従業員が5人未満でも任意適用申請をすることで加入が可能
前述の強制適用事業所に該当しない事業所、例えば従業員が5人未満の事業所であっても、任意適用申請をすることで健康保険や厚生年金保険に加入することは可能です。事業主が任意で申請し、厚生労働大臣の認可を受けた事業所を、任意適用事業所といいます。
任意適用を受けるためには、従業員の半数以上の同意が必要です。任意適用事業所となった際には、短時間労働者など被保険者から除外される人以外の全員が加入することとなります。
ただし、任意適用事業所では、健康保険のみ、あるいは厚生年金保険のみなど片方のみに加入することは可能です。
健康保険や厚生年金保険は、従業員の生活を支える基盤です。生活の安定は生産性向上にもプラスの影響を与えるため、雇用する事業主側にもメリットがあります。
常時5人以上の従業員を使用することで、強制適用事業所となる業種
製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介斡旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保険業、通信報道業など
なお、健康保険の適用事業所となり、40歳以上の従業員を雇用している場合には、健康保険料とともに介護保険料を支払います。負担額は、事業主側と従業員側で折半です。
雇用保険
雇用保険は、原則として従業員を1人でも雇えば適用される保険です。業種や事業所の規模は問題となりません。各種手続きは労災保険とあわせ、事業所が所在する地域の労働基準監督署で行います。
ただし、個人経営の農林水産業で、常時雇用している従業員が5人未満の場合には、任意での適用となります。
また、雇用保険の適用事業所となり、下記に該当する従業員を雇用した場合には、その従業員の雇用保険への加入手続きが必要となります。
1. 1週間の所定労働時間が20時間以上である
2. 31日以上の雇用見込がある
雇用保険への加入手続きは、事業所が所在する地域のハローワークで行います。保険料は事業主側と従業員の双方で負担します。従業員の雇用保険について不明な点がある場合は、最寄りのハローワークでご相談ください。
労災保険
労災保険も、雇用保険と同じく従業員を1人でも雇っていれば、事業所として適用対象となります(個人経営の農林水産業などを除く)。保険給付は雇用保険とは別に扱われていますが、保険料の納付などは雇用保険とあわせ、労働保険として取り扱います。
労災保険が雇用保険と異なる点は、パートタイムなどの短時間労働者を含むすべての従業員が加入対象となる点です。
したがって、従業員を雇用するたびに所轄の労働基準監督署への加入手続きが必要となります。また、保険料は全額事業主側の負担です。
個人事業主が雇用している従業員の社会保険について
個人事業主の方で従業員を雇用した場合には、事業所として社会保険に加入するケースを考慮する必要があります。
従業員が加入する保険は被用者保険と呼ばれ、狭義の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)と労働保険(雇用保険・労災保険)に分けることができます。以下で項目別に解説します。
健康保険・介護保険・年金保険
「健康保険」と「厚生年金保険」は、事業所単位で適用されます。適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所の2つの種類があります。
強制適用事業所とは、事業主や従業員の意思にかかわらず、健康保険や厚生年金保険に加入することを義務付けられた事業所のことです。強制適用事業所は、下記のような事業所を対象としています。
● 国や地方公共団体、法人で常時従業員を使用する事業所
● 一定の業種で、常時5人以上の従業員を使用する事業所
上記のことから、個人事業主の方でも「一定の業種」に該当し、常時5人以上の従業員を雇用する場合には、健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。一定の業種とは、下記の業種です。
なお、美容業や飲食店、クリーニング業や清掃業などのサービス業や、弁護士等の士業については従業員数に関係なく強制適用事業所の対象業種とはなりません。