天河七楽の勤めていたコンビニにアルバイトで働いていた大学生の女性。
深夜勤務であった天河七楽とは時間帯が違うため、一緒に働くことは殆どなかったものの、仕事の引き継ぎをする際によく雑談をしていた。
明るくポジティブな性格で、誰に対しても優しく、毎日が充実している女子大生――のように見えたが実際は、家族を惨殺した強盗犯たちに復讐するためだけに、その怨念だけで生きてきた女性。
「巻坂」という名前は親戚に引き取られてからの姓であり、かつては「逆巻」だった。
逆巻だった頃は、裕福とまではいかなかったものの、ごく普通の幸福な家庭で育った。家族仲は良好で、経済的にも特に問題ない家庭。
しかし、おだやかな生活はある日突然終わりを迎える。
強盗殺人事件が起きて母と兄を同時に失ってしまった。
事件を起こした犯人たちは、未成年であることを理由に公表されず、裁判もまた、未成年であることを考慮して、驚くほど軽い判決が下った。(後にこれは加害者側からの賄賂があったのではないかと螺旋巴に言及された)
父はその不公平さに納得できず、突如奪われた家族に未練だけが残り、数年後に自殺した。
自分だけが残ってしまった。自分だけが残された。
悲しみは憎悪へと変わり、彼女はただ、自分の家族を終わらせた人間へ報復するためだけに物事に取り組むようになった。
強盗の犯人である伊達石和に近づき、同じ職場で働くようになったのは情報収集のためでもあるが、彼がどんな風に日々過ごしているか、それを見ようと思ったがため。
あるとき魔術師と出会い、多くの人を殺すだけの力を得た。
ネック・クラッシャー。巻坂薫の得た人工怪異は、夜間にのみ活動可能で、彼女の中にある晴らすことのできない憎悪をエネルギーとして駆動する。
巻坂薫はその力を恐れることなくふるい、最初に殺した強盗犯の一人の所持品から、次々と共犯者をあぶり出していった。
ただ、その復讐は最後の一人を手にかけようとしたところで、天河たちに阻止された。
ネック・クラッシャーを上手くコントロールできていなかった彼女は、元強盗犯を着々と殺害していったが、その際、関係のない一般人や目撃者までをも手にかけた。故に、全てが終わったら自害するつもりではあったものの、復讐を完遂することはできず、力を与えた魔術師が仕込んでおいた「復讐失敗の合図」を使ってしまう。
結果、彼女の人生は首が何度も回転し、千切れることで終わりを迎えた。
みんなに好かれている。コミュニケーションに難はなく、どこへ行ってもやっていけるような女性。
使い魔のようなものだが、彼女自身も正確にコントロールできていなかった。射程に入った生物を見つけると見境なく首をへし折る。本体にあまり耐性はなく、天河七楽のただの殴打でも損壊した。
見た目は巨大な白い球体関節の人形のようであり、四肢は異様に細長く、全体的に人と虫の狭間のような歪な形をしている。