水産資源をこれからも持続的に利用するためには,水産物を適正に漁獲し,生産するための高度な技術が求められています。当研究室ではそのための技術やシステム開発を行っており,物理学,工学,行動学など多様な側面からアプローチしています。
研究室では,現在までに以下にあげる研究テーマを学生とともに取り組んでいます。特に「表層的解決」(superficial solution)だけに留まらないような ,水産学に科学的アプローチを積極的に取り込むように意識しています。
当研究室は高木の大学院担当変更に伴い,2022年度から学部学生研究室も札幌(環境科学院)となりました。当研究室配属希望の方は,高木までコンタクトするようにして下さい。
研究室・研究内容に関する内容についてもお気軽にご連絡下さい。また面談についてはオンラインで実施可能ですのでこちらもお気軽にご相談下さい。
<2025.6.26>
田中優斗さんが特別研究員DC研究奨励金特別手当の支給対象者に選出されました!
独立行政法人日本学術振興会では、特別研究員DCが、より一層意欲的に研究に打ち込み、優れた研究成果を発信できるように、特に博士後期課程最終年次における博士論文等の成果創出に専念できるよう支援するという趣旨から、令和6年度より、特別研究員-DCの採用最終年次の在籍者のうち、採用期間中に優れた研究成果を上げ、さらなる進展が期待される者に対し、研究奨励金特別手当を支給することとしており、この度、田中優斗さん(D3) が研究奨励金特別手当の支給対象者に選出されました。
<2025.6.26>
髙木力教授が札幌第一高等学校で特別講義を行いました!
<2025.3.26>
八重樫健吾さんが令和7年度漁業懇話会奨励賞を受賞しました!
漁業懇話会では、若手研究者の育成と漁業研究の活性化のため、優れた若手研究者を褒賞する漁業懇話会奨励賞を設けています。対象は、前年度の春季および秋季大会において口頭発表またはポスター発表を行った学生等(おおむね30歳以下)とし、発表内容は研究発表部門「1. 漁業」の細目に該当する研究内容としています。今年度は、本会委員会の委員からの推薦を受け厳正な投票を経た結果、八重樫健吾さん (M2) が 受賞者に選出されました。
氏名:
八重樫 健吾
講演題目:
状態推定技術による網漁具形状制御と流体力係数推定に関する研究(令和6年度春季大会)
受賞理由:
本研究は,網漁具の形状を光学カメラで撮影するだけで,その形状から定常流下における網漁具の流体力係数(抗力係数)を状態推定技術に適用することにより推定しようとするものである。水産工学分野では網地や綱などの抗力を高精度に見積もることは設計上極めて重要であるが,実際に運用されている漁具は水中で大変形するため,一様流れの中でもどのような流体力が各部材で作用しているのか見積もることはこれまでほとんど不可能に近かったといってよい。特に変形した網地はその微少部位ごとに形状が流れ場の中で異なるため,流体力が異なるようになり,局所的な流体力係数がどのような構造となっているのか評価することは従来の方法では不可能となっていた。そこで,本研究では,ベイズの定理を基底とする状態推定技術を用いて抗力係数を網地の形状を捉えるだけで推定するというユニークなアプローチで提案していることが評価すべき特徴となっている。状態推定技術はカルマンフィルタで代表されるようなフィルタリング手法と呼ばれており,観測データを活用しながら変動する隠れた状態値(この場合は抗力係数)を推定する技術を指しており,気象予測では積極的に導入されている技法であるが,漁業生産技術に本手法を取り入れて設計上重要なパラメータである抗力係数を推定するという研究はこれまでに例がない。漁業分野においても汎用的な手法を提案する可能性がある重要な基礎研究成果としてその独創性は高く評価できる。なお,提案手法で推定される抗力係数は観測値(この場合は漁具の形状)から物理パラメータが推定されることになるので,逐次的にその条件下で最も相応しい最適解を得るという一種の制御問題として捉えることができるため,その逆問題のように所望とする流体力となる様に漁具の形状を制御することも可能となると考えられ,その応用性は極めて高いものと考える。基盤的な研究成果として本研究の価値は高いものと評価でき,今後の展開が大いに期待される。
https://jsfs.jp/act/commitee/jsfs-com7/gyogyokonwakai-shoreisho/
<2024.4.20>
Journal of Theoretical Biologyに掲載されました。
●尾ヒレを振らないまま流されず定位したり、他個体に追従したりする「ドラフティング」に着目。
●実際に生きた魚と翼模型を用いて魚のドラフティングを再現、魚体まわりの流れ場の解析に成功。
●魚体にかかる力が最小になるよう、流れ場に応じて最適な遊泳姿勢を選んでいた魚の機能性を解明。
北海道大学大学院水産科学院博士後期課程3年(研究当時)の江口 剛氏と同大学大学院水産科学研究院の髙木 力教授らの研究グループは、魚が尾ヒレを振らずとも推進できる「ドラフティング」についてマアジやウグイと翼模型を用いた生体実験を行い、魚が魚体まわりの流れ場の変化に伴う圧力差を利用することで魚体にかかる力を低減させるメカニズムを明らかにしました。
魚は尾ヒレを振って流体を押し出し、その反作用で推進します。ただ、例えば川の岩など構造物周辺では尾ヒレを振らず定位する様子も報告されます。これらは構造物の影となる死水域や前方の淀み域に魚が入ることで流れから受ける抗力と釣り合わせています。そのため似た個体サイズが集まる魚群内で同様の現象が起きるとは考えにくいです。
そこで本研究では魚群を想定し、魚の流線形に似た翼模型を構造物に採用しました。粒子画像流速測定法(PIV)を用いて流れ場を可視化・解析した結果、流れの剥離がほぼない状態で比較的高い流速を受ける環境下でも、翼模型近傍に生じる局所的な低圧領域を利用して魚はドラフティングを実現させていました。この仕組みは生体実験のほか、魚を再現した模型実験や数値流体力学(CFD)でも検証し、魚の能動的な遊泳姿勢の制御がなければドラフティングの維持は困難だと明らかにしています。構造物まわりの局所的な圧力差すら推進力に利用できる魚の優れた形態や、常に魚体にかかる力を最小限に留めようとする柔軟な機能性が示唆されており、魚群遊泳における遊泳時の消費エネルギー節約の仕組みを説明する一因として発展が期待できます。
なお、本研究成果は2024年4月20日(土)にJournal of Theoretical Biology誌でオンライン公開されました。
論文名:Drafting behaviors in fish induced by a local pressure drop around a hydrofoil model(翼模型近傍での局所的な低圧領域による魚のドラフティング行動)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jtbi.2024.111821
プレスリリース
https://www.hokudai.ac.jp/news/2024/05/post-1478.html