持続可能な炭素循環社会の実現に向けて、太陽光に代表される再生可能エネルギーを水素(H2)やCO2還元生成物などの化学エネルギーへと変換する分子システムの構築を目指し研究に取り組んでいます。特に最近では、図に示すN-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子を有するコバルトNHC錯体(Co-NHC)の特異な触媒作用を実証し、その活性制御因子の解明に取り組んでいます。具体的には、Co-NHCはCo(III)/Co(II)、Co(II)/Co(I)に基づく良好な酸化還元特性を示します。ここで、Co-NHCの2電子還元に伴い生成する平面正方形型d8-Co(I)種は、軸位に張り出したdz2軌道(最高被占軌道HOMO)がNHCの優れた電子供与能により著しく不安定化され、優れた塩基性/求核性を示します。これにより、プロトン/酸(酸性~中性)、水(塩基性)、並びに二酸化炭素(CO2)との反応に際して、優れた触媒挙動を示すことが明らかになりつつあります(右図)。現在、分子状窒素(N2)の活性化、CO2の6電子/8電子還元や強アルカリ水分解等の高難度反応系への展開も模索しながら、金属NHC錯体の触媒機能に関する学理構築と社会実装への挑戦を進めています。