MolView 

オンライン3D分子モデル構築ツール


「スマホで分子軌道計算」というブロブを書いた後,いろいろ調べていたらオンラインで分子の3D構造を構築するアプリが無料で公開されていることを知った.大学の研究室ではChem3D等のアプリケーションが使用できたが,退職するとフリーソフトウェアで似たような機能を有するものを探して使用せざるを得ない.もともと分子の立体構造は原子間の距離,角度,二面体角を用いたZ−マトリックスで記述することができるので,その経験を有する高齢者には最後の手段は存在する.とは言っても,画面上マウス操作(GUI方式)で作成できればそれに越したことはない.

最近は,もっぱら分子計算のインターフェース(分子計算プログラムへの受け渡し役)であるAvogadroというフリーソフトを使って三次元分子を作り,分子軌道計算を行っていたので,特に不自由はないが,その代替ソフトのひとつとして,MolViewがあることが分かった.ブラウザ上で適当に描いた平面構造式から,立体構造を作ることができる.Avogadroの場合は,以前紹介したように,ChemDrawあるいはMarvinSketchで構造式を描き,Avogadroで読み込み3Dに変換することができるが,MolViewでは画面の左右でそれを実現してくれる.以下はその概要である.

MolView の初期画面は以下の通りである.

最初からカフェインの構造式と3D変換画像が例示されている.新しい分子の構造式を描くにはトップメニューの左端のゴミ箱をクリックする.

トップメニューは左からゴミ箱,消しゴム,Undo (1操作戻る),Redo (1操作進める),原子・結合のドラッグ, 矩形選択,Lasso選択,Toggleカラーモード,Toggle骨格原子・水素表示,中心設定,構造クリーンアップ,2D→3D変換

左側には縦に単結合,二重結合,三重結合,ウエッジ結合,ハッシュ結合,ベンゼン,三員環,四員環,五員環,六員環,炭素鎖,+電荷,−電荷

シクロペンタジエノン誘導体を描いてみた.五員環を描き,二重結合部分を伸ばして末端炭素をを酸素に変え,2,3位と4,5位を二重結合に変えるとシクロペンタジエノンができる.2,3,4,5位に単結合を付け,3,4−位をフェニル基に変換すると目的とする化合物が得られれ.右図は水素を表示させた図である.

次に2D →3Dの変換をクリックすれば,右側に立体構造が表示されるので,回転させて分子全体をチェックスする.

下図はメチル基をエステルに変えたものである.炭素で伸ばした後,酸素に置換し,2D→3Dをクリック

生成した分子をMOLファイルで保存するには以下のようにする,

分子軌道計算するために,Avogadroで読み込んだ画面.

ヘキサフェニルベンゼンの例(平面で描いても立体構造は直交配座になる)

立体を指示した例(メチル基と水酸基はシス)

Cyclophaneの場合

シクロペンタジエンとシクロヘキサジエンのエキソ[4+6]付加体の立体構造(要修正例)

エキソ体(メチレン同士が反対向き)で描いた構造が3D変換するとエンド[4+6]付加体(2個のメチレンが同じ側)が描かれる.

「くざび型」水素を付加し,立体的情報を増やしてやると正常にエキソ体を描いてくれる.

エンド[4+6]付加体を与える分子描画の例

エキソ[4+6]付加体を与える分子描画の例

シクロペンタジエンとトロポン付加体でも同様の対応が必要である.

PubChem, タンパク質,結晶解析のデータベース等からも座標を読み込むことができる.

タンパク質データベース(RCSB Protein Data Bank)の表示

コラーゲン

Tryptophan Synthase (Ribbon)

Tryptophan Synthase (Bonds)

ヘモグロビン

蛋白質の機能を有する最小の分子 Chignolin(産総研)

結晶解析データベース(Crystallography Open Database)から座標を読み込み表示

アスピリンーアセトアミノフェンエステル

スペクトル検索(例  質量スペクトル)

分子座標の書き出し

構築した三次元座標を分子計算に利用するためにはToolsのメニューからExport → Mol fileを選び,実行すれば保存される.ほとんどの分子計算アプリ(例 Avogadro)で読み込むことができる.

カフェインの座標データ(caffeine.mol)

インターネット回線が早くなり,アプリケーションをパソコンに置かずにブラウザ上でオンライン処理できる時代が確実に到来している.分子軌道計算のための入力ファイルの作成はAvogadroが便利である.

参考資料

追記  2023年に入手可能なバージョンではMOPACの入力データの作成のみで, 実行はできない. MOPAC2016が公開されているので, 付属の入力支援アプリを使って実行可能である. 2022年の記事を参照ください

2023.12.7  一部修正   その他の機能については別稿を予定している.