羽ばたき飛行、ダイナミックソアリング、ホバリングなど、鳥の飛行は実に多様です。しかし、それを実現する翼の形態は行動・生態的特徴との相関は弱く、かつ系統に強く制約されていることが知られています。さらに、形態的から類推される飛行能力と、実際の分散能力やそれが形成する種多様性は必ずしも対応しないこともわかってきました。このような生態と翼形態のミスマッチがある中で、鳥はどのように多様な飛行行動に適応しているのでしょうか。バイオメカニクスと進化生物学の間の領域を研究しています。
なぜ・どのように種は多様化するのでしょうか?これまで様々なプロセスが明らかにされてきましたが、その中でも「新規環境に分布を拡大し適応する」というプロセスが重要なのではと考えています。生物が新規環境に晒されると形質に急速で大幅な変化が生じ、ニッチがシフトすることが知られていますが、その仕組みはよくわかっていません。私は、外来鳥類のガビチョウを用いて、標識調査とゲノミクスによるアプローチでこの謎を解明しようとしています。また、この研究を通じ、定着できる外来生物とそうでない外来生物の違いを理解することで、外来生物対策への応用を目指しています。
なぜたくさんの種が同じ場所で共存できるのでしょうか?古典的な生態学では、種間でニッチが分化し、資源をめぐる種間競争が緩和されることで実現するとされてきました。しかし、これはいわば無限時間が経過した平衡状態における理論であり、より短い時間スケールの多種共存にはどのようなメカニズムがはたらくのかはわかっていません。私は、春と秋に日本に滞在するシギ・チドリ類を用いて、フンのDNAを用いた食性解析のアプローチからこの謎を解明しようとしています。
シギ・チドリ類は、干潟環境において上位捕食者として重要な立ち位置にありますが、世界中で急速にその個体数を減らしています。生息地である湿地・草原環境の消失が主な要因とされていますが、生息環境のどのような側面がシギ・チドリ類の生存に重要なのかはよくわかっていません。私は標識調査、バイオロギング、食性解析、ゲノム解析、統計モデリングなど、様々なアプローチを駆使してシギ・チドリ類の保全のために何が必要なのかを研究しています。
環境省の鳥類標識調査事業では、あらゆる鳥類を捕獲して金属リングなどにより標識し、再捕獲や再確認によって移動ルートや生存率、寿命といった基礎的なデータを収集しています。私はこれにボランティアのバンダーとして協力しており、様々な場所でバンディングを行っています。また、バンディングは新たな鳥類研究を創出する場にもなっており、バンディングを通じて様々な鳥の捕獲法を日々模索しています。
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