#18 おまかせにホッとする
昨日の記事では、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化の説明をし、実際に招待客に飲み物をすすめる場面でそれぞれの文化がどのように振る舞うかを紹介しました。
この違いは、レストランやファストフードでの注文方法やメニューのあり方にも表れているといわれています(東 2009, 井上 2021)。
日本のレストランでは、定食やおまかせメニューのように、あらかじめセットになっているものが多くあります。客が何か言う前に、提供する側が「こういうものを出すのがよいだろう」と考え、形を整えて出してくれる文化です。
一方で、英米圏には「選ばされる」場面が日本より多くあります。たとえばサンドイッチ屋では、パンの種類や大きさ、中の具まで細かく選択しなければならないところが多い。井上はこれを「ネガティブ・ポライトネス」と関連づけ、英米圏に根づく「個」や「独立」の尊重が、この選択を重視する慣習に現れていると指摘しています。英語が十分にわからず店員のおすすめに「yes, yes」と答えた結果、食べきれないほど大きなサンドイッチになってしまったとしても、それは客の選択とされ、店員が「お一人では多すぎるかもしれませんが大丈夫ですか 」と確認することはないそうです。
私自身もイギリスのカンタベリーのホテルで戸惑った経験があります。チェックインと同時に、翌朝の朝食メニューを選ぶチェックリストを渡されました。卵の焼き方(fried, poached, boiled, scrambled)や個数、付け合わせなどすべて自分で記入するスタイルです。よくわからないことも多く、その場でさっと決められず、部屋に持ち帰って考え込んでしまったのを覚えています。
「おまかせ」に慣れきっている私にとって、スタバでのカスタマイズや、ラーメン屋でのトッピングの種類や量の指定なども、ちょっとドキドキしてしまいます。こうした戸惑いは、想定する場面の「スクリプト」を持ち合わせていないこととも関係しています。たとえばHUBのようなパブで注文するときには、席を見つける → 荷物を置いて注文に行く → 商品を受け取る → 席に戻る、といった一連の流れがスクリプトとして記憶されています。スクリプトについては、また別の機会に詳しく取り上げたいと思います。
参考
東照二 (2009) 社会言語学入門<改訂版>: 生きた言葉のおもしろさに迫る. 研究社.
井上逸兵(2021)『英語の思考法――話すための文法・文化レッスン』筑摩書房.
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[高コンテクスト文化] [低コンテクスト文化] [ポライトネス] [スクリプト]