路面標示とは道路の車線や横断歩道,速度制限のことであり,交通のスムーズな流れと歩行者や運転者の安全を確保するために必要不可欠なものです.しかしながら,これら路面標示はその上を自動車等の車両が走行することにより劣化し,剥がれて見えなくなってしまいます.もちろん,これらの標示は屋外に設置されているものとなりますので,風雨や雪などに長期間さらされることでも劣化していきます.特に,交通量の多い都心部の交差点や雨や雪の多い地域では,その問題は深刻です.
一方,三重県では横断歩道での停止率が3.4%(2020年)と極めて低く,このことは交通安全に関する喫緊の問題としてマスコミ等でも取り上げられました.交通ルール遵守を徹底することは言うまでもありませんが,この原因の一つとして路面標示が劣化しているために運転者から認識しづらいことも指摘されています.そのため,三重県では路面標示のメンテナンスを懸命になって進めています.しかしながら,路面標示のメンテナンスは多額の経費がかかること,特に県内の管轄道路の全てをくまなくチェックしてその剥離度を評価することは多大な労力とコストがかかります.
そこで本研究室では,三重県ならびに三重県警察本部と共同で,車載カメラの画像から路面標示の劣化度合いを評価するためのシステムについて研究を進めています.ここでは,深層学習の方法を活用することにより,ドライブレコーダのような車載カメラの画像から評価対象となる路面標示を抽出し,その剥離度を評価します.評価された剥離度はGPSの位置情報とともにサーバに蓄積されます.このようなシステムが完成すると,日々のパトロール等を通じて収集された車載カメラの画像から自動的に路面標示の剥離を評価して蓄積できるとともに,それらの状況をGISシステムを用いて表示・分析することも可能となります.現在,研究室では認識エンジンについて研究を進めるとともに,システム開発も行っています.また,より詳細な劣化状況を評価するための新しい評価エンジンに関する研究も平行して進めています.