ここではお寺に関する幾つかの知っておいた方が面白いことについてまとめてみました。ただし、このような事柄については諸説、例外が多いことをご了解ください。
お寺の目的
現代のお寺は一つの目的の為のお寺もあるし、複数の目的を持って営んでいるお寺も多い。
目的1 宗派とりまとめの為
いわゆる「本山」と言われている寺で、その宗派をとりまとめて運営する「本社」機能。
運営費は派内のお寺からの寄金による
目的2 僧侶の修行の為
僧侶が仏教を学ぶ為の学校や修行場のような寺
運営費は本山または宗派の寺からの寄金、修行者からの寄金による。
目的3 檀家(墓地)の為
墓地を持ち、その墓地を維持管理し、また葬式等の法事を檀家に提供する。
檀家からの葬儀・法事などの御布施、墓地の管理費や販売などが収入となる
目的4 観光や歴史保存の為
庭や伽藍を観光に供する、あるいは所有する歴史物を保存する
拝観料、賽銭、御朱印・仏教物などの販売、歴史保存の為の公的支援金などが収入源となる。
お寺の様々な建物やもの
お寺の敷地の中には実にさまざまな物がある。山門、本堂、鐘楼、塔、客殿、書院、経蔵、塀、石仏、灯籠・・・・分かっているようで、それでいて実は知っておくと「自慢」できることもある。
山門 (三門・仁王門)
西欧のキリスト教教会堂では聖なるエリアは堂内だけだが、日本の神社仏閣ではいろいろな建物などを含んだ一定のエリアが聖なるエリアとされている。その為、その領域は塀で囲ったり、出入りする門などで明確にされている。
寺院の場合は、入退場の為の門として、特に本山では山門(さんもん)が立派に構築されているところが多い。山門は時として本堂より立派な建築も多い。
禅宗では寺院の門を潜れば三つの解脱(空・無相・無願)に通じるということで三門(さんもん)と称することもある(1枚目写真、南禅寺三門)。また、悪なるものが寺院に入ってこないように守る金剛力士像(仁王像)を安置しているところも多く、その場合、仁王門(におうもん)とも称している。
山門の上部階には外側に回廊、内側に仏像などを安置する部屋があるが、それらは建物の大きさにより異なる。
塀と筋塀 (すじべい)
寺院の敷地は中が見通せない塀で囲われていることが多い。その塀は古来からは上に小さな屋根を乗せた土の塀である(写真1、築地塀)。塀の外側には筋が装飾されているものがあり、それは筋塀(すじべい)と呼ばれる。筋数はその寺院の格を現すもので本山は5本の筋が描かれている(2枚目写真)。他にも3本(3枚目写真)とかも散見される 。
本堂 (金堂)
寺院の本尊を安置し、主たる儀式を行う場として本堂がある(「本殿」は神社用語)。本堂は金堂と呼ばれることもある(写真は鞍馬寺金堂)。内部は僧侶のみが入れる内陣と一般参拝者が入れる外陣とで分かれ、外陣は畳敷の広間になっている。また、左右奥には別部屋が作られているところも多い。また、小さなお寺は本堂内の一部が住職の居住場所になっていることもあるが、一般には本堂には居住はしない。
裳階 (もこし)
奈良の大仏殿のように、建物に収めている仏像の背が高い場合、建物の構造は背が高くなってしまう。しかし、風雨防止や見掛けのバランスや豪華さを狙って、裳階(もこし)という中間屋根を設備することがある。裳階がある場合、見掛けは複層階建てに見えるが実際には室内には上位階はなく、高い空間となっている。(写真は泉涌寺仏殿、下側の屋根が裳階)
瓦屋根
お寺の屋根は立派な瓦で拭かれていることが多い。それに対して神社本殿・拝殿は杉板とか金属板、石板などで拭かれているのが普通である。気が付きにくいが面白い特徴。
窓
そもそも日本建築には西欧建築のような窓(腰高窓)は一般的ではないが、お寺建築では「火灯窓(花頭窓)」(かとうまど)という形状の窓は比較的目につく。詳しくはこちら。
舎利殿と五重塔・三重塔
元々は仏舎利(ぶっしゃり)という釈迦の遺骨(の一部)を収めて置く建築として舎利殿と五重塔・三重塔が作られている。
舎利殿(しゃりでん)は基本的には正方形の平面構成で、内部は様々だが、鎌倉円覚寺の舎利殿(1枚目写真)では仏像を安置する為に裳階を持つ背の高い単一階層のものとなっており、そこには釈迦の歯が収められているということだ。一方京都・金閣寺(2枚目写真)も舎利殿とされているが、ここは三層階となっており、2階、3階部分に屋根が付いている。また、釈迦の遺骨が収められているとは言っていないようだ。
一方、五重塔・三重塔は木造で、通常、内部は心柱や柱梁などで占められ、簡易な階段で昇降はできるが居住空間は持たない。仏舎利は心柱の下に収められているとされている。仏舎利の塔は奇数階がほとんどで偶数回は珍しい。(3枚目写真は京都・八坂の塔、4枚目はその中心にある心柱、5枚目は内部の階段だが、各階に部屋はなく、小さな窓があるだけで暗い)
多宝塔
多宝塔(たほうとう)は真言宗寺院でよくみられる仏像を安置する為の2層の塔建築で、一階は正方形平面、二階は円形平面の姿をもつ。仏教では方形は「迷い、捕らわれ」、円は「悟り、真理」を現すので、そのような意味を持たせた形状とも推測する。
内部は一階には多少の仏像や仏具を安置することができるが、二階はほとんど利用できる空間はなく、下の屋根はむしろ裳階扱いと思える。
石塔
五輪塔(ごりんとう)(1枚目写真)とは石造りの五重塔で、古代インドの宇宙観を表す「地水火風空」の考えを日本独自に発展させたもの。五輪塔は、下から四角形、円形、三角形、半月形、宝珠形という五つの石を積み重ねている。
なお、お墓に備えられる卒塔婆板の上部はこの形状を模している。
多層塔 奇数段を持つ石作りの塔(2枚目写真)。元はストーパ(仏舎利を収める塚や塔)から由来しているというが、収められてはいないだろう。
宝篋印塔(ほうきょういんとう)(3枚目写真)は経典「宝篋印陀羅尼経」を納めるための塔が起源。下部は正方形断面、上部は円柱断面をもつ。四角い形が目立つのでわかりやすい。屋外設置なのでここに教典が収められてはいない。
釣鐘・鐘楼・風鐸
釣鐘(つりがね)もお寺には特徴的なものであり鐘楼(1枚目写真)という建物に吊るされている。鐘楼には袴腰(2枚目写真)といった裾をもった立派な鐘楼も時折みかける。
また、建物の屋根の四隅の軒下には風鐸(ふうたく、3枚目写真)という風鈴のような鐘か下げられていることもあり、風にそよぎ地味に鳴るのを聞くのも風流。
石仏
お寺の屋外で大変目につくものとして石仏があるが、石仏は多種多様あり、項を改めて記することができればと思う。ここではひとつだけ言うと・・・石仏はそのお寺自身が建立したり、信者等から寄贈されたものがあるが、それ以外に小さな石仏がたくさんあったりする。
お寺近隣の開発とか年の経過で置き場を失った墓石・石仏が自然とお寺に集まってきたものがある。これらは統一感なく雑多だが、その分、ユニークさと多様性に富み、被写体として面白く味があり、專門に写している人も多い。
下写真のように密集して安置されているところもあり、あの世も狭き門。