下らの研究チームは,慢性腰痛者が腰部への負荷を伴う「持ち上げ動作」の画像に対して,特徴的な注意の偏りを示すかをアイトラッキング(視線計測)を用いて検討しました。持ち上げ動作の画像と,同じ人物が荷物の横に立っている画像を同時に提示した結果,慢性腰痛者では,腰痛のない者と比較して,持ち上げ動作の画像により長く視線を向けることが示されました。
本研究成果は,慢性腰痛者では,痛みを直接表す刺激だけでなく,腰部への負荷を伴う日常的な動作場面に対しても視覚的注意が向きやすい可能性を示しています。今後,動作に対する心理的評価と視線行動との関連をさらに検討することで,慢性腰痛における疼痛関連情報処理の理解につながることが期待されます。
Shimo K, Ohga S, Hattori T, Matsubara T. Context-dependent attentional bias to lifting-related images in low back pain: an eye-tracking study. Pain Res. 2026;41:142–146.
服部らの研究チームは,肩の代表的な疼痛疾患である肩峰下疼痛症候群(SAPS)に疼痛感作が関与するかを検討しました。従来のMRI評価に加えて,圧痛閾値(PPT),時間的加重(TSP),条件刺激性疼痛調節(CPM)などの定量的感覚検査を実施した結果,疼痛と機能障害(SPADI)は,腱板の変性を調整後でもTSPと有意に関連することを示しました。
本研究成果は,SAPSの疼痛を評価・治療するうえで,これまで重視されてきた構造的異常だけでなく,疼痛の情報処理機構にも着目する必要性を示しており,今後の追加研究において,患者ごとの病態に応じた,より個別化された疼痛治療戦略の開発につながることが期待されます。
山口らの研究チームは、70歳以上の高齢者を対象に、運動による疼痛緩和効果(EIH)とその関連要因を検討しました。運動後に圧痛閾値(PPT)は有意に上昇したものの、その変化は臨床的意義ある変化には達せず、EIH効果は条件刺激性疼痛調節(CPM)および骨格筋指数(SMI)と有意に関連していました。
本研究成果は、高齢者ではEIH効果が限定的であり、その背景には内因性疼痛抑制機能の低下や骨格筋量の低下が関与する可能性を示しています。今後は、疼痛調節機能やサルコペニアを考慮し、身体活動の促進や栄養療法などを含めた多面的な疼痛治療戦略の開発につながることが期待されます 。
服部らの研究チームは、国際的なガイドラインに基づく運動+教育+薬物療法では十分な治療効果が得られなかった変形性膝関節症患者を対象に、Behavioral graded activity(BGA)による疼痛症状および疼痛感作の改善効果をsingle-arm trailで検証しました。BGAにより疼痛症状や機能障害とおもに、圧痛閾値(PPT)や時間的加重(TSP)などの疼痛感作の指標も有意に改善しました。
本研究成果は、様々な治療に抵抗性を示す変形性膝関節症に対する新たな治療戦略となり得る可能性を示しています。今後は、ランダム化比較試験等による詳細な検証を進める予定です。
大賀らの研究チームは,神経筋電気刺激法によって生じる筋収縮が,運動誘発性鎮痛(EIH)にどのように関与するかを検討しました。健康な若年者を対象に神経筋電気刺激法による筋収縮と偽刺激を比較した結果,筋収縮を生じさせた部位では圧痛閾値が上昇した一方,刺激していない離れた部位では明らかな変化を認めませんでした。
本研究成果は,神経筋電気刺激法による筋収縮で生じる運動誘発性鎮痛が,主として刺激された骨格筋における局所的・末梢性の機序によって生じる可能性を示しています。また,その効果には骨格筋量が関与する可能性も示されました。今後,随意的な運動が困難な対象者を含む臨床集団で検討を進めることで,神経筋電気刺激法を用いた疼痛管理やリハビリテーションへの応用につながることが期待されます。