Lab Overview

中丸研究室では、数理モデルやシミュレーションによって、人間社会の起源や社会システムのメカニズムを探ります。
「社会や人間の理解」といっても、いろいろなアプローチがあります。社会科学・人文学にある研究分野の数だけアプローチ方法があるといっても過言ではありません。

中丸研の研究内容としては、

(1)社会や人間の本質を知るための、人間行動進化学的観点からの研究 

(2)現存する社会システムに着目し、そのメカニズムを知るための研究 の2点です。

中丸研究室での基本的スタンスは、社会の本質を知りたい、人間の本質を知りたいということです。そして、本質を知るには、生物学的観点、特に進化生物学的な観点を用いることが1つの方法であるということで、人間行動進化学的観点から研究を進めています。

人間行動進化学的観点からの研究では、人は損をしてまでなぜ他の人に協力するのか、という進化生態学での大きな疑問に挑戦しています。また、他の生物にはみられない人間特有の能力が、人間特有の社会を形成するに当たってどのくらい関与するのかについても研究しています。

2つ目の、「現存する社会システムに着目し、そのメカニズムを知るための研究」では、例えば世界中に存在する私的制度である頼母子講や、それによって派生したマイクロクレジットが維持されるメカニズムの研究を行っています。この研究を通して、その奥に隠されている社会の本質というものを見極めていく作業をしています。

研究手法は、進化ゲームダイナミクスや数理生態学で用いる、微分方程式モデル、差分方程式モデルです。数理モデルで表現が難しい場合であれば、エージェントベースシミュレーションによって解析します。

なぜ、数理モデルやコンピュータシミュレーションによって人間社会を知る必要があるのか、疑問に思うかもしれません。以下の理由で、モデル化も社会科学研究の一つのツールとして有用であると考えます。(エージェントベースシミュレーション例:シェリングの分居モデル

(1)ロジックの明確化。つまり、言葉による議論では論理が曖昧になっていることもあり、モデル化によって明確となる。明確になるからこそ、今まで分かってこなかったことも分かってくる事もあります。従来の学説などを検討する手段として生かせるかもしれません。

(2) 調査や実験だけでは分からない部分の検討。調査や実験は現実を知る上で非常に重要ですが、調査や実験によって明らかにならない部分もあります。それを、モデル研究は補完可能です。モデル研究と、調査・実験研究のフィードバックによって、お互いの長所/短所を生かして、新たな研究への橋渡しとなります。

(3)人間社会の起源を探る研究では、進化プロセスを追うにはシミュレーションや数理モデルが有効です。

人間社会のモデル・シミュレーション研究はこれからの学問ですので、様々な可能性を秘めています。ぜひ、この未開拓の研究テーマの多い分野に挑戦して下さい。