脳性麻痺(Cerebral Palsy: CP)は,出生時から幼児期までの間で起こる脳の損傷や奇形が原因で引き起こされ,発生頻度は1000人に1.5人〜4人以上であると言われています.症状は人によって様々ですが,基本的には人間の動作や姿勢を維持する能力に影響を与え,年齢が上がるにつれて病状が進行することが多いです.そのため,早期発見に加えて理学療法を用いた治療が重要であり,患者によっては矯正器具を使用したり,外科手術を行ったりする場合もあります.
今日では患者の障害を特定し,理解するために臨床歩行分析(clinical gait analysis: CGA)が行われています.CGAは患者の歩行の時空間的なデータを用いて,症状の理解や治療法を決定するために行われます.CGAで用いられる評価指標の一つに歩行偏差指数(Gait Deviation Index: GDI)があります.GDIはモーションキャプチャから得られる歩行時の関節の動きを典型的な発達をした子どもと比較することによって算出されます.しかし,モーションキャプチャを使用することで以下のような問題点があり,医師と患者の負担となっています.
高価である
扱いが難しい
測定できる場所が限られている
測定の際に患者に反射マーカーをつける必要があり,普段通りの歩行ができなくなる
以上の問題点を改善するために,単一カメラで撮影した動画から深層学習を用いてGDIを推定する研究が進められており,本研究では推定精度の向上を目指しています.また,姿勢推定技術に関しては脳性麻痺患者に限らず,他の病気を患っている患者や高齢者に対しての応用も考えられます.