#273 ジョークのタイミング
以前に扱ったジョークの使用に対するアメリカ人と日本人の違いに関連する内容が、大島(2001)でも同様に確認されました(実は、前回の本に載っていたのをきっかけに、今回この本を読んでいるわけですが…!)。
本書では、その違いを示す具体的なエピソードが紹介されています。ある日本人男性が、初対面のアメリカ人女性(仕事相手で、恰幅の良い中年女性)と渋谷駅付近で待ち合わせをした際の一幕です。男性が10分近く遅刻してしまい、焦って次のように謝罪しました。
「遅れて本当にすみません……!ごめんなさい!」
それに対して、女性は笑顔でこう返したそうです。
「大丈夫よ。むしろラッキーだったわ。待っている間に、かっこいい男の子3人にナンパされちゃったもの」
これは、遅れてきた男性が気後れしないようにと女性が気を遣い、相手を安心させるために放ったジョークです。このユーモアによって二人は笑い合い、初対面の緊張感は一瞬で解消されます。
これに対して、私たち日本人は仲良くなってから初めて、お互いに冗談を言い合えるようになるという傾向があります。
大島が実施したアンケート調査によると、その背景には社会構造の違いがあるといいます。様々な人種が暮らす他民族社会では、相手がどのような文化背景を持っているか分からないため、なるべく早く打ち解けて「自分に敵対心はない」と伝える必要があります。その強力なツールがジョークなのです。
一方で、人口の90%以上を同じ民族が占める(あるいは、ほぼ単一民族であるという意識が強い)日本社会では、「目の前の相手が、自分とは全く異なる文化や前提を持っているかもしれない」という緊張感がそもそもありません。大島は、このように最初から安心感が担保されている日本社会だからこそ、初対面で関係をほぐすためのジョークがそこまで必要とされてこなかったのではないか、と分析しています。
参考
大島希巳江. (2001). 『世界を笑わそ!』. 研究社.
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