#270 間を合わせるのも社会的スキル?
#268で取り上げた長岡らによる実験では、台本を用いた模擬対話を通して、対話相手の「交替潜時(発話が入れ替わる際の間の長さ)」の変動が、聞き手の反応にどのような影響を与えるかが調査されました。この実験では、相手の交替潜時が操作されていることを被験者には伏せた上で、相手の間の取り方の変化に応じて、被験者自身の交替潜時も連動して変化するかどうかが詳しく調べられています。
また、同調傾向の起こりやすさには男女差や個人差が関係するという先行知見を踏まえ、被験者の社会的スキルの分類もあわせて行われました。操作条件は、「話者が自然だと感じる長さ」のほか、特定の期間の交替潜時を通常より長く、あるいは短く設定した計5種類の条件がランダムに取り入れられています。
実験の結果、社会的スキルが高いグループの方が、低いグループよりも相手の交替潜時の伸縮に対して高い相関を示すことが明らかになりました。また、性別による違いもみられ、男性被験者よりも女性被験者の方がより強い正の相関を見せるという興味深い結果が出ています。
長岡らはこれらの結果から、自然な対話においては、双方が相手のちょっとした間の変動を敏感に感じ取り、無意識のうちに自分の交替潜時を調整し合っているのではないかと考察しています。さらに、社会的スキルが豊かな人ほど相手に巧みに間を合わせていることから、こうした潜時の適切な調整は、円滑なコミュニケーションを促進する上で重要な役割を果たしていると考えられます。
相手との呼吸を合わせる重要性を再認識するとともに、自分自身の普段の話し方も改めて振り返ってみたくなるような研究でした。
参考
長岡千賀, Draguna, M., 小森政嗣, 河瀬諭, 中村敏枝. (2001). 交替潜時の対話者間影響. ヒューマンインタフェースシンポジウム論文集, 1, 221-224.
keywords
[交替潜時] [ターン交替] [アコモデーション]