(公財)JKA 2024年度競輪とオートレースの補助事業(研究補助、複数年研究)において
「超低消費電力・大容量光ファイバ通信システムの研究開発」というテーマの研究を行った。その成果をまとめる。
本補助事業では、位相共役変換器を用いた伝送(位相共役伝送)により波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing: WDM)の4値パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation :PAM)信号の伝送距離を延伸化することを提案した。下図に提案する伝送システムを示す。提案するWDM-PAM4信号伝送はデータセンター間通信に使用することを想定し、120 km以下の伝送距離となるため光ファイバ中の非線形歪みの影響は十分小さいと考える。データセンター間通信には25 Gbaudや50 Gbaudの高速変調のPAM4信号の適用が進んでいるが、デジタル信号処理による分散補償が困難なため、分散による歪みが伝送距離を制限する主要因となる。位相共役伝送により分散歪みを補償することにより、WDM-PAM4信号伝送の延伸化を図った。
伝送路に標準シングルモードファイバ(Standard Single-Mode Fiber: SSMF)を用いた場合は三次分散が零とならないため、三次分散の影響を受けて信号歪みが生じる。WDM-PAM4信号の位相共役伝送において、三次分散の影響は信号光とポンプ光の波長配置によって変わる。三次分散の影響を最小化するためには、信号光波長をできるだけポンプ光波長に近くなるように配置する必要がある。また、WD伝送Mの場合、波長チャネル間隔を狭くした方がポンプ光から最も遠い波長チャネルにおいて三次分散の歪みが小さくなる。
一方、信号光とポンプ光の波長間隔やWDMの波長チャネル間隔を小さくすると、位相共役変換時の非線形歪みの影響が大きくなる。位相共役変換器に信号光とポンプ光を同時に入射するが、このとき位相共役変換器中の相互位相変調(Cross-Phase Modulation: XPM)によりポンプ光の位相が信号光強度に応じて変化する。そのため、WDM-PAM4信号光の帯域幅に応じてポンプ光のスペクトルが広がる。信号光とポンプ光の波長間隔が狭い場合、広がったポンプ光成分が信号光と干渉し、信号光の歪みに繋がる。この歪みはポンプ光に近い波長チャネルほど顕著になる。また、WDMの波長チャネル間隔が狭い場合、PAM4信号のチャネル間XPM、四光波混合(Four-Wave Mixing: FWM)の影響により信号光に歪みが生じる。このチャネル間干渉は中央の波長チャネルほど顕著になり、また、チャネル数が多くなるほど歪みが大きくなる。上記の歪みにより伝送可能距離や伝送可能なWDMチャネル数が制限される。このため三次分散による歪み、および、位相共役変換時の非線形歪みを考慮した信号光波長配置設計が必要となる。
また、三次分散の影響を抑えるためには、信号光波長において三次分散がゼロに近い分散フラットファイバ(Dispersion-Flattened Fiber: DFF)を光ファイバ伝送路に使うことが有効と考える。DFFを用いることで、柔軟な信号光波長配置設計が可能になる。本補助事業では、DFFと位相共役伝送を組合わせた伝送システムを提案した。
<本研究で得られた成果>
[3] 三科健, 丸田章博,大澤皆斗, “光位相共役器及び光通信システム”, 特願2024-144457 (2024年8月26日出願).