プレスリリースあり
019 Large Perpendicular Magnetic Anisotropy Induced by an Intersite Charge Transfer in Strained EuVO2H Films
京大時代のお手伝い的仕事。陰山研との共同研究です。EuVO3は有名なペロブスカイト構造ですが、CaH2とのトポケミカル反応によって酸素と水素の置換が選択的にすすんで2次元的なEuVO2Hという化合物になります。
価数を考えると、Euは2+となりますが、Eu2+は軌道角運動量が0なので、真ん丸なスピンが出るはずだよねというイメージがありますが、実際は結晶の2次元性を強く反映して磁気異方性が出てますよという論文です。
NMRはEu核を見れるので実際にEuサイトで磁気秩序が起きていることが明らかになりました。
プレスリリースあり
018 Superconducting spin reorientation in spin-triplet multiple superconducting phases of UTe2
京大時代の最後の大仕事。スピン三重項超伝導体UTe2の圧力下超伝導状態に対してNMRを用いてアプローチしました。NMRはスピン状態を観測できる数少ない手法ですが、圧力下となると唯一といっていいでしょう。中性子の感度が100倍くらい上昇するまでは。そういったNMRにしかできないすごい仕事だと自分では思っています。Uじゃなければ上を目指せたかも・・・?
それはさておき、UTe2はスピン三重項候補物質だったわけですが、圧力下に新たな超伝導ドームが得られることがわかっていました。また、この超伝導状態より下の温度に常圧のものから続く超伝導相があり、最低温では2つの超伝導が混ざっている可能性が指摘されていました。NMRによって上の超伝導相が常圧のものとは異なる超伝導相であることを指摘しました。実際この辺は理論と食い違っていたりして興味深い点ではあります。しかし、理論の問題点として理論的には圧力を加えると近藤温度は上がっていきますが、実際は下がっていきます。この辺の食い違いが実験にも表れているのかなあという感じがします。
また、0.5K以下でさらに超伝導の性質が変わります。減らなかったスピン磁化率が減少するようになるのです。これは非常に興味深いことで、基本的にはスピン磁化率が減らないほうが安定なはずです。こういったところが低温相の大きな比熱の鳶に対応している可能性があります。加えて、この相ではスペクトルが広がります。つまり、スピン磁化率が分布します。これは2つの超伝導の共存に由来するTRSBだと考えています。NMRで見たのはおそらく初めてです。
プレスリリースあり
017 Gapless fermionic excitation in the antiferromagnetic state of ytterbium zigzag chain
京大時代の堀君との共著。007と同じ論文であることは気にしてはいけない。番号を変えるのが面倒だったのだ!
それはさておき、Ybジグザグ鎖構造を持つYbCuS2において、NQR(反強磁性の摂動はあるが)をしたよという論文です。反強磁性秩序がちゃんと一次相転移であることもちゃんと示されています。1 K付近で反強磁性秩序を示し、1/T1は減少するのですが、0.5 K付近からその減少は抑えられ、1/T1 ~ Tとなります。これはよくある金属的な振る舞いであって、フェルミオンの存在を示唆しています。反強磁性状態で生まれるgapless fermionic excitation…いったい何ラナ粒子なんだ…(注:マジレスするとマヨラナは見えません)。
007は2022の論文の顔をしていますが、実際は2021年の内容です。いろいろあって掲載が遅れました。
JPS Hot Topics
016 Large Reduction in the a-axis Knight Shift on UTe2 with Tc = 2.1 K
UTe2の2.1Kサンプル(超純良試料)におけるNMR測定の結果です。主に京大時代の松村君との共著。c軸は僕がとりました。うーんスペクトルめちゃくちゃきれい。a軸のナイトシフトがめちゃくちゃ減少したよという内容です。サンプルによって違うのか、前回ではちゃんと取れていなかったのか、いろいろなサンプルで測定する必要があると思います。JPS Hot Topicsに選ばれました。詳細はこちら。
UTe2の低温の揺らぎを見た論文です。主に京大時代の藤林君との共著。藤林君卒業ぎりぎりまで頑張った甲斐があったね。
Physical Review Letters: Editors' suggestion
プレスリリースあり
014 Parity Transition of Spin-Singlet Superconductivity Using Sublattice Degrees of Freedom
CeRh2As2のNMR論文です。主に京大時代の学生の尾形君と助教の北川さんとの共著。CeRh2As2では、磁場誘起のパリティ転移がありますが、それをちゃんと見たよという話。タイトルのSublattice Degrees of Freedom考えたの僕です。
013 Change of superconducting character in UTe2 induced by magnetic field
UTe2ではb軸磁場下で超伝導が増強されますが、増強された先がどうなっているのかは未だよくわかっていません。今回はNMRを通して、低磁場の相と高磁場の相でスピン状態が異なっていることを指摘しました。8か月の格闘を経て出版されました。
戦いすぎでは・・・?
JSPJ Editors' choice
012. Site Split of Antiferromagnetic alpha-Mn Revealed by 55Mn Nuclear Magnetic Resonance
固体量子OBの真砂さんが固体量子研究室で行った研究です。お手伝いしたので共著に入れていただきました。ありがたい。
Mnなんて単体なのにいまだに単結晶の作成が難しいことがあったり、磁気秩序が解明されていないなど、いろいろと分かっていないことがあります。
人間、新しいものに手を出しがち・・・。
Highlighted in Physics Today
011. Superconducting spin smecticity evidencing the Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov state in Sr2RuO4
Sr2RuO4のHc2近傍のNMR測定を行ったところ、FFLO状態で説明できる"2本角"スペクトルが得られました。FFLO状態って液晶で言うところのスメクティック相ですよねという感じです。プレスリリースもあります。
Physical Review B: Editors' suggestion
010. Drastic change in magnetic anisotropy of UTe2 under pressure revealed by 125Te-NMR
UTe2の圧力下の常伝導状態の異方性について研究しました。Pc以下とPc以上ではf電子の状態が異なるのではないかという提案を行いました。圧力下で物性測定できるNMRの強みが出た論文だと思います。
009. Superconducting Order Parameter in UTe2 Determined by Knight Shift Measurement
主に学生の藤林君との共同研究。UTe2の3軸のナイトシフトを測定しました。ここまでスピン状態が分かったスピン三重項超伝導体は他にないです(多分)。2段転移がないとするとB3uがもっともらしいよという内容です。
008. Two-dimensional XY-type Magnetic Properties of Locally Noncentrosymmetric Superconductor CeRh2As2
主に助教の北川さんとOGの木舩さんとの共同研究。CeRh2As2は常磁性状態でもヘンという話。CeRh2As2の研究は加速していく・・・はず。転移温度低いけど。
主に学生の堀君との共同研究。YbCuS2でギャップレス励起見たぞ論文。こいつは非常に難産(2022/03現在)だがいい研究です。
006. Slow Electronic Dynamics in the Paramagnetic State of UTe2
主にJAEA徳永さんとの共同研究。UTe2にはいろんな相互作用があるんです。「事実は小説より奇なり。」
主にOGの木舩さんとの共同研究。CeRh2As2の超伝導内部には反強磁性がある。Multipoleってすごい。
004. Inhomogeneous Superconducting State Probed by 125Te NMR on UTe2
続きものです。主にOBの仲嶺さんとの共同研究。UTe2がスピン三重項であることを微視的に明らかにしました。ここまできれいにスピン三重項が言える物質はかなり珍しいです(多分)。そのあとなんか内部にあるかもねという指摘をしました。
JPSJ Most cited article 2020
002. Reduction of the 17O Knight Shift in the Superconducting State and the Heat-up Effect by NMR Pulses on Sr2RuO4
Sr2RuO4のNMRナイトシフトが下がったと報告があったので責任を持ってやり直しました論文。NMR測定って難しいってことがわかりました。格子は温まらないけど電子状態だけが温まることがわかってきました。この時用いられたNMRパルスでマイスナーを見る測定は、サンプルが超伝導状態にあることを確かにする確認手法であり、これが確立されたことは非常に重要です。報告を初めて聞いたときは心が痛かったのを覚えています。
001. Magnetic Field Effect on s-wave Superconductor LaRu4P12 Studied by 31P-NMR
記念すべき1本目の論文。上部臨界磁場近傍で変なのばかり報告されるけど普通のはどうなのという論文。うれしくて兄に見せると時間定数がT1なのがわかりにくいと指摘されたのを覚えています。確かになんでt1じゃないんですかね。
JPSJ Top 20 most downloaded articles 2019年5月、6月期に選出されました
口頭発表一覧(工事中・・・いつ完成するんだろう)
"NMR study of magnetic and superconducting properties on UTe2 under pressure" at SCES2022