単層のグラファイトであるグラフェンでは、電子は質量を持っていないかのようにふるまいます(ディラック電子)。このようなディラック電子に面直磁場を印加して量子ホール状態を形成すると、ディラック電子に特徴的な量子ホール状態の特性が輸送現象に現れます。私たちは特に電荷が正と負の領域の境目(pn接合)での量子ホール状態の特性に興味をもち研究を行いました。グラフェンpn接合では量子ホール端状態が並走します。この並走状態における電子の分配過程をショット雑音測定という手法で測定することで、電子分配の微視的な機構を解明することに成功しました(日本語解説)。また、このpn接合が電子のビームスプリッタとして利用できる特性を保有していることから、pn接合を用いた電子の量子干渉計の提案を行い、それに関連したパリティ効果の実証を行いました(日本語解説)。
Scientific Reports 5, 11723 (2015), Nature Communications 6:8066 (2015)
トポロジカル絶縁体は近年発見された新しい物質群で、バルクには電子が流れないにもかかわらず表面には流れるという特徴を持ちます。このトポロジカル絶縁体のナノ構造デバイスを用いて、表面状態に存在するディラック電子の持つ量子性の評価や超伝導体との接合によりマヨラナ粒子を実現するための研究を行いました。
Phys. Rev. B 102, 045301 (2020), Phys. Rev. B 101, 115410 (2020), Phys. Rev. B 88, 155438 (2013), AIP Conf. Proc. 1566, 193 (2013), Phys. Rev. B 85, 075440 (2012)