#52 どのぐらい面白いですか?
朝倉書店の『社会言語学』の中で、学生に特に人気があるのが、堀田秀吾先生による第2章「心理言語学」のセクションです。そこで紹介されているのが「語法効果(wording effect)」という考え方です。これは、ことばの使い方によって、人の印象や判断、さらには記憶までもが影響を受けてしまうという現象を指します。
堀田先生は、Loftus and Palmer(1974)の有名な実験を例に挙げています。150人の被験者に自動車事故の映像を見せ、事故の速度や被害について質問をしました。その際、質問文の一部を smashed into, collided, bumped, hit, contacted とグループごとに変えて提示したのです。すると、平均速度の推定は smashed が最も速く、contacted が最も遅いという結果になり、その差は時速14.5キロにもなりました。さらに、「Did you see any broken glass?」と尋ねたところ、実際にはガラスは割れていなかったにもかかわらず、smashed を使われた被験者は、hit を使われた被験者よりも2倍以上の確率で「ガラスが割れていた」と答えたのです。
About how fast were the cars going when they ____ each other?
この実験からもわかるように、ほんの一語の違いが、私たちの判断や記憶を大きく変えてしまうことがあります。
堀田(2020)では、他にも次のような例が紹介されています。
「今見たバスケットボール選手の背の高さはどれくらいでしたか?」
「今見たバスケットボール選手の背の低さはどれくらいでしたか?」
「頻繁に頭痛になりますか?もしそうならどれくらいの頻度ですか?」
「たまに頭痛になりますか?もしそうならどれくらいの頻度ですか?」
結果は予想通りで、背の「高さ」と問われれば答えは平均で約30センチ高めになり、「低さ」と問われると低めに答えが寄りました。また、「頻繁に」と聞かれた人は「たまに」と聞かれた人の3倍以上の頻度を申告したそうです。
堀田先生は、こうした語法効果を逆手にとって、仕事や日常生活でもうまく活用できると述べています。私自身も、以前ブログで書いたアフォーダンスの記事(9月29日)とのつながりを感じます。たとえば Booking.com のレビュー設問「What did you like (did you not like)?」も、like がベースにあるために、TripAdvisor よりもネガティブ評価が少なくなるという結果が出た可能性もあり得ます。
授業アンケートで自分が問いを設計する時にも、私はいつもこの点に注意しています。操作してしまうのは避けるべきですが、逆に「誰も傷つかない問い」をどう作るかはとても重要だと思っています。少なくとも、アフォーダンスや問いの立て方によって、回答者がどれほど影響を受けるかということを、私たち自身が意識していく必要があると感じています。
参考
堀田秀吾. (2020). 「勘違い」 を科学的に使えば武器になる 正しい話し方よりも納得される伝え方. 秀和システム.
Loftus, E. F., & Palmer, J. C. (1974). Reconstruction of automobile destruction: An example of the interaction between language and memory. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 13(5), 585–589.
堀田秀吾. (2017). 「法と言語」 井上逸兵編『社会言語学』朝倉書店, pp. 24–42.
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[語法効果]