研究紹介

1.中新世類人猿

1-1. ナチョラピテクスの性差

<背景> 

    類人猿は種数こそ少ないものの多様な社会構造を持ち,その進化解明は,ヒトの雌雄ペア型・協力的繁殖の起源を探るうえで最も重要な研究対象の一つと考えられます。化石霊長類の社会構造を推定する方法は,犬歯や体格(体重)の性差を明らかにすることが唯一の手段です。なぜなら,現生霊長類において,犬歯・体格の性差とオス間の競合の強さとの相関関係が示唆されているからです。化石類人猿の性差を扱った先行研究は数多くありますが,化石化しやすい犬歯のみを対象としており,真の体サイズの性差を推定しているとは言えません。また,体肢骨を用いた化石類人猿の性差を扱った先行研究は,標本数の制限により非常に限られ,数えるほどです。そこで,ナチョラピテクスの大腿骨標本を多数用いて推定体重の性差を明らかにし,社会構造について検討しました。

<研究成果と意義>

     ランダムサンプリング・シミュレーションを行った結果,ナチョラピテクスにおける体重の性差はゴリラに相当し,オスがメスの約2倍という値を示しました。現生類人猿において,大きな性差を持つ種は,単雄複雌(ゴリラ)もしくは単独・離合集散(オランウータン)といった社会構造を持っています。ところがナチョラピテクスは,発掘状況から複数のオトナオスと複数のオトナメス,さらに未成熟個体が複数含まれる可能性があり,性差が大きいながらも複雄複雌といった現生類人猿には見られない社会構造が推定されました。得られた結果は,現生類人猿には見られない体重性差と性比の組み合わせであることから,類人猿の社会構造進化を解明するための確定的かつ画期的な新知見と捉えることができます。今後,1500万年前の東アフリカの詳細な気候,植生,捕食圧など生態学的に影響を及ぼすデータを加味することで,このような社会構造を生み出す要因を追求し,大型類人猿・共通祖先の社会構造モデルを構築するための基礎データとして活用することができると考えています。

Kikuchi Y, Nakatsukasa M, Tsujikawa H, Nakano Y, Kunimatsu Y, Shimizu D, Ogihara N, Takano T, Nakaya H, Sawada Y, Ishida H.  

Sexual dimorphism of body size in African fossil ape, Nacholapithecus kerioi.

Journal of Human Evolution, 123: 129-140, 2018.  

https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2018.07.003 

1-2.ナチョラピテクスの脊椎骨と体肢骨

<背景> 

     現生大型類人猿の共通祖先が生息した時代における中~大型のアフリカ産化石類人猿は,数種に限定されますが,ナチョラピテクスはプロコンスルと並び,多くの体幹・体肢骨が発掘されています。この時代における体幹・体肢骨の分析は,大型類人猿共通祖先の姿を探るうえで非常に重要です。さらに,ナチョラピテクスが生きた時代は,類人猿がユーラシアへ拡散した時期と重なり,その移動手段を明らかにし,拡散過程を解明するためにも,ナチョラピテクスの体幹・体肢骨の詳細を明らかにすることは必須と考えられます。以下,脊椎骨について3本、体肢骨について2本の論文を紹介します。

<研究成果1、頸椎>ナチョラピテクスの頚椎は現生霊長類の全身プロポーションで考えると,太く大きいことが分かりました。ナチョラピテクスの前肢は後肢に比べ相対的に大きく,歩行中にこの大きな前肢の筋作用を支えるため,強力な頚椎を持つ必要があったと考えられます。ナチョラピテクスの環椎の上関節窩形状は,現生類人猿的な形態を示し,環椎の前弓の形状は現生類人猿と旧世界ザルとの中間的な形状を有していました。軸椎について,歯突起は現生大型類人猿の特徴に類似し短く太く,また,左右の上関節面間の角度は,現生類人猿と旧世界ザルとの中間的特徴を示しました。

Kikuchi Y, Nakano Y, Nakatsukasa M, Kunimatsu Y, Shimizu D, Ogihara N, Tsujikawa H, Takano T, Ishida H.  

Functional morphology and anatomy of cervical vertebrae in Nacholapithecus kerioi, a middle Miocene hominoid from Kenya.

Journal of Human Evolution, 62: 677-695, 2012. 

https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2012.03.002 

<研究成果2、胸・腰椎>ナチョラピテクスの下位胸椎と腰椎は椎体にVentral keelを持っており原始的な特徴を示しました。下位胸椎における椎体頭側関節面の面積は,同体重比で,類人猿よりも旧世界ザルに近い大きさであり,また,胸椎と腰椎の境界(移行胸椎)の高さは旧世界ザル的で,どちらも原始的形態と考えられます。一方で,下位胸椎の腰椎の棘突起基部が下関節突起の高さに位置し,現生大型類人猿に見られる特徴が認められました。さらに,下位胸椎の棘突起基部は頭尾方向に長く,棘突起の背側先端は涙様の形を呈しており,どちらも現生大型類人猿に見られる特徴を有していました。

Kikuchi Y, Nakatsukasa M, Nakano Y, Kunimatsu Y, Shimizu D, Ogihara N, Tsujikawa H, Takano T, Ishida H.

Morphology of the thoracolumbar spine of the middle Miocene hominoid Nacholapithecus kerioi from northern Kenya.

Journal of Human Evolution, 88: 25-42, 2015. 

https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2015.09.003

<研究成果3、仙骨>ナチョラピテクスの仙骨頭側関節面の面積は,同体重比で,旧世界ザルよりも小さく現生大型類人猿と同様の傾向を示しました。一方,第一仙椎・椎体の頭側幅に対する尾側幅の減少率は高く,現生大型類人猿とは異なり旧世界ザルに類似していました。3つの仙椎から成る仙骨を有す旧世界ザルは減少率が高く,4つ以上の仙椎から成る仙骨が特徴の現生大型類人猿は減少率が低い結果を示しました。このことからナチョラピテクスの仙骨は,旧世界ザルと同様に3つの仙椎から構成されていたことが示唆されました。

Kikuchi Y, Nakatsukasa M, Nakano Y, Kunimatsu Y, Shimizu D, Ogihara N, Tsujikawa H, Takano T, Ishida H.  

Sacral vertebral remains of the middle Miocene hominoid Nacholapithecus kerioi from northern Kenya.

Journal of Human Evolution, 94: 117-125, 2016. 

 https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2016.03.006 

<脊椎骨についての3論文の意義>

    ナチョラピテクスの脊椎骨は,旧世界ザルのようなスタイルから現生類人猿のような形態に進化する過渡期であることが示されました。この結果は,ナチョラピテクスの行動様式の中には,現生大型類人猿のような,ある程度体幹を垂直位にする行動が含まれていたことを示唆し,1500万年前後に起こった環境変化への適応が起こりつつあったと考えられます。今後,四肢骨の分析を含め,環境変化とそれに伴う移動様式の改変を解明するにあたり,大型類人猿共通祖先の体幹・体肢復元モデルのための体幹基礎データとして多大な貢献をし得ると考えています。

<研究成果4、手根骨>

      ナチョラピテクスの手首関節において,尺骨の茎状突起は三角骨と豆状骨,どちらとも関節し,有鈎骨の三角骨関節面は背側から見ると,近遠位方向に沿うような向きとなっていました。また,有頭骨は遠掌側に中程度に発達した鈎状の突起を持ち,さらに,2つに分離された放射状の関節面を有していました。これらの関節面には,小菱形骨と第二中手骨がそれぞれ関節し,その間には手根中手靭帯が付着するものと考えられます。これは,早期中新世類人猿・プロコンスルには見られない特徴であることが分かりました。

Ogihara N, Almécija S, Nakatsukasa M, Nakano Y, Kikuchi Y, Kunimatsu Y, Makishima H, Shimizu D, Takano T, Tsujikawa H, Ishida H. 

Carpal bones of Nacholapithecus kerioi, a middle Miocene hominoid from northern Kenya.

American Journal of Physical Anthropology, 160: 469-482, 2016. 

https://doi.org/10.1002/ajpa.22984 

<研究成果5、正基準標本の下肢骨>

     ナチョラピテクスの正基準標本の股関節,膝関節,そして距腿関節の形態からは,現生類人猿のものとは異なり,早い時期の中期中新世の他の化石類人猿に示唆されている,樹上をゆっくり歩くような移動様式が推測されました。しかしながら,足部の形態は,樹上での把握に一層特化したものであり,垂直支持体を高い頻度で使用していた可能性も示唆されました。垂直支持体使用による体幹垂直位は,現生類人猿に特徴的な姿勢であり,ナチョラピテクス下肢骨は現生類人猿様の移動様式に適応しつつあったことが示されました。

Nakatsukasa M, Kunimatsu Y, Shimizu D, Nakano Y, Kikuchi Y, Ishida H.

Hind limb of the Nacholapithecus kerioi holotype and implications for its positional behavior.

Anthropological Science, 120: 235-250, 2012. 

https://doi.org/10.1537/ase.120731 

<研究成果新規大腿骨標本:種内変異と中新世類人猿の進化に関する示唆

     保存状態の良い標本を用いて、定性的および定量的な分析により、性差と種内変異を評価した。得られたデータを使用して、これらの標本がホロタイプ標本(KNM-BG 35250、いくらかの可塑変形を示す)と形態的に類似しているか、そしてナチョラピテクス標本を他の中新世のホミノイドや現生類人猿と比較して、特異性を評価しました。新規大腿骨標本は、以前に報告された一部の遠位大腿骨の特徴、特に膝蓋面(滑車面)の形態に関する記述に一致した。一方で、新規大腿骨標本は、KNM-BG 35250で以前に報告されたよりも、相対的な大腿骨頭サイズが小さく、相対的な頸部長が長く、頚幹角が小さいを示した。これらの特徴は、股関節運動学に関連する強い機能的なシグナルを示しており、ナチョラピテクスの近位大腿骨形態が、より進化したantipronogradeではなく、四足歩行のような移動運動に機能的に関連している可能性が示された。さらに、Turkanapithecus kalakolensisを除く他のアフリカの中新世類人猿は、ナチョラピテクスの変異内に収まり、全体的な大腿骨の形状がEkembo spp.およびEquatorius africanusに類似していることを示した。私たちの結果は、ナチョラピテクスにおける以前に推定された運動レパートリーと一致し、一般的な樹上四足歩行と、垂直登攀などの他のantipronogradeの組み合わせを示唆している。 

Marta Pina, Yasuhiro Kikuchi, Masato Nakatsukasa, Yoshihiko Nakano, Yutaka Kunimatsu, Naomichi Ogihara, Daisuke Shimizu, Tomo Takano, Hiroshi Tsujikawa, Hidemi Ishida

New femoral remains of Nacholapithecus kerioi: Implications for intraspecific variation and Miocene hominoid evolution

Journal of Human Evolution 155: 102982, 2021

https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2021.102982

1-3.関連論文:ナチョラ地域から発掘されたミオエウオティクス(ロリス類,霊長類)の新種

<研究成果>アフリカ・ケニア北部,ナチョラ地域から発見された約1500万年前の原猿化石は,P4(第2小臼歯)からM3(第3大臼歯)を有する右上顎で,中新世ロリス類「ミオエウオティクス」の新種であることが分かりました。早い時期の中期中新世からこの種が初めて発見されたことは重要な要素を含んでいます。つまり,先行研究から森林生活者と推測されている本種が,中期中新世ナチョラ動物相に含まれていた事実は,当時のナチョラ地域が森林環境であったことを示しています。これは,樹上適応した形態をもつナチョラピテクスをはじめ,森林性の動物相が数多く発見されている報告と一致する結果となりました。 

Kunimatsu Y, Tsujikawa H, Nakatsukasa M, Shimizu D, Ogihara N, Kikuchi Y, Nakano Y, Takano T, Morimoto N, Ishida H. 

A new species of Mioeuoticus (Lorisiformes, Primates) from the early Middle Miocene of Kenya.

Anthropological Science, 125: 59-65, 2017. 

https://doi.org/10.1537/ase.170322 

2.筋骨格系を対象とした定量化研究

2-1.三次元幾何学的形態測定学を用いた霊長類・第3-6胸椎における機能解剖とその適応

<研究成果と意義>本研究では、様々な移動運動様式の霊長類における第3から第6胸椎の特徴について調査した。類人猿4種、オナガザル4種、新世界ザル2種、合計67個の骨格サンプルを使用しました。胸椎のコンピュータ断層撮影画像を3次元(3D)データによる表面形状変換し、3D表面上に104のランドマークを取得した。プロクラテス法を用いてサイズに依存しない形状分析を行った。サンプル間の形状変動の主成分分析は、プロクラステス残差の分散共分散行列を用いた。類人猿において、横突起はサル種よりも背側に位置していること明らかになった。類人猿では、サルよりも横突起がより背側方向にも向いており、両者形態は胸郭への胸椎前方陥入に貢献している。クモザルとテングザルの胸椎は、相対的に背腹低く、関節突起や頭尾方向に伸長し、同時に棘突起基部は頭尾方向に伸びつつもその先端が短く、横突起の基部が側方に向いて頭尾長方向に長い特徴を示した。系統的に分離されているにもかかわらず、クモザル(尾を補助にぶらさがる移動運動をする)の椎骨特徴は、テングザル(樹上四足歩行/ジャンプ/アームスイング)のものと類似している。第3~第6胸椎の形態は、類人猿、オナガザル科、新世界ザルのさまざまな姿勢や移動運動を示す霊長類において、機能的適応を反映していることが示唆された。このため、上位脊椎の形態には、系統的特徴よりも、姿勢や移動運動に対する機能的適応が反映されていると考えられる。 

Kikuchi Y, Ogihara N.  

Functional anatomy and adaptation of the third to sixth thoracic vertebrae in primates using three‑dimensional geometric morphometrics

Primates, 62: 845-855, 2021. 

https://doi.org/10.1007/s10329-021-00929-3 

2-.ぶらさがり,ナックルウォーキング,指行性・蹠行性四足歩行の違いによる霊長類における上腕骨形態と肩関節筋の相関関係

<研究成果と意義>霊長類8種の三角筋,棘上筋,棘下筋,肩甲下筋を対象に,上腕骨筋付着部の皮質骨厚と生理学的筋横断面積との相関関係を調査しました。ナックルウォーキングのチンパンジーは,ブラキエーションを移動様式に含むテナガザルより,むしろ四足歩行の旧世界ザルに類似した特徴を有していました。一方,テナガザルは筋付着部の皮質骨厚が相対的に厚く,生理学的筋断面積が小さい結果を示しました。これはブラキエーションというテナガザルの特殊な移動様式により,上腕骨や肩周囲の筋にかかる受動的張力が,四足歩行の旧世界ザルよりも大きいことが影響していると推測しました。本研究は,サンプル数が1種1個体で極めて予備的な分析ですが,筋形態と骨形態を同時分析し,互いの情報を直接的にリンクさせている画期的な研究と言えます。このことから,多様な霊長類種を対象に骨内部情報と筋関連データを収集しデータベース化を図ることにより,化石種の筋復元に応用可能な基礎研究として位置づけることができると考えています。

Kikuchi Y, Takemoto H, Kuraoka A.  

Relationship between humeral geometry and shoulder muscle power among suspensory, knuckle-walking, and digitigrade/palmigrade quadrupedal primates.

Journal of Anatomy, 220: 29-41, 2012. 

https://doi.org/10.1111/j.1469-7580.2011.01451.x 

2-3.キイロヒヒにおける頭蓋腔,顔面および四肢のサイズ性差

<研究成果> 大きな性差を示すキイロヒヒ(サル類)の雌雄個体を対象に,頭蓋の性差とその社会学的行動による要因との関連性を,四肢サイズの性差を考慮しつつ調査しました。結果:性差が最大なのは口蓋長であったのに対し,顔面計測値の中では口蓋幅の性差が最小であり,雄のほうが雌よりも相対的に狭い口蓋幅と長い口吻を持つことが明らかとなりました。この口吻形態は,犬歯を目立たせることに貢献し,雄間の競合や外敵への威嚇に有利な選択圧によって獲得されたものと推測されました。

Kikuchi Y, Kuraoka A. 

Sexual dimorphism of endocranial, facial, and limb measurements in the yellow baboon (Papio cynocephalus).

Anatomia Histologia Embryologia, 44: 275-282, 2015. 

https://doi.org/10.1111/ahe.12136 

2-4.地上性のアカゲザルと樹上性のカニクイザルの橈骨と脛骨における骨断面特性

<研究成果>骨形態と行動様式の相関関係を明らかにする目的で比較分析を行いました。結果:カニクイザルにおける骨質分布に性差が認められました。これは垂直横飛び行動の頻度の差が、前腕および下腿の筋重量の違いを生みだし、その結果、骨質の性差をもたらしたと考えられます。また、橈骨の強度に大きな種差が見出だされました。これは、樹上性サルは地上性サルより樹間のギャップを移動する頻度が高いため、後肢より前肢に大きな力学的ストレスがかかることが要因と考えられます。

Kikuchi Y, Hamada Y.

Geometric characters of the radius and tibia in Macaca mulatta and Macaca fascicularis.

Primates, 50: 169-183, 2009. 

https://doi.org/10.1007/s10329-008-0120-3 

2-5.pQCTを用いたマカク属3種を対象とした橈骨遠位部断面形状の比較分析

<研究成果>地上性のアカゲザルでは、橈骨手根関節を歩行時に強く内転させる筋の活動パターンと一致する骨断面所見が得られました。樹上性のカニクイザルは、他種に比べ強い把持力に伴って屈筋が発達し、大きな関節可動域獲得のために尺骨との関節面が小さい特徴が見出されました。また、半地上性のニホンザルは上記2種の中間的な特徴を持っており、行動様式と骨形態の機能的相関関係が明らかとなりました。

Kikuchi Y.

Quantitative analyses of cross-sectional shape of the distal radius in three species of macaques.

Primates, 45: 129-134, 2004. 

https://doi.org/10.1007/s10329-003-0068-2 

3.軟部形態や骨内部構造に関する研究

3-1.ボノボにおける腕神経叢と腋窩動脈の形態

<研究成果> 大型類人猿・ボノボにおける腕神経叢と腋窩動脈の相互の位置関係は,ヒトにおける足立のC型と浅上腕動脈の複合形態であることが明らかとなりました(ヒトでは約5%の出現頻度)。つまり,腋窩動脈は常に腕神経叢の腹側に位置し,上腕部では浅上腕動脈となっていました。観察されたパターンは,ヒトのデータでは,外側胸動脈や下胸筋動脈などが腋窩動脈の代替的な本幹となったと考えられます。この所見は,ヒトとヒト以外の類人猿における神経や脈管系の形態学的類似性を示唆します。

Kikuchi Y, Oishi M, Shimizu D.

Morphology of brachial plexus and axillary artery in Bonobo (Pan paniscus).

Anatomia Histologia Embryologia, 40: 68-72, 2011. 

https://doi.org/10.1111/j.1439-0264.2010.01040.x 

3-2.pQCTを用いたチンパンジーとニホンザルの骨密度、骨断面積、骨塩量の年齢変化調査

<研究成果> 調査した2種の年齢変化パターンは、ヒトと極めて類似した特徴を示し、増減するステージや変化しないステージを組み合わせた3ステージにおおよそ分けられることがわかりました。一方、骨塩量や3ステージの変曲点年齢には量的差異が認められ、体格差や寿命の違いを反映していると考えられます。狭鼻猿種において、ライフサイクルを通して骨代謝がヒトと同様のパターンを示した本研究は、老化モデルを考慮する上で重要な情報と考えられます。

Kikuchi Y.

Age-change of bone mineral density in the distal radius of chimpanzees and Japanese macaques.

Anthropological Science, 111: 165-186, 2003. 

https://doi.org/10.1537/ase.111.165 

3-3.pQCTを用いたヒト、チンパンジー、ニホンザルの骨密度調査

<研究成果>pQCT(小型のCTスキャナー)を用いて、ヒト、チンパンジー、ニホンザルの前腕骨における皮質骨密度、海綿骨密度、全骨断面積に対する皮質骨断面積、ならびに全骨断面積に対する海綿骨断面積の比較を行いました。結果:チンパンジーはヒトに類似せず、むしろニホンザルに近い傾向を示しました。ヒト、チンパンジー、ニホンザルの海綿骨に関する計測値はほぼ同じ値を示し、正常な骨代謝に必要な骨量は、狭鼻猿の種に関わらず共通である可能性が示唆されました。

Kikuchi Y, Udono T, Hamada Y. 

Bone mineral density in chimpanzees, humans, and Japanese macaques. 

Primates, 44: 151-155, 2003. 

https://doi.org/10.1007/s10329-002-0031-7