マウス開発研究室は、2002年10月に小出が准教授になると同時にスタートしました。
当初は動物飼育実験棟の運営も担う研究室でしたが、その業務担当を目的として、2011年度よりマウス研究支援ユニット、2015年度より動物飼育実験施設が設置されました。小出は兼任で一貫して研究室と動物飼育実験棟の運営をしています。また、2022年度よりゲノム変異マウス開発支援部門長も兼務しており、各種遺伝子改変マウスの作製を行っています。
2010年4月より助教に高橋阿貴さんが着任し、2014年9月には筑波大学へ異動しました。
2015年4月には京都大学から吉見一人さんが助教として着任し、2017年に大阪大学へ異動しました(現在は東京大学医科学研究所)。
2018年3月には岡山大学臨海実験所から高浪景子さんが助教として着任し、2022年3月に奈良女子大学准教授として異動しました。
研究では、国立遺伝学研究所で独自に樹立した一連の野生由来マウス系統を用いて行動遺伝学を進めるという世界的にもユニークな研究を行っています。一連の野生由来系統は、三島バッテリーと呼ばれ、これらは実験用マウス系統とは異なり愛玩化を受けていないこと、マウス本来の行動を示しているということにおいて特徴があります。
行動遺伝学としては、一連の野生由来マウス系統の行動解析、その遺伝子座の解明を目指したQTL解析、コンソミック系統を用いた遺伝子座解析、野生由来ヘテロジニアスストック(WHS)を用いた新たな遺伝解析系の確立を目指しています。遺伝子同定を目的として、コンジェニック系統の作製などにより、ポジショナルクローニングを行なったり、遺伝子導入手法により機能解析などを進めています。
また、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集で数多くの遺伝子改変マウス作製を進めており、多くの研究者と共同研究を行っています。
国内ではマウスを用いて行動遺伝学に取り組む研究室が非常に少ないので、私たちのようにこの研究テーマに専門的に取り組む研究室はめずらしいといえます。しかし、ゲノム解析的手法を取り入れた行動遺伝学は世界的にも発展を続けている進展目覚ましい学問領域です。若い意欲に富む学生やポスドクとともに研究を進めています。
近年は西アフリカに生息し、現地で食用に供される巨大齧歯類グラスカッターの家畜化をガーナ大学、京都大学、エジンバラ大学などとの共同研究で進めており、重要な研究テーマとなっています。
さらに、遺伝研構内に植栽されているサクラを中心にゲノム解析を行い、そのデータを用いたサクラ100ゲノムプロジェクトも進めています。
研究室は動物飼育実験棟の中にあります。マウスの行動実験を行うことが多いため、飼育室が近いことは研究上大変便利です。また、研究室では分子生物学実験、ゲノム解析、組織学的解析などを行い、行動と遺伝子の関係を明らかにしようとしています。