1段

… ヌ…サマ …

… ヌシ様! …

… 起きてください! …

…もう少し、寝かせて

…ええい!起きんか、たわけッ!

…ダレですか?

ワタシですよ、ワタシ!

ホラ、窓の外!見てください!

遂に来てしまいました!

ココがヌシさんの住む、“地上”の世界なんですね!

…ウム。とりあえず、ヌシ殿の馴染みの地方に降りてきた形じゃな。

ニンゲンの住む世界を直接見られるなんて!ワクワクします!

…コラ。観光に来てるワケじゃないんじゃぞ。

お前はこの地上で、世を知り、ヒトを知り、成長せねばならんのじゃ。

…そうでした。

具体的には、何をすればいいんですか?

何よりもまずは、めがみとしての“才能”を育てることじゃな。

…《神格》でしたっけ。

…ウム。そのためには、ヌシ殿と親睦を深め…

幾つもの《神格試験》を乗り越える必要があるワケじゃが。

…もうヒトツ。

ココからの試験は、“七柱のめがみ”に協力してもらう。

…“七柱の、めがみ様”?

この国には、ワシの他にも多くの“めがみ”がおる。

それぞれが己の得意な分野で、ニンゲンを導いておるのじゃ。

お前も一人前を目指すなら、めがみの多様さを知っておくべきじゃろう。

アマテラス様は…試験してくれないんですか?

ワシだけで相手しとったら身が持たんからな…

ま、どうしてもワシの試験を受けたいならば。

まずは“七柱のめがみ”に認められることじゃ。

なるほど…

先輩めがみ様ですか…どんな方に会えるのか、楽しみですね!

では早速、第一のめがみを呼び出すとしよう!

天に舞い大地に踊る

 わたくしは“芸事”のめがみ

アメノウズメ

…あら?

あらあら、これはこれは…

アマテラス様ではないですか。

ウム。変わりないようじゃな、ウズメ。

ご無沙汰しております。

おかげさまで、日の光穏やかな日々を過ごしております。

…おや?アマテラス様、しばらく見ぬ間に…

少々伸びたのではございませんか?身の丈が。

…お! 気づいたか?気づいてしまったか!

はっはっは! 実はそうなのじゃ!伸びてしまったのじゃ、身の丈が!

…“2厘”も!

まあ。随分と大きくなられて。

…ふふ。こうして直接お会いするのは、いつ振りでしょうか。

そうじゃのう。地上のことは、おヌシらに任せておるから…

滅多なことがなければ、そう会う機会もないものな。

…すると今回は、何事か起きたということでしょうか?

…“滅多なこと”が。

まあ、そういうことじゃ。

紹介しよう。コヤツは“ツクモ”。

生まれたばかりの“ツクモガミ”じゃ。その“夢”は大きく…

“お日様”のような“めがみ”を目指しておる。

…“ツクモガミ”が、“めがみ”に?確かにそれは、大層珍しいことですね。

…それでは、そちらの方が?

ウム。ツクモの“持ち主”…言うまでもなく、“ニンゲン”じゃ。

…ご挨拶が遅れました。わたくしは“芸事”のめがみ…

アメノウズメ”と申します。

お目にかかれて光栄です

…ふふ。そんなに畏まらなくても祟ったりはしませんよ。

こうして直接ニンゲンの方とお話しするのは初めてですけれど…

悪くないものですね。このような関わり方というのも。

ウズメの神格は“芸事”。特に、“舞”の腕前はめがみ随一じゃ。

この国のあらゆる芸事は、元を辿ればウズメの舞に行き着くと言われておる。

そ、そんな風に持ち上げられると、照れちゃいますね…

機会を頂けるのであれば、いずれ、わたくしの舞を披露致しましょう。

ニンゲンの方に“舞”を直接披露できる機会など、滅多にないことですから!

ま、いずれな。

それより、ウズメ。今回はツクモのことを頼みに来た。

おヌシの舞に“神髄”…コヤツに叩き込んではもらえんか。

…なるほど。《神格試験》、ですね。

わたくしの舞が、未来のめがみの道を照らすならば…

及ばずながら、尽力させて頂きましょう。

おお、そうか! おヌシならば引き受けてくれると思っておったぞ!

それでは、いささか名残惜しいですが、一度お別れと致しましょう。

めがみの歴史と伝統に従い、まずは《お供え物》を見つけて頂きます。

ウム。ツクモもヌシ殿も、まだ歩き始めたばかり…

手柔らかに頼むぞ。ふふ…お二人の“初陣の舞”…こちらから拝見しておりますね。

…と、言うワケで。今回世話になるのは、“芸事”のめがみ、ウズメ。

おヌシらが目指す、“一人前のめがみ”の一柱じゃ。

なんだか…とってもキレイな方でしたね!

スラッとしてて、大人っぽくて、優しそうで…

アマテラス様より、めがみ様らしいんじゃないのかな?

…確かに、ウズメは優秀なめがみじゃな。

しかし…勘違いしてはいかんぞ。

めがみの“在り方”はそれぞれ…比べるようなものではない。

ちょーっとばかし背が高かろうが!

ちょーっとばかし胸が大きかろうが!

めがみの能力とは一切、関係がないのじゃ!

…もしかして、木にしてます?身長のコト。

…しとらんわ。

…っちゅうか。

お前に言われたらお仕舞いじゃろ…

とにかく、ここからは地上が舞台。より一層、気を引き締めるのじゃぞ。

まずは、《お供え物》を手にいれることじゃな。

…《お供え物》ですか。

まぁ、試験を受けるための“資格”のようなものじゃ。

なんの知識も経験もないものに、試験を行ってもしょうがないからな。

…なるほど。

ではまずは、《お供え物》を目指して…

頑張ってください!ヌシさん!

…お前もじゃよ?頑張るのは。