんと、かろうじてあったんだけどな。


ピンク:かろうじてなのね。


レッド:いやー、今日も今日とて平和を守ったな。

    戦わずして敵を退けることで、周囲の被害を最小限に抑える。

    完全に、俺の作戦通りだ。


ブラック:噓ばっかり。


ブルー:それは良いけど、結局どうする、次から?

    テイク数を重ねる毎に、やっつけになっていってたけど。

    桃地さん的には、どのテイクが一番良さげでした?


ピンク:そうねえ。

    やっぱり、元々のままでいきましょうか。

    色々試したけど、なんだかんだ、元通りが一番しっくりくるわ。


ブラック:……何となく、そんな事だろうとは思ったけど。

     完全に、無駄な時間だったね。


ブルー:ちょっと楽しかったのは認めるけど、全く戦ってないのに凄い体力使ったよ。

    もう今日は、真っ直ぐ帰って即寝たい。


ピンク:そうね、流石に今回は、ちょっとはしゃぎ過ぎたわ。

    四天王もどうせ、また暫くは何もして来ないだろうし、ゆっくり休みましょう。

    今更だけど、ごめんなさいね。

    散々勝手な事言って、振り回しちゃって。

    私もちょっと、途中からなんか面白くなってきちゃって。


レッド:よぉし、それじゃ帰るぞ、諸君!

    我らは明日も、悪と戦う!

    いつまでも続く、平穏と平和のために!!


ピンク:(ナレーション)

    こうして、正義の味方、アルファフォースによって、今日も平和は守られました。

    ありがとう、アルファフォース。


ブルー:(ナレーション)

    がんばれ、アルファフォース。


ブラック:(ナレーション)

     負けるな、アルファフォース。


レッド:……あ、やべ。

    戦闘用スーツに着替えるの、ずっと忘れてたわ。


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