「そこ、出してあげようか」
檻の向こうから声を掛けられる。最近よく外から声を掛けてくる、同い年くらいの少年。
そいつは、俺をここから出せるという。方法を聞いても答えがないものだから困惑する。
「僕はね、君のことが欲しいんだ。そのためならなんだってするよ」
「でも、ここは出られない」
「そんなの誰が決めたんだい? 君をそこに閉じ込めた大人たち?」
ここに閉じ込められた子どもたちは、戦場に駆り出される兵器として育てられる場所だ。
兵士、ではない。オレたちはあくまで兵器なのだ。
「そもそも、どうしてこんな場所にお前はいつも来られるんだ? 外に出てるとはいえ、ここは人なんて近寄れないのに」
「そんなの決まってる」
わからないことしか返ってこない。こいつは俺の何を欲しているのか、どうしてここにいるのか。全部わからない。
「君をここから出せるのは僕だけ。それだけは変わらない。君が頷きさえすれば、こんな場所から出られるんだ」
甘い誘惑なのはわかっている。それが嘘かもしれないことも。
ここに連れてこられたときも、君は特別だと言われた。兵器として子供を檻へ入れて、その子供が戦果を上げれば、親には報酬が出る。
だから、親もオレを喜んでここへ送った。
兵器としての訓練はもう終わる。もうすぐ俺は戦場へ逝く。それはつまり、死ぬことを意味している。
「さあ選んで。兵器として使い捨てられるか、僕とここを出るか」
気が付けば、首が縦に動いていた。
その瞬間、心臓に鋭い痛みが走る。息が吸えない。鉄の味が口を蹂躙していく。
何かの破裂した音が耳を貫いて、最期に見えたのは、目の前の少年の笑顔だった。
「そう、君が欲しかったんだ。この魂が。ここから生きて出られるなんて一言も言っていないのに。確証のない希望に縋るなんて、これだから人間は馬鹿なんだ」