検査性に優れる一方,THz照射は長い波長から細胞といった微細試料の計測には課題を残しておりました.当研究室では従来のTHz計測における回折限界を打破すべく,表面プラズモン伝搬とう物理現象に着目しております.表面プラズモン伝搬とは,周期的な金属構造における自由電子の集団的な振動と解釈されます.ブルズアイ構造と呼ばれるアンテナへTHzを照射することで,照射波長よりも微細な中央アパーチャーに向けてアンテナ上での表面プラズモン伝搬が生じ,当研究室では実際に波長以下サイズ領域におけるTHz検出応答信号の増強を実証してまいりました.
当研究室では更に周期構造が制御されたスプリットブルズアイアンテナを設計し,表面プラズモン伝搬による超解像THz計測に対して,アンテナ側での能動的な波長選択性の獲得に成功しました.つまりTHz時間領域分光(THz Time-domain spectroscopy: THz-TDS)を疑似的に超解像計測として行うことが可能となり,当研究室では実際にスプリットブルズアイアンテナによる超解像THz分光イメージングを通じて,マウスの肺胞に対する非破壊・非侵襲・非接触な可視化検査を実証しました.
THz-TDSは超解像THzアンテナの評価において重宝されておりますが,当研究室ではTHz-TDSによる非破壊検査プロトタイプの構築にも取り組んでまいりました.特にTHz波長域には,高分子構造に対する指紋スペクトルが多く含まれております.当研究室ではこれらの指紋スペクトルを情報源として活用し,目視では識別が困難な異種医薬品を対象に,THz-TDSによる材質同定型の非破壊な分光イメージングを実証しました.