作品紹介

こわれゆく女

1974年/アメリカ/147分/カラー/ヴィスタ

監督・脚本:ジョン・カサヴェテス

協力ザジフォルムズ

(c)1974 Faces International Films,Inc.


土木工事の現場監督を務めるニックには、妻メイベルと3人の子供がいる。ある日、妻と二人きりで過ごす約束をしていたのだが、突然の事故処理で家に戻れなくなってしまう。メイベルは子供たちを彼女の母親のところに預け、その日を楽しみにしていたのだが、ニックからの電話で約束が反故になったことにショックを受ける。メイベルは夜の街を彷徨い、バーで知り合ったガースンという男を家に連れ込んでしまう。翌朝、彼女は見知らぬ男に驚き、昨夜の失態を思い出す。ガースンを帰すが、メイベルの精神状態はいっそう不安定になる。そんな中、ニックが部下の労働者たちを連れて家に戻ってくる。彼女は皆にスパゲティを用意し、会話をはずまそうと明るく振る舞うが、次第に抑制が利かなくなっていく。



ジョン・カサヴェテス

1929年ニューヨークでギリシャ系移民の子供として生まれる。ハーバード大学卒業のビジネスマンだった父が多額の借金を負い、貧しい幼年期を過ごす。高校を卒業後、最初にニューヨークのコルゲート大学に進むが中退。同校在学中にロバード・E・シャーウッドの戯曲に触れ、俳優を志す。次に徴兵されていた兄の母校であるニューヨーク北部のモホーク兵学校に入学するが、学校自体が1年後に廃校。続けて同じニューヨーク州にある兵学校シャンプラン大学に入学。しかし、ここも間もなく退学。

1950年、友人に誘われ、シャーウッド主催のアメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ(AADA)に入学、演技を学ぶ。このAADAで公私に渡る生涯の伴侶となるジーナ・ローランズと出会う。

1957年に俳優志望の若者を集め、ワークショップを開始。そこでの即興演技をもとに、『アメリカの影』を監督。俳優として稼いだお金を投入し、自費で『フェイシズ』(’68)の撮影を開始。ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセルやアル・ルーバンといった『アメリカの影』以来の仲間たち、リン・カーリンや『愛の奇跡』で知り合ったジョン・マーレイを始めとする新たな仲間たちと共に、自宅を撮影場所として自主製作する。同作は、ヴェネチア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞、3つのアカデミー賞にノミネートされ、アメリカ本国でも批評的、興行的な成功をおさめた。89年2月3日、肝硬変のためのロサンゼルスの病院で他界。59歳没。

特別協力:Cinemateca Portuguesa-Museu do Cinema 

                 一般社団法人コミュニティシネマセンター(フィルム提供)

後援:ポルトガル大使館文化部

フランシスカ

1981年/166分/カラー/35ミリ

監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ

出演:テレサ・メネデス、ディオゴ・ドーリア、マリオ・バローゾ


1850年代のポルト。小説家カミーロ・カステロ・ブランコと友人のジョゼ・アウグスト、そして「フランシスカ」と呼ばれる英国人の娘ファニー・オーウェン、実際にあった3人の恋の物語をもとに、アグスティナ・ベッサ=ルイスが書いた小説「ファニー・オーウェン」の映画化作品。二人の男に愛されたフランシスカはジョゼを選ぶが、3人の関係は悲劇的な結末を迎える。



マノエル・ド・オリヴェイラ 

1908年12月11日にポルトガル北部の港町ポルトに生まれる。

1931年に初監督作『ドウロ河』を撮り、42年に初の劇場用長篇映画『アニキ・ボボ』を発表。家業を続けながら映画制作を続け、62年に長篇第二作『春の劇』を発表するが、「ポルトガルには検閲が存在する」という発言によって投獄される。10年を経て1972年3本目の長篇『過去と現在 昔の恋、今の恋』を発表。1974年独裁政権が終わり、オリヴェイラは『ベルニデまたは聖母』(75)、『破滅の愛』(78)、『フランシスカ』(81)と「挫折した愛の四部作」を構成する3作品をつぎつぎに発表。また、敏腕プロデューサーのパウロ・ブランコと組み、自分の望む企画を実現できる環境を得る。

以後、上映時間6時間50分の大作『繻子の靴』(85)、『神曲』(91)、『アブラハム渓谷』(93)、『世界の始まりへの旅』(97)、『クレーヴの奥方』(99)などの輝かしい傑作を発表し続け、2000年代に入り、90歳をこえてもなお、ミシェル・ピコリ(『家路』01)、ジョン・マルコヴィッチ(『永遠の語らい』03)、カトリーヌ・ドヌーヴ(『永遠の語らい』03)、ビュル・オジェ(『夜顔』06)、ジャンヌ・モロー(『家族の灯り』12)といった世界的名優を迎えて、作品を生み出しつづけた。2014年のヴェネチア映画祭で短篇『レステロの老人』上映。2015年4月2日没。享年106歳。