作成日: 2025/09/03
最新更新日: 2025/09/03
名称: Al-Azif(原題) → 後に Necronomicon として知られる
翻訳名: 死霊秘法/死霊之書(中国語: 死灵之书)
著者: アブドゥル・アルハザード(Abdul Alhazred)、8世紀頃の狂詩人
内容:
邪神や異界の存在に関する記述
儀式・召喚法・古代文明の歴史
人間が知るべきでない真理
初出: 『無名都市』(1921)で「アルハザードの書」として登場
登場作品: 『ダンウィッチの怪』『狂気の山脈にて』『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』ほか多数
特徴:
現実世界には存在しない架空の書物だが、あまりに有名になり「実在すると信じる人々」まで現れた。
ダーレス以降の神話作家によって「魔導書の中心」として位置づけられた。
「ネクロノミコン」は単なる魔導書ではなく、“禁忌知識”というメタファーと捉えられる。
異界知学的に言えば、これは「知識と人間存在の限界の衝突」を象徴する。
書物は本来、知を蓄積・共有する道具だが、ここでは 「読むこと=破滅を招く」 という逆説が成立している。
哲学的には、ハイデガー的な「開示」と「隠蔽」、フーコー的な「知と権力」の関係を思い起こさせる。
「ネクロノミコン」というネーミング自体、ギリシア語の語感を借りて“実在する学術書”に偽装しているのが面白い。
ラヴクラフトは架空の文献を多数登場させたが、ネクロノミコンはとりわけ「人間が触れるべきでない知の象徴」として機能している。
異界知学的に見ると、これは「知識を得たいという欲望」と「存在の破滅」との間のパラドックスを具体化したもの。
実際に20世紀には「ネクロノミコンの実在本」が商業出版され、フィクションが現実に干渉する事例としても重要。