水嶋崇一郎研究室 自然人類学/解剖学教育
Soichiro Mizushima Lab for Biological Anthropology and Anatomy Education
Soichiro Mizushima Lab for Biological Anthropology and Anatomy Education
活動のアーカイブ
・NEW POST 研究ブログ「形態人類学者のお仕事:遺跡出土人骨の鑑定」を追加しました。(2025.11.17)
・ホームページを公開しました。(2025.10.29)
・山口県下関市にて第79回日本人類学会大会に参加しました(ポスター発表・共同研究)。(2025.10.11–13)
自己紹介
神奈川県川崎市所在の聖マリアンナ医科大学で肉眼解剖学の研究室を主宰しています。上段に「水嶋崇一郎研究室」と大学らしく銘打っていますが、正式にはそんな名称は存在せず、学内では「解剖学講座(人体構造)」と呼ばれています。水嶋研究室は、私を含めた教員5名、技能員2名、秘書1名により構成されます。なお大講座として池森敦子主任教授が主宰する「解剖学講座(機能組織)」および東郷建教授が主宰する「生物学」の2教室と密に連携しながら業務を進めています。
私は解剖学の一分野の自然人類学/形態人類学を専門とし、骨のカタチから過去のヒトの有り様を復元することに関心があります。現在は縄文時代人を主要な研究対象として、彼らの骨格的特徴からどのような生前情報(性別、年齢、体格、疾病、成長パターンなど)が読み取れるのか、可能な限り慎重に検討しています。もっと言うと、われわれが見ている骨格の特徴が、太古の狩猟採集生活による賜物なのか(個体発生上獲得されたものか)、それとも何か別の要因が支配的であったのか、きちんと捉えたいというスタンスで研究を続けてきました。2015年くらいからは、各分野のエキスパートたちから少しずつお声が掛かるようになり、フローレス原人 Homo floresiensis の化石研究に従事したり、遺伝人類学的研究の後方支援をしたり、考古学上の重要テーマである「廃屋墓」の人骨群を再検証したりしています。ともすれば医学部でニッチと捉えられがちな分野の研究者として、横のつながりが広がっていくことほど有難く、また楽しいことはありません。
ところが、2024年以降、大学の膨大な講義と実習、定期試験対応に急き立てられるかたわら、篤志献体業務、委員会、学生指導、研究室運営と予算のやりくり、管理空間の修繕・改修、人事、入試、さらに多くの会議でバタついています。生来の要領の悪さも相まって、自分自身の研究時間を確保することが容易でない、というのが正直な現状です。また、スケジュールの厳しさから、論文の査読依頼をお断りせざるを得ない頻度が増えていることには、相当の心苦しさを感じています。基礎医学系の解剖学教授ってこんなに忙しいの? 多忙をきわめる臨床の先生方がハイクオリティな原著論文を生み出し続けている様を見て、どうやって研究時間を捻出しているのかと、自らのタイムマネジメントの拙さを顧み、日々悩み、結局ドタバタと動き続けています。
もちろん、医学生の教育や篤志献体業務はわれわれの最優先ミッションであり、プロフェッショナルとして全身全霊で取り組み、とても大切にしています。一方で、このまま日々の業務に忙殺されることで、「自称研究者」のようになってしまうのではないか。若いころからの筆頭原著論文へのあこがれ(こだわり)や、自分もいつか真の新発見に触れたいという当初の科学的好奇心すらも失ってしまうのではないかと、漠とした不安を募らせています。「新」発見は世に溢れ、日々プレスリリースが飛び交っていますが、まぶしい「真」発見に到達することができる研究者は、ほんのごく一握りです。その反対に、毎日の教育と業務に追われて疲弊しきり、共同発表者の繰り返しで満足し、あらゆる好奇心が霧散してしまうことだってあり得る状況は、多くの研究者が直面する現実なのではないでしょうか。私もまた、PIとなりいよいよ始まったと思ったら終わっていた、そんなスタックした感情を抱いており、そういう時期なのだろうか、こんな程度の水準で頭打ちなのだろうかと、あれこれ考えてしまいます(皆さんの声を聞きたいと切に願います)。
焦りに似た強い感情に囚われる中で、ふと、大学院時代、尊敬する指導教官のもとであくせくしていたことを思い出しました。あのころ自分は本当につたなくて、右も左も分かりませんでしたが、もっと夢見がちで、自分自身を鼓舞していたような気がします。もう一度、自らを鼓舞し、研究エフォートを最大にするような工夫を始めることはできないか、そう考えました。まずは、これまで自分が行ってきた仕事を整理し、学外に広報してみよう。その作業過程で、自分が置かれた立場と能力(できること、できないこと)をきちんと捉え直してみよう。業務の優先事項を決め、10年単位のスパンでゆっくり、確実に階段を登っていくような研究ビジョンを思い描く。大きな発見に到達するために、改めて小さな発見を積み上げることから始めよう。そう決意したのでした。やりたいことをやるという原点を忘れず、つたない大学院生のときの気持ちを取り戻す、再生活動の一環。それがこの極私的なホームページです。長文失礼。
水嶋崇一郎/主任教授
聖マリアンナ医科大学解剖学講座(人体構造)