それは私が一九歳の冬、細かく言えば十一月に遡る。私が初めて飲酒をしたのは。
その日は部活の小説の合評があり、その帰りに先輩が飯をおごるというのが通例であった。しかし珍しくその日は先輩に友人との予定があり私は友人と二人で焼き肉を食いに行くことになった。そのまま阪急で梅田まで向かった。私の通う大学は梅田から近かったので、よく梅田で遊んだり飯を食ったりしていた。
梅田につくと友人が探してくれた焼き肉屋に入る。よくある二階建てで、一階から入る建物である。席に着くや否や私は焼肉に関しては家派なので友人に注文を任せた。友人はどんどんカルビ、ハラミ、タンなどの肉を注文していく。ドリンクを聞かれたので私はコーラを注文した。そして友人はカシスオレンジを注文した。友人は私より一歳年上なので酒を飲むことが出来る。そして料理が運ばれてくるとお互い今日の合評会の話を肴に各々のペースで肉を焼き、ソフトドリンクや酒を口に運んだ。
肉は口に運んだ瞬間肉汁を口中に広げ、香ばしさも共に放った。それをドリンクで洗い流し次の肉に行く。これが黄金ルーティーンである。
そして、二杯目の注文時に、友人はカルピスサワーを注文した。私も飲んでみようと思い、カルピスサワーを注文した。勿論友人の許可を貰って。
口に入れた瞬間、なんだこれカルピスソーダじゃんと感じた。それ位私とお酒の出会いはあっけないものだった。しかし、その後が問題である。私は酔っぱらってしまったのである。しかもよりにもよって梅田で。
「うー。あの女に声かけてこよーかなー。なあなあ姉ちゃんこの後飲み行かん」
「お前ほんまやめとけって。夜風あたって酔い覚まそ」
「うーてめぇ大学どこや。何、K大、Fランやないかー」
「ほんまやめとけって」
このような会話を繰り返した。そうである。私は元来ジュースですらゴクゴクと早く飲み干すのに、お酒、しかもチューハイである程度度数の高いものをすぐ飲むとすぐ回ってしまう。その日はその後酔いを覚まし、スタバに行き終電で帰宅した。
その後は酒を飲むことが無く、というより機会がなく酒に興味すらなかった。そして話は翌年の二月まで飛ぶ。その日私はバイト終わりに友人に授業に代わりに出てもらったお礼に梅田の洋食屋で飯をおごった。そこでホテルでバイトしていた私は、宴会でお客様に出していたワインが気になり、飲んでみることにした。そして注文して運ばれて来るや否や、私はワイングラスに入った赤赤とした深紅の液体に目を見張った。なんと美しくてうまそうなんだ。私は気分上々でそれを口に運んだ。しかし、酒を飲みなれていない私はそれを口にするとまず初めに苦っと感じた。まるで労働中にくりまんじゅうから缶コーヒーを貰って飲んだちいかわのようである。それはそうである。今でこそ焼酎をロックで飲んだりウイスキーやブランデーをロックで飲んだりしている私だが、慣れていない状態でいきなり一三度のワインをジュースみたいな味を想像して飲むと苦いと感じるのも当たり前である。
「待ってこれ苦ない?」
「そらそうやろ。よう飲むなあ」
「うん」
今では赤ワインは大好きで、よくまでとは言わないがたま~に飲む。もちろん白も。
その後四月になり私は新歓オリエンテーションの実行委員会に入っていたので毎晩友人と仕事終わりにご飯を食べに行っていたのだが、その日は部活の話をしたいらしく、行くことが出来ずどうしようか悩んでおりラストオーダー終了している店が殆どだし、悩んだ結果梅田の居酒屋に入った。私はそこで生ビールをまず注文し、煮卵と焼き鳥二皿を注文した。
まずは煮卵を一口かじる。うまい。この味だ。たまらん。犯罪的だ。そして生ビールを口に入れる。うまい。こりゃまた犯罪的だ。生ビールは私にとってはエスプレッソソーダ、つまり炭酸入りコーヒーである。ニガウマである。この魅力を友人に話しても理解してくれる友人は少数で、むしろ苦さの質が違うと言われることが殆どである。
ここからは完全なうんちくなのだが、ビールは種類によっても若干味わいが違う。
アサヒは癖が少なくスタンダードで飲みやすく、ビール単体というよりはおつまみや料理とよく合う。漫画美味しんぼでは、癖が無くまずいビールと酷評されていたが、裏を返せば癖がないのでビール単体で満足することが無く、飲食店ではその満足感を満たすために料理を注文してくれるので大助かりだそうである。
そして麒麟に関しては一番搾りがうまい。これとサントリーのプレミアムモルツは何杯飲んでも苦くないので何杯でも行ける。
エビスとサッポロ黒ラベルに関しても普通においしい。プレモル程とまでは行かないが、飲んでて苦くなることは無く最高だ。
そしてギネスは濁っておりドロッとしていて炭酸控えめで渋い味である。これは単体で楽しむビールである。料理に合う合わないの差が激しそうである。
ハイネケンは、味はアサヒやキリンなどとほとんど変わらないが、炭酸がひたすら強い。強炭酸派はこれである。
コロナは瓶直飲みする派はお勧めだ。これも味はアサヒやキリンと変わらない。
そしてバドワイザーである。これに関しては量が少ない。味も大して変わらないのに。
まあ私のような味素人に聞くのもどうかと思うが。ウイスキーだがシーバスリーガルでさえあまりうまいと感じなかった。山崎はハイボールにするとすごくうまかった。高い酒は澄んでいる。よりすっきりフルーティーこれである。
ついでに言うと、ウイスキーは個人的にトリス、ブラックニッカ、ジムビーム、角全て味が変わらない。なので買うならブラックニッカを薦める。まあそこらへんは適当だ。シーバスリーガルは若干澄んでいたがほんの僅かであるため私は今後買わないだろう。
私の一番のおすすめはジョニーウォーカーレッドラベルである。スコッチウイスキーなのだが、とてもうまい。スモーキーな香りとすっきりとした飲み口がたまらない。千五百円でこれとは。三千円のブラックラベルは高くて手を出しにくいが、千五百円なら毎日でも飲める。
そして山崎だが、フルーティーで澄んでおり甘く、全然ウイスキー特有のツンという感じがしない。ウイスキーが苦手な方はまず飲んでほしい。と言ってもあまりおいてる店は少ない。もしあれば飲んでみて欲しい。世界が変わる。自分のままで。
おっと話がそれすぎた。そうそう、二杯目でハイボールを頼んでいたのである。これもまた独特の癖がありつつも炭酸があり飲みやすく好みの味だ。
そのあと勢い余った私はコンビニでちいかわのぬいぐるみキーホルダーを買った。その勢いで友人にラインした。
「勢い余ってこんなん買っちまったぜー。ワイルドだろー」
「やばすぎやろ」
私はギャグも古い。日常的に世界のナベアツや狩野英孝、スギちゃん、ゆってぃ、ここら辺のギャグを口にする。それと紳助である。紳助のトークを丸パクリして披露したりもする。
そんなこんなで家に帰り私の大学二回生としての生活が始まった。
私はその後もしばらく飲まなかった。なぜなら美味しいとは思いつつも飲む機会が無かったり、そこまで飲みたいと思わなかったからである。
そこから数か月後、私はとあるサークルに入る。そこへの加入が私を酒の底なし沼へと。
とあるサークルに参加してから私は、飲みに飲みまくった。ビール焼酎ハイボール日本酒サワーあらゆる酒を毎回飲む。平均八杯は飲んだ。途中飲みすぎて救急搬送され禁酒となったが、解禁以降もしこたま飲みまくった。我流の飲みすぎない飲み方も編み出した。このルールを守る限り、吐いたり、記憶が飛ぶことは無かった。
具体的には、焼酎やウイスキーのロックなどの強い酒と、サワーやカクテルなどの弱い酒を交互に飲むことである。こうすることでサワーがチェイサーの役割を果たし、強い酒を多く飲むという私の願望を満たしつつ悪酔いしない。
しかし、場の成り行きで一気飲みや、ウィスキーロック、ワイン、焼酎ロックを連続して飲んだ時は悪酔いしてトイレで嘔吐した。
このままでは小説でなく啓発書になるので、本題の小説に戻ろう。
救急搬送されたのは八月の事だった。サークルのイベントの後、焼肉屋で飲むこととなり、そこで友達と飲み勝負するべく、私は最初に注文したビールをほぼ一気飲みし、その後焼酎ロックを二連続で一気飲みし、その後緑茶ハイやウィスキーロックを一気飲みした。
途中まではよかったのだが、その後記憶がなくなり気が付くとタクシーに乗せられ金がないので途中で降り、駅まで歩こうとするも歩けなくなり、警察が駆け付け、救急車を呼ばれ、親が迎えに来た。
ここで私は禁酒となった。まあ未成年なので当たり前なのだが。
そこから私は酒を一カ月辞めた。しかし、人間そう簡単にやめられるわけもなく、一ヵ月後には家の料理用の日本酒を飲んだり、親にうそをつき友達と飲みに行き、いいちこ二十度一点八リットルパックを二本買ってもらい、誕生日の十一月まで繋いだ。具体的には、いいちこを家にあった炭酸水で割り、炭酸水一本分、つまりコップ二杯分飲んでいた。これがフルーティーで最高に上手い。風味は青りんごで、味は酒である。そう、それで思い出したのだが、私は酒の味がしないチューハイやサワーは最近飲まない。具体的には、そういうものは飲み放題では元を取る為飲むが、家ではそーゆーのはジュースで我慢し、その分ビールを買っている。
ここで宅飲みルーティーンについて語っておこう。
まず最初にビールを飲み、次に日本酒、缶チューハイ(九パーセントなどの強いもの)のどちらかを飲み、次に、ワイン、焼酎、ハイボールなどを飲んでいく。そうして酔いが回ると私は友人にラインを送ったり、インスタにストーリーを上げる。そして気づくと布団に入っている。そして早朝に目が覚める。
話がかなり脱線したが、私の酒に関する変遷は大体こうである。それでは話に戻ろう。
十一月の誕生日を迎え、禁酒が解禁された私は、友人と飯に行き飲みまくりの毎日である。
もちろん家でも飲みまくり、ビール、芋焼酎、麦焼酎、ウイスキー、チューハイ、サワー、リキュールを買い込み飲みまくった。焼酎は芋が大好きで、特にどの焼酎も差がないが、黒霧島が大好きである。水割りで飲むことが多く、多くは焼酎と水を一対一で割る。これ以上水の割合を多くすると、まずくなるので焼酎を気持ち多めに入れるのがコツである。ストレートでも飲んだが黒霧島はきつい。水割りの方が焼酎は豊かな風味を味わえる。
泡盛、特に古酒(クースー)はストレートの方がうまい。独特の風味がたまらないのと、味もとてもうまい。居酒屋でも私は泡盛はロック派だ。焼酎も居酒屋では芋をロックである。富乃宝山が特にうまい。
逆に日本酒は外で飲むことが多く、家で飲むことはほぼなかった。カロリーが高いのと、飯に合わないと感じたからである。しかし、妹の合格祝いで店で飲んだ純米大吟醸がうまく、なおかつ美味しんぼというアニメで大吟醸の話を見たことがあり、年末に自分で七百五十ミリの瓶を購入し飲んだところ、こりゃうまい。フルーティーで、白ワインより苦くうまい。いったん話を逸らすが、ワインで言うと私は断然赤派である。なぜなら、濃い酒の方が好きだからである。まあアルパカやサンタのようなチリワインの安めの物しか飲まないが。
話を戻すと、大吟醸には欠点もあった。それはご飯に合わないことである。酒飲みにとって飯との相性とは大切だ。大吟醸はそれ単体で味わうものである。それと刺身など特定の物しか合わない。
どちらかというと、白鶴や松竹梅がおすすめである。白鶴は祖母の家に帰省した時に飲み、松竹梅は自分で購入し、家で飲んだ。
だめだだめだ。小説というより評論文のようだ。小説に戻らねば。
そんなこんなで、春休みになった。友人と飯に行ったとき、将来の話になった。
「なあ、お前は将来の目標とかある。おれはクルーザー買って、センチュリー乗り回して、かわいい嫁さんもらってウハウハしたい」
いかにも大学生らしい目標と私は感じた。
「俺はなー、酒と服さえあれば何もいらない」
「うそー」
「ほんま、だってさ、そんな叶わん目標よりも叶う夢の方がええやん」
「あね」
その後過去の思い出話に花を咲かせたのでそこまで深く詰められなかったが、私の本心はそれである。
その後も私は飲み続けた。一月末には友人と飲みに行きメガジョッキ三杯生中一杯、チャミスル瓶半分飲み干しべろべろになった。
後輩との飯でも毎回飲んだ。なぜなら飲みにケーションは私にとって絶大な効果があると思ったからである。それと、楽しくない人との飯の時は酒は必須だ。ないなんてありえないし、無いと空気が地獄だ。私もコミュ力は普通だが、紳助ほどコミュ力おばけではないので、きついし楽しく無い。
高校の世界史の授業が四人しかおらず、そのメンバーと先生で飲みに行ったときも、べろべろに酔い、トイレで吐きまくった。友人には恥ずかしいから女子がいる飲みの席には呼ばないと言われた。まあ友人と私の考えが違うので当たり前だが。
私としては、私の酒癖を理解してくれる人と飲みたいだけで、引いている時点でその人とは仲良くなれそうにないし、こちらとしてもお断りである。むしろ一緒にべろべろになってくれる人と飲みたい。まあそんな奴はそうそういないが。友人が恥ずかしがる気持ちもわかるし、仮にそういう場面があっても飲みすぎないように今後は気を付けないと。
二日酔いで気持ち悪い翌日も九杯飲んだが、先述した方法により吐きはしなかったし、家まで難なく帰れた。
その後三月になり、高校の同窓会の後、みんなで飲みに行き、記憶をなくした。私は記憶をなくすと電車で寝過ごしたり、翌日になると前日の記憶が完全に消える。私は恋愛に全く興味のないタイプなので、ナンパやセクハラはしない健全な酒飲み(健全なのか笑笑)なので今のところ友人にしか迷惑を掛けていないが(それもダメだろ)、お酒は人をダメにすると考えると恐ろしい。
最近でもサークルで酒を一気飲みし電車を寝過ごしたり、指環を無くしたりしたが今のところ友人には迷惑を掛けていないのでセーフだ。
これが、これまでの私の酒遍歴なのだが、酒は飲めない方がいい、金はかかるし、健康にもよくない。寿命も縮む。
この物語はフィクションだが、実話をもとにしている。
この小説というか、なんか小説っぽくて趣味的な物は刺さる層は少ないと思うが、多くの酒飲みの心に刺さればいい。今後の私の展望としては、死ぬまで酒を飲みたい。
私自身恋愛願望は微塵もなく、結婚願望もほぼない。一人でいる期間が長く、一人で自分のペースで酒を飲むのが大好きだからである。現に一気コールは大嫌いだ。酒の味を感じられないし、まずくする一方だ。酒はたばこのように(まあ吸わないが)じっくり味わうのがいい。妹とこういう話をした。
「兄ちゃんは恋愛興味ないの」
「うん。ないよ」
「なんで」
「そもそも恋愛に全く興味ないし、結局人間は一人やしな」
「ふーん。それで」
「いつ死んでもいいって思えることが大切で、そのために毎日着たい服着て、好きな酒飲んで、俺は幸せや」
「ふーん」
そこで会話は終了した。妹は私を蔑む目で見た。
そこで私は考えた。私は死ぬまで飲み続けられるのだろうか。もし途中で気が変わって恋愛や結婚したくなったらどうしよう。まあそれはいい。後悔しても時間の無駄だ。そんなことより酒だ酒。
このような悩みを私は半年に一度ほど考える。なので個人的には恋愛願望や結婚願望が出てきたと同時に死ねればいいと思っている。これまで失敗続きだったのもあるし、しばらく興味がなく行動してこなかったのに今更無理だ。しかも、毎日酒を飲むと肝硬変や肝炎になる可能性もある。どうせならその前に死ねたら本望だ。酒はあくまで趣味であり気休めでしかない。このような悩みは一晩立てば忘れるが、本当に失恋して悩んだら酒や時間は解決してくれないだろう。それで時間を食ったり、酒で肝臓を壊しては元も子もない。だったら叶わぬ目標を持たない方が幸せだ。これが真理だ。
なので若いうちに命は絶った方がいい。将来も真っ暗だ。恋愛や結婚できないのは今のところ大した悩みではないが、それよりも老後の資金不足や経済危機、戦争、食糧危機、将来は暗い。戦後のような明るい日本はもうない。
だったら酒を飲んで早死にしようではないか。太く短い人生こそ理想だ。それに今のところ人生に満足しているし、後悔する前に死にたい。老後孤独死するならば、看取ってくれる人がいるうちに早く死のう。そのためにも酒だ。酒は人生を豊かにする。
勘違いしてほしくないが、私はアルコール依存症でもないし、酒も強くない。単なる酒カスだ。病気の時は一週間禁酒できるし、六杯目でベロべロとは言わないが酔う。
酒を薬のように信じているだけで、依存はしていない。
恋愛や結婚に興味がないのも、今の人生が充実している証拠である。毎年春になると恋愛に興味がなくなる。他人と比べた時しか興味はないので、他人と比べるのはやめた。幸せの物差しは人により違う。哲学的な内容だが、ファンタジーや学園物は別の人が書くので大丈夫だ。むしろ私は異端児だ。
今のところ酒と服にしか興味はない。居酒屋にもスーツにネクタイで行く。あえて正装だ。
今回は書けなかったが、サラッと服の変遷についても書いておく。書こうとも考えたが、今回の酒の話とほぼ変わらないので書かない。
簡単に言うと、大学入学当初は妹に買ってきてもらっていたが、友達の紹介でHAREの服にハマり、そこからこだわりだし、タートルネックにジャケットできれいめで通していたが、二回生になるとネクタイにハマりシャツにネクタイが普通になり、その後ジャケットを着用しだし、ほぼスーツとなり、二千二十四年になりダブルの六つボタンのスーツを買いそればかり最近では着用している。靴も当初は革靴が多かったが、スニーカーを履くことが増え、アクセサリーも人差し指から薬指等付ける位置が変化した。
こういうわけで小説を終了するが、今回私が言いたかったのは、今の私の人生観と酒観がこうですということである。それと酒に関する考えをまとめておくことで後々見返すことで当時の俺は尖ってたなーなどと再確認できる。
いわばタイムカプセル的な小説であろう。