研究について

研究対象:セミの鳴き声の進化


日本で暮らす人で「セミの鳴き声を聞いたことがない」という人は、いないと言っていいのではないでしょうか。

夏になると、クマゼミの合唱に暑さを覚えたり、夕暮れのヒグラシの遠鳴きに寂しさを覚えたり。

日本の夏の風物詩とも言えるセミの鳴き声は、日本の夏の情景に必ずと言っていいほど登場し、日本人は古くからその鳴き声と共に生きてきました。

それは彼らが『ミーンミン』や『ツクツクボーシ』など、種ごとにユニークで面白い鳴き声を聞かせてくれるからではないかと思います。


セミの鳴き声は、なぜこんなにも複雑で多様なのでしょうか?


セミはオスのみが鳴き声を発する昆虫です。

その鳴き声がメスを呼ぶためのものであるにしろ、種を識別するためのものであるにしろ、複雑すぎると思いませんか?

同じような目的でも、もっとシンプルな声で鳴く生物は数多くいるのに、わざわざお腹を小刻みに動かし、そのパターンを変えながら、あえて複雑な鳴き声を発する。

考えてみればみるほど、不思議でたまりません。

セミは、日本人にとってこれだけ身近な存在であるにも関わらず、その生態の研究があまり進んでいない生物の一つと言えます。

私は、行動生態学や、進化生態学などの観点から、セミの鳴き声が種によって「なぜこれほどまでに複雑なのか」を研究しています。