朝、僕は布団の中でモゾモゾしている。携帯はアラームの機能をかけられたせいでジリジリと鳴っている。明日は休日だというのに、勇敢な意思を持った昨日の僕は朝から有意義な休みを過ごせるようにとアラームをかけていたのだ。アラームがなる度にそんな勇敢な力を失った僕は呻くようにモゾモゾと動く。それでもアラームはジリジリと鳴るので二階にいる母が煩さに耐えかねて止めに来る。これが僕の休日の朝の日課。母が来ても僕は起きないし、母も別に僕は何をしようが起きないので起こそうとしない。僕はモゾモゾ動くのをやめてスヤスヤと眠る。二度寝はいつでも最高だし、僕は「最高だな」って感じの表情でやっぱりスヤスヤするし、そんな心地良さを味わっている僕の代わりに母は息子の不甲斐なさにイライラする。今日の僕の罪深さと比例して僕はどんどんきもちよくなる。やっぱり二度寝は最高なんだ。
携帯がまたジリジリと鳴る。勇敢な昨日の僕は朝の僕が二度寝をすることを見越して対策を立てていたのだ。「うわぁ」とか思いながら僕はモゾモゾと動く。母は会社に行っているので煩さに耐えかねて止めにくることはない。僕は懸命にモゾモゾしながら腕を伸ばしてアラームを止める。アラームを止められた携帯はもちろんダンマリになっちまって音を鳴らさなくなる。僕は不意に思った。勝った。僕は昨日の僕に勝ったのだ。僕は得意げになる。一般人なら得意げになんてならないだろうが愚かな僕は何故だか得意げになって二度寝をする。僕の朝はこんなものだ。夜中に何かを成し遂げようなんて考えたって起きたら消えちまっているんだ。そういう訳で昨日の僕の二度寝対策は案の定というか功を奏さずに、僕は僅かにモゾモゾしながら今日もスヤスヤと眠っている。