Music of JAPAN

「ジャパン」解説

あっつい真夏日で始まって、涼しげな夏の海で終わるこのアルバム、メキシコ国立芸術院オーケストラのオーボエ奏者、練木聖子さんの初ソロアルバムです。まりもんがプロデュースさせていただきました。どんな分野のお仕事でも同じだと思いますが、プロジェクトのスムーズな進行は、まず仲間を信用するところから始まりますよね。練様はオーボエの能力に加え、大きな気持ちの持ち主で、彼女の「信用力」があったからこそ実現したアルバムなのです。

日本の音楽をテーマにしたアルバムですが、素直な日本の音楽はほとんど登場せず、クラシックのようなジャズのような、謎の作品・編曲が満載でございます。このような、いったいどういう仕上がりになるのかわからないモノでも、練木氏は大きな心で、文句ひとつ言わずに吹いてくれました。制作中、一度として意見がぶつかることはなく、とても自然に出来上がっていきました。持論ですが、能力の高い人ほど、「信用力」も高くて、プロジェクトの進行がスムーズにいくのだと思います。オーケストラの中でもきっと潤滑油のような立場でおられるのだろうなあと想像いたしました。

Music of JAPAN is the first solo album of the oboist Kiyoko Neriki, member of the National Teatre Orquestra of Mexico. I was so happy to collaborate with her. She is so pure and has a big heart.

Marimo Sugahara  菅原まりも

以下、一部の作品に関して、簡単な解説です。

「徒然桜」  コロナ禍で花見ができなかった2020年の春に書いた作品です。冒頭に少し出てくるさくらさくらのテーマが後半になってようやく解決する、というグロい構造でございます。普通の桜を求めている方からは不評の作品でしょうが、コロナ禍の桜なのでお許しください。

「顕著性と連続性」  アステカ神話の5つの太陽からインスピレーションを得た作品です。神話では、今までに4つの太陽の時代が滅亡していて、現在は第5の太陽の時代で、将来、(多分近い)、地震によって滅亡し、人間は空の怪物(多分ウィルス)に喰われることになっています。興味のある方はぜひアステカ神話をチェックしてみてください。「顕著性と連続性」では、それぞれの時代に現れる顕著性は似通っていて、滅亡してもまた連続して繰り返される、という「歴史は繰り返す」的な考えをもとに、5つの作曲法を使って同じテーマを何度か登場させております。

「一握の砂」  石川啄木の詩に音楽をつけたもので、ここではイングリッシュホルンで演奏していただいております。オリジナルはバリトンで啄木の詩を歌う作品なので、啄木の詩を感じながら聴いていただけるとうれしいです。Youtubeにはどの詩がどの部分に当てはまるのかがわかる動画をアップロードしております。

Let me write a littel about some pieces. "Cherry Blossoms in Idleness" was written in the supring of 2020 when the cherry blossoms were let alone without admirers due to the lockdown. That's why the traditional melody of "Sakura" is interrupted by a jazzy and moody part. "Saliency and Continuity" is also a "corona piece". The theme comes from "the 5th Sun" of the Azstec mythology. According to the myth, we are in the era of the 5th Sun which will perish because of the earthquake. The piece has 5 parts written in different styles but in a continuity using the same theme. "A Handful of Sand" is originally written for the Takuboku Ishikawa's poem, for baritone voice. On Youtube, I uploaded a video in which you can enjoy the poem along with the melody played in english horn.

Kiyoko Neriki 練木聖子

エグい作品&編曲が満載のアルバムですが、その中で、松岡滋氏の2作品が清涼な風を吹かせてくれるようで安心します。ああ、なんて心の清い作曲家なのでしょう。彼の作品の中にはいつも美しい自然が存在しています。「浜辺の歌」では、良く知られているあのメロディーが印象派的な伴奏の上に流れ、その後、ラベルとドビュッシーのテーマに移行していく、という、フランスで学ばれた松岡氏ならではの構築を楽しめます。

最後に、ジャケットに登場している美しい藤色の女性は篠笛奏者でもある藤原桂子様です。彼女とのコラボも今後、ますます発展していけばいいなあと夢見ております。(菅原まりも)


It's worth mentioning that two works of the japanese composer/guitarist, Shigeru Matsuoka are beautiful and refreshing parts of this album. "Song of the Seashore - Ravel meets Debussy" is a color mixture of the japasene traditional song with the themes of the great impressionists.

The beauty of the jacket is the model/bamboo flutist, Keiko Fujiwara.

一握の砂、石川啄木の詩と共にお楽しみください。

Here, you can enjoy the Takuboku's poem along with the music.


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