13:00-14:10 企画ワークショップ1
【講師】
金丸 敏幸 先生(京都大学)
【概要】
生成AIの急速な発展に伴って、英語教育の現場でもAIの導入が広まりつつあります。しかし、AIを導入してみたものの、期待する反応や指導の効果が得られず、「使えないなあ」と感じる方もおられるのではないでしょうか。実際のところ、AIから質の高い教育コンテンツを引き出すには、適切なプロンプトの設計が不可欠です。
本ワークショップでは、英語教育に特化したプロンプト設計の技術を取り上げます。前半では、まず、生成AIにおけるプロンプトとは何か、という理論的な説明を行い、効果的なプロンプトに必要な基本要素について紹介します。後半では、ライティング指導を例として、実際の授業場面で活用できる具体的なプロンプトを設計する方法を紹介します。参加者のみなさんにも自身の教育課題に応じたプロンプトを作成いただき、相互改善を図る時間も予定しています。
プロンプトの「コピペ」から一歩踏み出して、生成AIを「使いこなせるツール」として授業改善に活かせる実践的な知識とスキルの習得を目指します。
【講師略歴】
京都大学国際高等教育院准教授。博士(人間・環境学)。外国語教育・理論言語学・自然言語処理の知見を活用し、カリキュラム、教材、指導法の開発や教育評価の研究に従事。現在は生成AIの英語教育への導入ならびにその影響を中心に研究している。外国語教育と生成AIに関する講演・メディア掲載として、EDIX2024(東京、関西、オンライン)、日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、他多数。
14:15-15:25 企画ワークショップ2
【講師】
矢野 浩二朗 先生(大阪工業大学)
【概要】
ChatGPTに代表される生成AIの登場は、英語の産出技能指導に大きなインパクトを与えている。本講演では最新の生成AI技術動向を概観し、2つの事例によって、新しい産出技能指導について議論したい。一つ目のAIチャットボットでは、具体的に作成の手順を示しながら、構成する技術とその特徴について解説する。二つ目のメタバースを活用したライティング指導については、演者の授業実践例をもとに、学生が生成AIに頼りすぎない指導法を提案したい。
【講師略歴】
1973年生まれ。大阪工業大学情報科学部実世界情報学科 教授。千葉大学医学部医学科卒業後、マンチェスター大学生物学部大学院で修士号、リバプール大学医学部生理学科大学院で博士号取得。2004年よりケンブリッジ大学医学部生理学科博士研究員、2006年より同大学ペンブルックカレッジ シニアリサーチフェロー。2011年に大阪工業大学へ着任し、現在へ至る。主要研究テーマはVRと生成AIの教育分野への応用。
15:30-17:00 講演1
【講師】
小張 敬之 先生(グローバルBiz 専門職大学)
【概要】
急速に発展する生成AIやAIエージェントを英語教育に取り入れることで、どのように学習の質を向上させ、教育に真のイノベーションを起こせるでしょうか。本講演では、東京科学大学大学院および専門職大学での最新の実践事例を交え、AI時代に求められる新しい教育のあり方を多角的に考察します。
特に「世界観(Worldview)」「異文化理解」「科学哲学」といった深層文化的リテラシーの育成が重要になることを強調します。これらの能力は、人間特有の価値観や文化背景への理解を深め、AIを効果的に活用する基盤となります。
英語教育は今後、テクノロジーと人間の知性が相互に共鳴し、共に進化する時代へと向かいます。AIの活用が進む一方で、人間の創造性や批判的思考力を損なうことなく、より深い理解と対話が生まれる学習環境の構築が課題です。講演では、こうした新たな教育フレームワークを具体的に提示しながら、未来への指針を示します。
【講師略歴】
小張敬之(PhD)
グローバルBiz専門職大学教授、青山学院大学名誉教授・客員教授。東京科学大学大学院非常勤講師。オックスフォード大学客員研究員(1998, 2007, 2018-2020)。専門は言語情報科学、EduTech、英語教育。
詳細:https://researchmap.jp/read0044220
9:30-10:40 企画ワークショップ3
【講師】
水本 篤 先生(関西大学)
【概要】
本ワークショップでは、講師が開発したWebアプリケーション「LexiTracker」(https://urldefense.com/v3/__https://mizumot.com/lex.html__;!!CF15FET90Tp8!HW2Q8lYCfia1h8BEFwOdWKIS5Iwv2O-Ez7y74625FNG6t_XCJ7OWcuA6IybXCCwAAdfMI3KBXHClJbB0DLcnNV22BOM$ )を授業で活用する方法を紹介します。まず、アプリ開発の理論的背景を説明し、英語教育に生成AIを利用する際の注意点を理論的観点から整理します。その後、実際に参加者の皆さんにLexiTrackerを体験していただき、理論と実践がどのように結びついているかを理解していただきます。ワークショップはハンズオン形式で進めますので、参加者の皆様は可能な限りBYOD(Bring Your Own Device)へのご協力をお願いいたします。
【講師略歴】
関西大学 外国語学部・外国語教育学研究科教授。専門はAI、コーパスの教育利用、語彙学習方略、言語テスティング。近年は生成AIやコーパスを利用した学習と指導に関する研究を主に進めている。著作に、『外国語教育研究ハンドブック【増補版】―研究手法のより良い理解のために』(2023年, 松柏社,共編著)などがあり、専門分野に関する論文は多くの国際ジャーナルに掲載されている。https://urldefense.com/v3/__http://mizumot.com__;!!CF15FET90Tp8!HW2Q8lYCfia1h8BEFwOdWKIS5Iwv2O-Ez7y74625FNG6t_XCJ7OWcuA6IybXCCwAAdfMI3KBXHClJbB0DLcnke4Z504$
10:45-11:55 企画ワークショップ4
【講師】
山下 美朋 先生(立命館大学)
谷野 圭亮 先生(大阪公立大学高等専門学校)
南部 久貴 先生(滋賀県立彦根東高等学校)
【概要】
近年、AIを英語教育に活用する授業実践が行われている。本ワークショップでは、高校・大学それぞれの現場で取り組んだ実践と、使用したAIツールを紹介する。山下は、英文作成支援ツールTransable(https://transable.net/)を使い、大学一回生に行った作文指導とその課題について報告する。谷野は、Google SpreadsheetにMeta社のLlama-3.3-70b-versatileモデル(Groq社のAPI経由)を組み込み、Google Formsでエッセイを収集・AI自動採点し、GASを用いてGoogle Docsへフィードバックを出力する持続可能な英語ライティング指導フレームワークを提案する。南部は、主にスピーキング活動における生成AIの活用について、実際に使用しているアプリや実践例を交えて紹介する。
【講師略歴】
山下 美朋 先生
立命館大学生命科学部生命医科学科 教授。関西大学外国語教育学研究科修了。外国語教育学博士。専門は、外国語(英語)教育、第二言語ライティング。近年、高校から大学につながるライティング教育や、AIを活用した授業実践を行う。著書に、『英語ライティングの指導: 基礎からエッセイライティングへのステップ』(三修社)『AI・機械翻訳と英語学習-教育実践から見えてきた未来-』(朝日出版社)がある。
谷野 圭亮 先生
大阪公立大学工業高等専門学校 専任講師。ICTを活用した英語教育やCLIL(内容言語統合型学習)に興味を持ち、AIが組み込まれた学習支援システムが学習者の情意面に与える影響についての研究に取り組んでいる。関西英語教育学会幹事、外国語教育メディア学会(LET)関西支部運営委員、日本CLIL教育学会 Asian CLILジャーナル編集委員、検定教科書編集協力委員。趣味はクラフトビール。
教師支援ツール: https://taninon.sakura.ne.jp/teacher_tool/index.html
南部 久貴 先生
滋賀県立彦根東高等学校 英語科教諭/京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士後期課程在籍(指導教官:金丸敏幸先生)。文部科学省「AIの活用による英語教育強化事業」および滋賀県「英語教育イノベーション事業」のAI英語活用リーダーを務めている。著書に『英語教師のためのChatGPT活用ガイド』(2024年、明治図書)などがある。
15:25-16:55 講演2
【講師】
福島 玲枝 先生(畿央大学)
【概要】
本講演では、中学・高校で取り組んできたリテリングや自己表現活動を出発点として、スピーキング指導・評価における工夫とその背景にある理論的視点を紹介します。とくに会話分析の視点を取り入れ、限られた言語資源の中で学習者がどのようにやりとりを構築しているのかに注目します。そのうえで、「何ができているのか」、「何をできるようにしたいのか」を見極め、支援する方法を考察します。こうした捉え方は大学の一般教養科目などの大人数授業でも応用可能であり、活動設計、授業運営、評価の観点から、具体的な実践例を交えてご紹介します。
【講師略歴】
畿央大学 教育学部 現代教育学科 准教授。
東京・大阪の国公私立中学校および高等学校での指導経験を経て、現職に就く。東京書籍『NEW FAVORITE I・II・III English Logic and Expression』編集委員。専門は、質的分析を用いた生徒間の相互行為の研究。とくに会話分析(Conversation Analysis)の視点から、授業実践への応用可能性を探究し、対話的な学びを促進する授業デザインに取り組んでいる。 https://researchmap.jp/a.fukushima