手術支援ロボットには,複数存在する症例と治療法への対応が要求されます.開発当初から適用症例を想定した機構の設計を行うためには, 設計段階から利用段階に至った後の予測までを,一貫したプロセスで詳細な検証が必要となってきます.本研究では,任意の条件を設定可能であり, 一貫した環境構築を支援することが可能なシステムとして,設計時に称する3D-CADとVRシミュレーション技術に着目しています.医師の手技動作等,開発前の要求仕様の検証に必要な基礎データに基づいた設計手法を構築するため, これまで開発を進めてきた数理シミュレータと実物の操作入力システムを統合した術空間再現シミュレーションの開発を進めており,特に小児外科手術に適用できる機構や制御に関する最適化手法について研究を行なっている.
こちらもご参考ください → RTpedia@Waseda
可操作度に着目した小児外科用マスタ・スレーブ型手術支援ロボットの設計仕様に関する検討
手術支援ロボットの設計支援用術空間再現シミュレーションの構築 ~機構系設計に向けた基礎機能の構築~
術空間再現シミュレーションを使用した操作性評価指標の検討
術空間再現シミュレータを用いた小児外科用鉗子設計に関する最適化手法の構築
術空間再現シミュレータにおける連続針掛けタスクに向けた逆運動学解法に関する検討
マスタの操作性評価に向けた腕の動きに基づく定量的評価指標の検討
小児外科手術用の術空間再現シミュレータにおけるタスク拡張
術空間再現シミュレータを用いた小児手術ロボット鉗子機構の縫合手技に関する最適化
小児外科を模擬した仮想空間における擬似食道を用いた鉗子先端機構に関する基礎検討
術中におけるガンのリンパ節転移を見極めることは非常に難しく,現状としては,転移する可能性のあるリンパ節はすべて切除し,根治性を上昇させています.しかし,侵襲性が高いにも関わらず,病理学的転移が認められたものはごくわずかであることが問題となっています.そのため,がんを取る技術が目覚ましい進歩を示す今,術中に見る技術が求められている.本研究では,見る技術として陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)に焦点を当てています.PETは術前の診断に活用されていますが,機器として大型であることから術中における使用は難しい.そこで,がんを検知することに特化させることで,機能を絞り,従来を使用される術具の一つである鉗子に搭載する機構の実現を目指している.現在は,本機器の実用化に向けた研究と,より高度な計測システムとするためのロボット技術導入に関する研究の二つを進めている.
共同研究先:量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所(先進核医学基盤研究部 イメージング物理研究グループ)
関連研究プロジェクト:医療分野研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)
鉗子型ミニPETの開発に向けた先端開閉角度に基づく計数率補正の検討
鉗子型ミニPETの開発に向けた平行開閉動作可能な先端機構の検討
鉗子型ミニPETの開発に向けた操作ハンドルの設計検証
鉗子型ミニPETの高精度化を目指すロボット技術を用いた支援システムの開発
本研究は,高齢化に伴い,再発性,難治性の疾患である誤嚥性肺炎の予防に焦点を当てている.誤嚥性肺炎は,その症状から発症要因を誤嚥と特定することが困難なことや,高齢化に伴う筋力低下が再発を招くことから予防が必要とされている.誤嚥の予防では咳嗽力の維持や嚥下機能の維持が図られています.近年は,看護予防が注目されており,自分の健康状態を把握することは病院のなかに限らず,日常生活でも行われています.そこで,在宅での予防を目指し,在宅で実施可能であり,定量的に評価できることが必要となることから咳嗽力に着目した.特に,咳嗽力の評価に,咳嗽力を咳嗽運動以外の呼吸運動より推定することで解決を図ることを目指している.そのための計測システムの開発や評価手法の構築を進めている.
共同研究先:埼玉県立大学
誤嚥性肺炎予防のための努力性肺活量推定に関する基礎検討
誤嚥性肺炎予防に向けた咳嗽運動に依らない咳嗽力推定手法の構築
脳卒中の後遺症の中で最も代表的なものに片麻痺があります.片麻痺者は,片手片足が動かないだけでなく,バランスをとることも難しいことから,歩行の際には杖が必要となります.正確な杖歩行動作の獲得には量的訓練が必要となりますが,訓練時間の制限や,理学療法士と患者の負担が問題とされている.先行研究として,見守り無しで病棟内での量的訓練が可能な杖歩行訓練用歩行器(杖歩行訓練器)の開発が進められている.その中で,理学療法士による杖歩行訓練器使用時の定性的な評価から,進行方向に対し時計回りへの回転と追従性の低さが指摘されています.杖歩行訓練器は使用者の杖歩行動作獲得を目的としていることから,使用者の歩行動作に影響しないことが求められます.そこで本研究では,杖歩行訓練器が使用者の歩行に与える影響を定量的に解析し,杖歩行訓練器の課題点を明らかにする事を目指しています.そのために必要となる計測システムの開発なども進めています.
共同研究先:東京電機大学
片麻痺患者を対象とした杖歩行訓練用歩行器における段差乗り越え機構の開発
杖歩行訓練用歩行器が使用者の歩行に与える影響の定量的解析
杖歩行訓練用歩行器が使用者の歩行に与える影響を抑える改良方法の考案
近年普及している内視鏡外科手術は,患者には術後疼痛の減少や整容性の向上など身体的負担が従来の術式と比較して減少しています.しかし,手技難度の上昇や長時間に渡る挙上姿勢の維持による外科医の身体的負担の増加が問題となっています.先行研究において,長時間の挙上姿勢の維持を支持する上肢外骨格手術支援機器(Surgical Assist Suit:SAS)が開発された.SASは,手術にかかわる執刀医,スコピスト,助手を支援する機器として開発が進められている.当研究室では,このうち,スコピストと助手を支援する機能について,機器の開発・評価を行っている.特に機器のインタフェースに関する研究を進めている.また,ヒトに装着して支援する機器であることから,身体的負担の軽減について評価・検討をするだけではなく,心理的負担についても定量的に評価・検討できる手法の構築も進めている.
共同研究先:自治医科大学
スコピストを対象とした内視鏡外科手術用上半身サポートスーツによる上腕支持効果の検討
上肢外骨格型手術支援機器におけるスイッチレス制御システムの開発
上肢外骨格型手術支援機器の身体的・心理的評価に関する基礎検討
本学では体腔内を等張液で満たした環境において治療を実施する等張液充填式腹腔鏡下手術(Water-filled Laparo-Endoscopic Surgery:WaFLES)という手術が新たに構築されています.人工腹水の特性を活かした新たな治療法の実現が期待されています.WaFLESでは,単孔式手術での実施が想定されているため,術具同士の干渉により操作性が悪化し,術者への負担増加につながる単孔式特有の問題点や,浮力にて浮遊した臓器により術野が不安定になる課題がある.本研究では,外套管内に鉗子,電気メス,内視鏡など必要な術具を全て挿入して用いる術式に向けて,手術空間を確保する機能を有する外套管型空間確保マニピュレータ,先端術具を指させるホルダ機構,先端術具機構,操作インタフェースなどを開発している.さらに,機器を使用する場合の危険回避手法などについて研究している.
WaFLESについてはこちらをご参考ください.→ WaFLES Project
WaFLESのロボット化を目指した空間確保マニピュレータの開発
単孔式WaFLES支援ロボットにおける肩関節機構の開発
WaFLES支援用術具開発に向けた水中下における先端機能の基礎評価
単孔式WaFLES支援ロボットにおける術具ホルダの開発
WaFLES のロボット化を目指した空間確保機能の構築
鉗子と空間確保の操作を両立したマスタマニピュレータの開発
単孔式WaFLES用術具マニピュレータのワイヤとリンクを用いた動力伝達方法の基礎検討
単孔式WaFLESにおける先端把持機構の開発
単孔式WaFLES用空間確保システムにおける臓器損傷回避手法の構築
空間確保操作併用型単孔式WaFLES用マスタマニピュレータの開発
バイポーラ鑷子の姿勢決め機能を有する単孔式WaFLES用術具マニピュレータの開発
内視鏡下鼻副鼻腔手術における内視鏡映像とナビゲーション情報を用いた自動状況認識手法の構築
内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニングの手技評価に向けた内視鏡映像を用いた術具運動解析手法の開発