担当教員

牧野 広樹             


現在の問題関心                    

① 近現代ドイツにおける音楽的思考/音楽実践の文化史・文化論的研究

「音楽すること」とそれに伴って現出する共同体、そしてそれを基礎づける「聴覚/聴くこと」という感覚に着目しつつ、近現代ドイツにおける音楽的思考/音楽実践を追っています。

「聴くこと」をはじめとする音楽に係る感覚と実践は、常に他者との関係性とともにあります。近代市民社会の絶え間ない再編制のポリティクスと、それが織りなす包摂と排除の様相「音楽と社会」という観点から明らかにすることを目指しています。

現在は第三帝国期、そして第二次世界大戦後の復興期へと時代を移し、音楽学者や音楽活動家たちの国民社会主義への順応、そして第二次世界大戦後における音楽文化と「過去の克服」について考察しています。

② 近現代ドイツ語圏文学におけるメデイア伝説の系譜

「自己」という存在もまた、他なる存在なくして存立しえません。

その観点を踏まえたうえで、近現代ドイツ語圏文学におけるメデイア伝説の改作・翻案の系譜をたどっています。

近現代ドイツにおける自己/他者アイデンティティの成立とそれに付随する市民社会における包摂と排除のポリティクスという問題系に関して、西洋における「他者」としてのメデイアを描く物語を辿ることで解明を試みます。

③ 音/音楽に関する感情史・環境史の模索

歴史学/文化学的手法をベースとしつつより学際的な学問の構築や模索を試みています。

音楽は、情動や感情に影響を及ぼす手段として度々活用、あるいは利用されてきました。また音や音楽を響かせるためには、その音/音楽を効果的に伝える〈場〉の構築が必要です。音楽作品や音楽実践そのもののみならず、それを支える環境の構築を、ソフト面/ハード面、そして科学知/人文知の両面から考えられる学問的方向性を模索しています。

共同研究や研究協力として連携をご検討いただける場合は、ぜひ上記メールアドレスにご連絡ください。

④ その他

上記の問題関心に共通しているのは、共同体から排除され零れ落ちていく様々な存在をめぐる思考です。

われわれはなぜ「他なるもの」を排除することなしに自己や共同体を存立しえないのか?すべての包摂と救済、その(不)可能性の先にあるユートピアや理想はいかにして創造/想像しうるのか?そして語り、表現しうるのか?

今後、この興味関心に沿いつつ、ドイツ語圏にとどまらない様々な文化的事象に関する研究を展開していくことを構想しています。