推薦者:下川雅嗣(しもかわ まさつぐ)(上智大学総合グローバル学部、グローバル・コンサーン研究所)
教会と社会
第二バチカン公会議(2014)『第二バチカン公会議 現代世界憲章』カトリック中央協議会(英語版はこちら)
カルヴェ, ジャン=イブ著(1992)『愛に根ざし、基をおいて―福音の正義を生きる』(イエズス会社会司牧センター訳)新世社
上智大学の設立母体であるイエズス会は、1975年第32総会において、『信仰への奉仕と正義の促進』という教令(第4教令)を採択した。この教令は、イエズス会員にとって、この2つが不可分であり、貧しい人々との連帯が根源的であることの宣言であり、その後のイエズス会の大きな影響を与え続けている。この歴史的な流れ、神学的基盤、教会及びイエズス会の任務、正義の促進の諸側面(コミットメントと貧しい人々との連帯、社会分析、構造変革とその政治的含意)について、第4教令の作成に深く関わった当時のイエズス会総長補佐カルヴェ神父が後日、詳細かつ深く考察して執筆したものであり、現在に至ってもその重要性は増すばかりである。
レオ13世教皇、ピオ11世教皇、パウロ6世教皇(1991)『教会の社会教書』サンパウロ
レオ13世教皇回勅「レールム・ノヴァルム」ピオ11世教皇回勅「クアドラジェジモ・アンノ」パウロ六世教皇書簡「オクトジェジマ・アドヴェニエンス」の2つの回勅と1つの教皇書簡の邦訳を一書にまとめたもの。
シェルタイス, M.J. ほか(1989)『カトリック社会教説 歴代教皇の教えに見る』(イエズス会社会司牧センター訳)ドン・ボスコ社
最初の社会教説であるレオ13世の「レールム・ノヴァルム」からヨハネ・パウロ2世の「真の開発とは」までの全ての社会教説の要点を非常に簡潔にまとめたもの。
教会と経済
教皇ヨハネ・パウロ二世(2012)『真の開発とは 人間不在の開発から人間尊重の発展へ―』(山田経三訳)カトリック中央協議会
先進国と途上国の問題(南北問題)を概観した上で、人間を中心とした真の発展(開発)を論じたカトリック教会の社会教説
上智大学社会正義研究所、国際基督教大学社会科学研究所(1994)『教会と社会の100年 「レールム・ノヴァルム労働者の境遇」から今日まで』柘植書房
上智大学社会正義研究所と国際基督教大学社会科学研究所の共催国際シンポジウム第11回「教会の社会教説一〇〇年」のを全部収録したもの。
教皇ヨハネ・パウロ二世『回勅 働くことについて』(1982)カトリック中央協議会(英語版はこちら)
「働くこと」についてのカトリック教会の公式な社会的見解(社会教説)です。せっかくカトリック大学である上智大学で学んでいるのであるから、「働くこと」についてカトリック教会がどう考えているのかを知っておいても良いでしょう。労働は人間の尊厳を表現し増大させるための価値あるものであると考え、同時に今の社会構造にはその価値を減ずる歪みがあること、特に、資本に対する労働の優位を明確にし、労働者の権利、労働組合の権利を確認し、世界における不平等や不正についての指摘もしています。私が学生時代、就職活動をやっている頃に偶然この本をみつけ、人生の方向性を変えた一冊とも言えます。少々文章が固く読みづらい部分もあると思いますが、わかるところだけ読んで、自分で「働くこと」についていろいろと考えていただけたらと思います。
教会と共生(解放の神学)
ソブリノ, ジョン(1992)『エルサルバドルの殉教者 ラテン・アメリカ変革の解放の神学』(山田経三訳) 柘植書房新社
エルサルバドルのイエズス会大学UCA(中米大学)が、富裕層の側ではなく貧困者の側にたつ選択をしたことによって、政府・軍に睨まれ、ついには1989年11月16日、6人のイエズス会員と2人の女性が暗殺される事件があった。その同じ共同体に属して、たまたまその時不在で生き延びたジョン・ソブリノ神父が、なぜ彼らが暗殺されたのかを分析する。
栗林輝夫(1991)『荊冠の神学 被差別部落解放とキリスト教』新教出版
日本の被差別部落の解放からキリスト教神学は何を学びうるのか、逆に何を返していけるのかを探る試みの本である。これを通して被差別者の神学をどう創っていくかを論じる。日本版解放の神学の試みともいえよう。
アルバート・ノーラン(1987)『解放の福音 イエス』(野村裕訳)新世社
南アフリカの解放の神学者によるイエス論です。
アビト、ルーベン・山田経三(1986)『フィリピンの民衆と解放の神学』明石書店
アビト、ルーベン・山田経三(1985)『解放の神学が問いかけるもの』女子パウロ会
アビト、ルーベン・山田経三(1985)『解放の神学と日本』明石書店
グティエレス, グスタボ(1985)、『解放の地平をめざして 民衆の霊性の旅 』(日本カトリック正義と平和協議会訳)新教出版社
グティエレス, グスタボ (1985)『解放の神学』(関望、山田経三訳)岩波書店
解放の神学の古典的名著。
Segundo, Juan Luis (1974). The Sacraments today. Translated by John Drury. Maryknoll, N.Y.
解放の神学者セグンドの秘跡論。キリスト教の秘跡とは個人的なものではなく、元来社会的なものであり、神の愛が、死の力(暴力と抑圧)に打ち勝つことを示す「しるし」である。
教会と共生(ともに生きるためのヒント)
本田哲郎訳(1998)『小さくされた人々のための福音 ルカ福音書・ヨハネ福音書』新世社
釜ヶ崎で長年日雇い労働者をしていたカトリック神父・聖書学者が、 ルカ福音書、ヨハネ福音書を、 「神は小さくされた人々の側に立っておられる」という視座で、ギリシャ語原典から訳しなおしたもの。
本田哲郎訳(1997)『小さくされた人々のための福音 マタイ・マルコによる福音書』新世社
釜ヶ崎で長年日雇い労働者をしていたカトリック神父・聖書学者が、 マタイ福音書、マルコ福音書を、「神は小さくされた人々の側に立っておられる」という視座で、ギリシャ語原典から訳しなおしたもの。
本田哲郎(1992)『続:小さくされた者の側に立つ神』新世社
『小さくされた者の側に立つ神』の続編
本田哲郎(1990)『小さくされた者の側に立つ神』新世社
釜ヶ崎で長年日雇い労働者をしていたカトリック神父・聖書学者が、徹底的に小さくされた側に立って、福音とは何かを明らかにしたもの。
ネメシュ, エドモンド、阿部光子(1988)『社会のただなかでミサを生きる』新世社
ミサは社会構造を変える原動力であることを示している本。