2025.8.5現在
概略
東方書店で5年、その後岩波書店で30年、編集者として、出版業界でビジネスパーソンとして過ごしました。 岩波書店では、編集業務および編集局の部長としての管理業務に加え、ライツ管理や電子書籍化を担う部署を新たに創設し、部長を務めました。在職中の50歳のとき、大学の博士課程での学び直しを決意し、早稲田大学に入学、3年で博士号を取得しました。主な研究分野は日中関係史、現代中国論、書籍・雑誌を中心とするメディア研究で、関連の著作・論文を多数発表してきました。61歳の退職後、北京大学外国語学部日本語学科で3年間、現在は北京外国語大学日本語学院で3年間教鞭をとり、現在も北京外大で教員を務め、研究と教育に従事しています。
1. 編集活動
岩波書店入社後、月刊雑誌『思想』編集部、月刊雑誌『世界』編集部、学術一般書編集部、学術書編集部を経て、単行本200冊以上を編集してきました。また、岩波講座や著作集などのシリーズ書籍の企画編集を手掛けてきました。『岩波講座 近代日本と植民地』全8巻(1992-3)、『現代アジアの肖像』全15巻(1996-)『アジア新世紀』全8巻(2002-03)、『フォーラム 共通知をひらく』全7巻(2005-06)、『東アジア共同体の構築』全4巻(2006-07)、『リスク学入門』全5巻(2007)、『岩波講座「帝国」日本の学知』全8巻(2006-07)、『岩波講座 東アジア近現代通史』全11巻(2010-11)、『占領期雑誌資料大系 大衆文化編』全5巻(2008-09)、『占領期雑誌資料大系 文学編』全5巻(2009-10)、『シリーズ地震と社会』全11巻(2012-14)、『日中の120年 文芸・評論作品選』全5巻(2016-17年)、『岩波茂雄文集』全3巻(2017)などです。2014年には、岩波書店編集部内にデジタルコンテンツ事業部を設置し、紙の書籍のデジタル化を推進してきました。在任中に1600点ほどの図書の電子化を手がけました。 2018年以降、デジタルコンテンツ事業部と編集総務部を統合改編してライツマネジメント部を設置し、図書のデジタル化・翻訳権売買・書店以外の機関への図書販売・法務などの管理を調整し、知的財産権の柔軟な活用を主導してきました。翻訳ライセンス面では、中国語簡体字図書市場との翻訳権取引をさらに拡大するため、上海や北京のブックフェアに積極的に出展し、中国の有名出版社とのハイレベルな交流を通じて事業範囲をさらに拡大しました。編集者時代の35年間のことは、中国で出版した『播種人―平成時代編集実録』という本にまとめました。
2. 研究活動
北海道大学では学部と大学院修士課程において、中国の古典、特に先秦時代諸子百家(孫子・儒家・道家・墨家など)の思想史の研究を行いました。2007年から2010年まで、早稲田大学の博士課程に入学し、戦後の日中関係、とくに日本の知識人の対中認識の系譜について研究し、博士論文を単行本『戦後日本人の中国観』として出版しました。岩波書店在職中から今日まで、現在までに50篇ほどの論文を日本の『アジア太平洋討究』『アジア遊学』『現代中国』『中国研究月報』『アステイオン』『中国―社会と文化』、中国の『学術思想評論』『開放時代』『日本学刊』『二十一世紀』『南開日本研究』『読書』『国外社会科学』『抗日戦争研究』『文藝理論と批評』『国外理論動態』『文芸理論と批評』といった学術雑誌に発表してきました。さらに、中国社会科学院、北京大学、清華大学、中国人民大学、伝媒大学、南開大学、中山大学、山東大学、台湾大学などの大学で講義・講演・学術発表を行っています。
3. 教育活動
岩波書店在学中は、千葉大学文学部、東京大学教養学部、立教大学21世紀社会デザイン学科、早稲田大学エクステンションセンターなどで講師を務めました。2019年9月から、北京大学外国語学院日本語学科の外国人専門家として勤務し、学部生・大学院生を対象に、「上級日本語」、「中日翻訳」、「日本語敬語概論」、「日本語通訳指導」、「日本社会」、「高度メディア日本語」、「日中文化文脈」、「日中翻訳事例分析」などを担当、2022年7月より、北京外国語大学日本語学院と北京日本研究センターに准教授として勤務し、学部生・大学院生を対象にして、「日本語作文入門」「日本語作文応用」「論文指導」「異文化交流」「日本文化研究専門」「中日比較文化概論」「中日比較文化基礎」などの科目を担当しています。学部生・大学院生の卒業論文指導にもあたっています。2019年秋、北京に赴任してからの6年間の生活については『第二の人生は北京で』(仮題、近刊)にまとめました。
略 歴
1958年9月17日生まれ、長野県伊那市出身
1981年 北海道大学文学部卒業
1983年 北海道大学文学部大学院東洋哲学研究科修了、文学修士
1983—1988年 東方書店、出版部勤務
1989—2019年 岩波書店、『思想』『世界』編集部、学術一般書編集部課長、編集局部長、デジタルコンテンツ事業部部長、ライツマネジメント部部長
2007—2010年 早稻田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程
2010年3月早稻田大学大学院亚洲太平洋研究科博士课程任期満了、学術博士
2011—2020年 千葉大学文学部非常勤講師,東京大学教養学部教養学科地域文化研究アジア日本研究非常勤講師,立教大学大学院21世紀社会デザイン学科兼任講師,早稻田大学エクステンションセンター講師
2015年 中国伝媒大学(北京)新聞伝播学系伝播研究院名誉教授
2019年9月―2022年6月 北京大学外国語学院日語系外籍専家
2022年7月―现在 北京外国語大学日語学院・北京日本学研究中心副教授
2011年4月―現在 早稲田大学特別センター員
2025年4月―現在 爱知大学国際問題研究所客員研究員
学位論文
<学士学位論文>
「『孫子』の文献批判と思想の分析―銀雀山漢墓出土の竹簡資料を中心として」1981年北海道大学文学部中国哲学科に提出
<修士学位論文>
「中国古代の死生観――鬼神・魂魄を中心として」1983年北海道大学大学院東洋哲学研究科に提出
<博士学位論文>
「戦後日本における中国論の変遷 1945-1972――総合雑誌関連記事の歴年推移をたどって――」2010年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に提出
著書(論文・共著を除く)
『『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』法政大学出版局、2004年、238頁
『戦後日本人の中国像』新曜社、2010年、722頁(第28回大平正芳記念賞特別賞,2012年)
『現代日本人の中国像』新曜社、2014年、402頁
《战后日本人的中国观:从日本战败到中日复交》(苑崇利、胡亮、杨清淞译),社会科学文献出版社(北京),2015年,780页
《播种人: 平成时代编辑实录》上海交通大学出版社、2019年