IL26と慢性炎症

当研究室は、T細胞から産生されるIL-26が線維芽細胞に作用してコラーゲン産生を促進することを明らかにし、多臓器線維化を亢進する重要な因子であることを明らかにした(1)

さらに、乾癬様皮膚炎症モデルにおいて、IL-26が皮下の血管新生を顕著に亢進し、炎症性細胞浸潤を促進すること、IL-26が血管内皮細胞に直接作用して強力な血管新生促進作用を発揮することを見出した(上図)(2)

英Oxford大との国際共同研究で、潰瘍性大腸炎の患者の大腸炎症部位に浸潤する免疫細胞のシングルセルRNAシーケンス解析により、潰瘍性大腸炎ではIL-26を産生する新規CD8 T細胞サブセットが著しく増加していることを見出した(上図)(3)

IL-26は従来、CD4 T細胞から主に産生されるが、腸管ではIL-26を産生する特殊なCD8 T細胞が存在することが明らかになり、それらが炎症性腸疾患の病態にいかに関与しているのか解明を試みている。

さらに、IL-26分子標的療法を確立すべく、IL-26の機能阻害に働く結合活性に優れた中和抗体の樹立に成功(4)ヒト化IL-26抗体の開発にも成功している。

現在、移植片対宿主病や大腸炎、関節リウマチなど様々な炎症性疾患モデルを用いて、IL-26の新たな生物活性の解明やIL-26抗体療法の有効性評価、作用メカニズムの解明、また、患者検体を用いてIL-26の発現解析にも取り組んでいる。

1) J Immunol. 2015b, 2) J Invest Dermatol. 2019, 3) Nat Med. 2020, 4) MAbs. 2019