第40回京都学校教育相談研究大会の開催にあたり,一言ご挨拶申し上げます。
昭和53年8月18日,第1回京都学校教育相談研究大会が産声をあげました。当時,京都大学教授であった河合隼雄先生はその講演の中で,「0×100=0だが,1×100=100になる。0と1とではものすごい差があって,0を100倍しても0ですが,1を100倍すると100になり大したものだと思います。」と述べられています。本大会は,その時から数えて40回目の大会となりました。
「昔はよかったなあ」とか「最近の若者はなっとらん」とかいう言葉を耳にすることがありますが,40年前の記録にもそんなことが書いてありました。では,この40年の間にも若者はどんどん悪くなってきたのでしょうか。若年者のひきこもりや自殺が大きな社会問題になったり,非行の低年齢化,SNS等によるいじめや性被害も深刻な問題となったりしている現代,やはり昔の方が良かったのでしょうか。課題ばかりに目を向けるよりも,今を楽しみ,今を一生懸命に生きることに大人も子どもも目を向けてみてはどうでしょうか。この数ヶ月を振り返ってみると,野球・卓球・テニス・スノーボード・スピードスケート・カーリングをはじめとするスポーツの世界で活躍する日本の若者,特殊メイクや音楽,将棋など,文化・芸術の世界で活躍する日本の若者がいました。そして私たちの目の前にも,お年寄りに席を譲ったり,ボランティア活動に汗を流したりする若者の姿がありました。こうしてみてみると,今の若者もなかなか大したものです。
京都学校教育相談研究大会は40年間続いてまいりました。それは,ここにお集まりの皆様が自分の実践されてきたことを発表されて,それを一緒になって話し合ってきた40年間でした。自分の実践を,失敗したこともみんなで話し合って,失敗の中から成功が生まれてくることを実感し続けた40年間でした。教育には「教える」という面と「育てる」という二面があります。教えることについては意識をして取り組むものの,育てることについては知らず知らずにやっていることが多いと思います。教育相談の中には「育てる」という面がたくさん含まれていて,その「育てる」ことには多くの時間を必要とします。その時間を共有したこの40年間はまさに,今を楽しみ,今を一生懸命に生きてきた証のように思えてなりません。40年前の河合隼雄先生の思いの脈々として受け継がれた本大会が,多くの方々に支えられて開催できますことに改めて感謝の意を表します。今年もどうぞお楽しみください。