(1) 遺言書に押印する印鑑は実印じゃなきゃダメ?
A.認印や拇印でも有効です。ただ実務上は実印で押印し印鑑証明書も一緒に添えておくことをお勧めします。相続が発生したときに遺言者の意思に基づいて作成されたかが争われる場合があります。
(2) 10年前に遺言書を作成したが最近新しく遺言書を作成しなおした。10年前の遺言書は無効ですか?
A.古い遺言書がすべて無効になるわけではなく、新しい遺言書に抵触する部分で変更があったものとみなされます。例えば旧遺言書の財産目録に甲建物・乙土地・丙預金債権が記されていたとして新遺言書に甲建物に関する遺言しか記されていなければ、乙土地・丙預金債権は変更されておらず、旧遺言書の効力を有します。
(3) 私の死後全ての財産を寄付したいと思っているが可能か?
A.全財産を○○に遺贈(寄付)するというような遺言書も有効です。しかしある一定の相続人には遺留分侵害請求権というものがあり、全てを寄付するのは難しいかもしれません。遺留分侵害請求することができるのは配偶者・第一順位相続人(子・孫・ひ孫等)・第二順位相続人(父母・祖父母等)までであり、第三順位相続人(兄弟姉妹)には遺留分侵害請求権はありません。
(4) 主人が亡くなり遺産分割協議を義兄弟と行う予定ですが、私は現在妊娠6ヶ月です。お腹の子供には相続権はあるのでしょうか?もしあるのであれば、私がお腹の子を代理して遺産分割協議を行うことはできるのでしょうか?
A. 原則、人は生まれてきてはじめて権利・義務を有します。お子様(胎児)を代理して遺産分割協議をしても胎児に権利義務を負わせることはできず、その協議は無効です。ただ例外的に胎児は相続する権利・損害賠償請求権・遺贈を受ける権利については、「すでに生まれたものとみなす」とされており、お腹のお子様(胎児)も財産を相続することができます。この場合相続人は奥様とお子様(胎児)のみです。義兄弟の方々にはご納得して頂き、出産後まで協議を延期してもらいましょう。相続人の中に胎児が含まれる場合は、生まれてくるまで遺産分割協議はできないので注意しましょう。
(5) 相続登記の義務化に伴い長年放置してきた父の相続手続きをしようと思います。父が亡くなった当時、相続人は母・私・妹でした。最近母が要介護状態となっており、認知機能が低下しています。私と妹で相続手続きを進めることはできますか?
A. お二人で相続手続きを進めることはできません。遺産分割協議は相続人全員でしなければ効力を有しないので、お母様の意思決定が難しい状況であれば家庭裁判所に成年後見の審判をしてもらう必要があります。お二人と成年後見人の三人で遺産分割協議を進めましょう。