みなさんは「ハイパースペクトラムイメージング(Hyperspectral Imaging)」という言葉をご存知でしょうか.ハイパースペクトルイメージング(Hyperspectral_imaging)とは,対象となる物体からの反射光を分光して画像化する技術のことであり,可視光領域だけではなく紫外や近赤外線域で波長毎のバンド情報を分光イメージングできる技術です.通常,物体からの反射光の範囲は可視スペクトルのみならず,紫外線 (UV) から長波長赤外線 (LWIR) の波長までを含んでいます.我々が見ているものや通常のカメラで捉えることができる画像は可視光領域をCCDやCMOSなどのセンサを用いて画像化したもので,UVやLWIRの部分の情報は含まれていません.一方,ハイパースペクトル イメージングでは,このような様々な波長領域において画像を作成することにより,通常の画像では得られない波長バンド毎に情報を測定したり解析したりすることができます.
従来のハイパースペクトルイメージングは,人工衛星や有人航空機を用いて画像を取得するなど,その用途はごく限られたものでした.しかしながら,近年の技術の進歩によりイメージングのためのセンサーは小型化されつつあります.また,イメージングセンサの性能も上がっており,カメラによってはスペクトルから10〜100のサンプルバンドを取得することも可能となっています.これらの技術の向上もあり,近年では医学や食品科学,法科学.農業といった分野での応用が期待されています.
そこで,研究室では「農業分野におけるハイパースペクトルデータの活用」に焦点を当て,研究開発を進めています.本研究プロジェクトでは米や野菜,お茶といった作物を栽培している水田や畑などにハイパースペクトラムカメラを搭載したドローンを飛行させ,そこから得られる画像を解析することで作物の生育状況や病気といった問題を早期に発見するためのシステムを開発しています.現在は,研究室で所有している直径2メートルほどのヘクサコプターにハイパースペクトルカメラを搭載し,本学生物資源学研究科が所有する紀伊・黒潮生命地域フィールドサイエンスセンター 付帯施設農場にて作物のハイパースペクトル画像を収集しています.今後はこれらを深層学習などの画像認識技術を用いて解析することで,今まで見えなかった新しい情報や知見が得られることが期待されます.なお,本研究プロジェクトは三重大学生物資源学部,芝浦工業大学との共同研究プロジェクトです.