バックグラウンドを問わず、広く一般の方におすすめしたい 文献を挙げます。
読者として想定しているのは、中高生、および閲覧順路「Eitetsu KENについて」を巡られている方々です。
なお、ご紹介するのは、数学を考察しているものとは限りません(もちろん権の興味には沿っているものです)。注意ですが、このことは、文献の内容の深さとは全く相関がありません。ここでご紹介する本たちは、
ーー前提知識を多く仮定せずにその骨子に辿り着けるーー
あるいは、
ーー(定義→定理→証明という形式に則っていないため)「数学書」として紹介するのが難しいからここに置きたいーー
・・・権はそう思った・・・
そのようにご理解ください。それから、当然ながら、権はここでご紹介する本たちの分野の全てに精通しているわけではありません(それでも、発信することに意義があると信じるので、載せます)。批判的に眺めていただければ幸いです。
最後に、お願いがあります。ご興味がおありの文献については、執筆者の方々をまず一度、読者ご自身で調べてみてください。できることなら権が一人一人の"著者紹介"をしたいところですが、権は必ずしもここで紹介する方々の仕事を広く深く理解しているわけではありませんから、(少なくとも今のところは)紹介する権利がないように感じるのです。悔しいですが、これをもって、文献の"著者紹介"に代えさせていただきます。
菊池 誠. (2014). 不完全性定理, 共立出版.
↑数理論理学の背景にある歴史・哲学を学ばれたい方へ、おすすめします。この本は文献案内も大変豊かで、次にも繋がっていくかと思います
Krajíček, J. (2019). Proof complexity, Cambridge, UK: Cambridge University Press, Encyclopedia of Mathematics and Its Applications 170.
↑これはれっきとした数学書(それも、モノグラフ)ですが、Introductionや各章の始まりと終わりの地の文 (数学的議論以外の部分)を拾い読みしていくことで、著者のProof Complexityに対する歴史観・学問観を学びとることができます。特にProof Complexityの数学他分野との関係性、その可能性に興味がおありの方に、おすすめします(この本を本格的に読むにあたっての準備については、文献案内を参照ください)
Pudlák, P. (2013). Logical foundations of mathematics and computational complexity: a gentle introduction, Cham: Springer, Springer Monographs in Mathematics.
↑数学の技術的ディテールには立ち入らずに、proof complexity・computational complexityとその周辺 の広範な内容を、深く見通しよく語ってくれている本だと思います(歴史を学ぶのにも優れています)。数理論理学・理論計算機科学にご興味がおありの方は、ぜひ一度手にとってみられてください。そして技術的ディテールを極めてこられた方にも、きっと何か新しい気づきがあるのではないかと思うので、ぜひおすすめしたいです
Thurston, W, P. On proof and progress in mathematics, in 18 Unconventional Essays on the Nature of Mathematics, R. Hersh (eds), Springer, New York (1994), 37-55. →arXiv
↑権が、プラハでの海外研修において、Zdeněk Strakoš教授の講義で出会ったエッセイです。批判の文章という形をとってはいますが、ここでは応援の文章として受け止めたいと思います(権にはそう感じられました)。
「これから英語で数学を勉強し始める」
「ずっと数学を続けてきたが、道に迷い始めた」
「数学者を応援したいと思っているが、どんな数学を応援すべきか考えあぐねている」
などなど、いろんな思いを持たれている方に、ぜひともおすすめしたい一編です。
分野外の人間の参加を快く受け入れ、種々の議論に応じてくださったStrakoš教授に、厚くお礼申し上げます
酒井 邦嘉. (2002). 言語の脳科学-脳はどのようにことばを生みだすか-, 中公新書.
↑「人間理性の限界」に、言語学や脳科学からアプローチしてみようと思っていた頃に、読みました。文献案内が豊富で、次にもつながるかと思います
戸田山 和久. (2000). 論理学を作る, 名古屋大学出版会.
↑権が学部3年生の頃、自分の興味にうまく言葉が与えられず、悩んでいた時に、救われた本です。哲学的な興味から論理学に関心がある方に、おすすめします
野矢 茂樹. (2011). 語りえぬものを語る, 講談社.
↑「人間理性の限界」に、哲学からアプローチしてみようと思っていた頃に、読みました。深いのに、非常に読みやすくて、おすすめです
山賀 進のWeb site(https://www.s-yamaga.jp/)
↑中高生の頃、感銘を受けたのをよく憶えています。特別な前提知識は要りません。数学を"はみ出して"「世界のこと・われわれのこと」を考えてみたい方に、おすすめします
大西 泰斗., & ポール・マクベイ. (2011). 一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法, 東進ブックス.
↑数学を自由に探求するには、(少なくとも)英語の文献を読める・英語でコミュニケーションができることが不可欠です。「英語に苦手意識がある」方、「英語の理解ではなく、文や話の中身の理解にエネルギーを使いたい」方に、この本をおすすめします
キム・ジヘ (著)., 尹怡景 (翻訳). (2021). 差別はたいてい悪意のない人がする, 大月書店.
↑(国内外を問わず)異なる文化・価値観をもつ方々とコミュニケーションをとるにあたって、とても役立つと思います
エリン・メイヤー (著)., 田岡恵 (監修)., 樋口武志 (翻訳). (2015). 異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養, 英治出版.
↑同上です
服部 久美子 (著)., 原田 なをみ (監修)., & David Croydon (監修). (2020). 数学のための英語教本, 共立出版.
↑数学の読み書きに必要な英語は、会話に必要なそれと比べて極めて限定的です。ゆえに、そこに的を絞れば、英語の勉強の時短は可能と考えます。そういった目標をお持ちの方に、この本をおすすめします
大平 信孝. (2021). やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ, かんき出版.
↑タイトルから少しずれますが、やる気はあるのに仕事を捌ききれていない、という方に、強くおすすめします
東畑 開人. (2022). なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない, 新潮社.
↑読者ご自身の活動を続けられる中で、「自らの心をマネージしたい」と思うことがあるかもしれません。そんな時に、よろしければ
西村 尚子(執筆)., & 尾崎 太一(執筆)., 髙橋英彦(監修). (2022). スマホと脳の最新科学, Newton, 2023年1月号, ニュートンプレス.
↑特に「スマートフォンに中毒的な作用を感じていて、どうにかしたいと思っている」という方へ、おすすめします
服部 正也. (2009). ルワンダ中央銀行総裁日記 (増補版), 中公新書.
↑これはあくまで例です。時に、一人の人間の生き様を垣間見て、自分が変わることがあるように思うのです。権の場合は、その一つがこの本だったので、載せました
藤田 哲也. (2007). 絶対役立つ教育心理学―実践の理論、理論を実践, ミネルヴァ書房.
↑「学ぶ」を、「自分で自分に教える」と言い換えてみることは、非常に有用だと考えます。自らの学びの質を高めるために、教師の視点から、教育学の知見を利用できるようになるためです。さらに教育学を学ぶということは、
「自分に今教育を施している教育者が、自分にどれだけ合っているか」
を測る基準をも与えてくれます。これは、自分の学びの環境を整える上で、極めて重要だと考えます。
以上を踏まえ、入り口として、この本をおすすめします