2015年、パリ協定において地球温暖化問題に関する歴史的な転換が起きました。それまでは「2℃」を目標とした施策が打たれてきましたが、パリ協定において「1.5℃」へと目標が引き上げられたのです。2℃目標の歴史は1975年のNordhaus氏によるCan We Control Carbon Dioxide?とのワーキングペーパーにさかのぼることができますが、2015年に1.5℃へと転換したことになります。そのため2015年当時には1.5℃に相当するシナリオは存在せず、2018年に1.5℃特別報告書が公表されました。
2℃目標に従えば2050年に温室効果ガス排出削減目標は80%になりますが、1.5℃では100%、すなわちカーボンニュートラルが目標となり、2050年以降2100年に向けてはカーボンネガティブに向かう必要があります。エネルギー技術は一度設置されれば数十年は稼働するため、2020年に設置した設備も2050年に稼働し続け得ます。2050年に向けて残された時は限られており、丁寧かつ慎重に議論して進みましょう、長期の技術開発で目標を達成しましょう、というマインドだけでは実現できない可能性があります。そのため、従来のリニア型の研究開発によるイノベーションを目指すだけでなく、アジャイル型の研究開発や社会実装型のイノベーションが重要となります。
現在、下記のような主体に関わり、カーボンネガティブに向けた社会実装を目指した取り組みをしています。ご興味ある方はお問い合わせください。
1.化学工学会地域連携カーボンニュートラル推進委員会:カーボンインディペンデンス(炭素自立)に向けたビジョンの提示と実践
カーボンニュートラルの実現には、発電部門のゼロエミッション化、電化、革新的省エネに加えて、素材として活用している化石資源をカーボンニュートラルなもので代替することが必要となります。製鉄や化学など化石資源を素材として活用する産業は、CO2排出削減が困難な産業(Hard-to-Abate産業)と言われ、事業存続をかけた開発が続けられています。化学工学会地域連携カーボンニュートラル推進委員会では、将来の目指す姿を「カーボンインディペンデンス(炭素自立)ビジョン: CO2排出削減が困難な産業の循環経済への変革(Carbon Independence Vision: Circular Transformation from Hard-to-Abate Industries)」として取りまとめ、公表しました。第1版の公開後、更新を続けています(2026年3月第4版、2025年9月第3版、2025年3月第2版)。
2.株式会社X-Scientia:地域グリーン水素の早期社会実装
水素関連技術は家庭用燃料電池エネファームと自動車用途での社会実装が始まりました。家庭用燃料電池はコスト目標はほぼロードマップ通りに進展してきたものの、導入台数は大幅な未達であり、現在の外挿だけからは今後の到達見込みもありません。また、燃料電池自動車向けの水素ステーションはロードマップから2年程度の遅れで設置されているものの、燃料電池自動車の台数は目標から約8年程度の遅れと分析できます。2030年に向けて、技術目標は実現したが社会実装は実現しない、とならないよう、技術開発と並行して早期の社会実装のための取り組みを進めることが重要です。また、国内再生可能エネルギーの拡大のためには、国内で水素を安価に製造することが重要です。株式会社X-Scientiaでは、国内でのグリーン水素製造に向けた活動を行っています。
3.プラチナ構想ネットワーク:プラチナ社会の実現に向けた社会実装
プラチナ構想ネットワークでは、エコロジーで、資源の心配がなく、老若男女が全員、心もモノも豊かで、雇用がある社会をプラチナ社会と定義し、その実現を目指しています。そのため、人間にとって快適な自然環境を構築し、環境との調和・共存、エネルギー効率を向上させ、自然エネルギーを活用し、物質循環システムを構築し、生涯を通じた成長や社会参加の機会を創造し、健康で安心して加齢できる社会の実現が必要となります。また、文化・芸術に彩られた暮らし、飽和・停滞を打破する「限界を超えた成長」を実現するため、イノベーションによる新産業の創出が必須です。2022年4月の一般社団法人化をきっかけに、社会実装推進委員会を設置し、社会実装を加速していくことにしました。プラチナ再生可能エネルギーイニシアティブが始動しました。