ニシキエビス

Calliostoma multiliratus (Sowerby III, 1875)

レア度:たまに見られる

形態:整った円錐形をした小型の巻貝(約2㎝)。貝殻表面に細かいすじを張り巡らせている。大斑と小斑からなる美しい模様が特徴的。ヤドカリ類のおしゃれアイテム。

生息域:本州以北~サハリンに分布し、主に潮下帯の岩礁に生息する。葛登支では沖合の平磯でみられるが少なく、生息の中心はさらに深くにあると考えられる。

生態:親貝は多量の粘液とともに海中に放卵し、各卵粒は相互に粘着してヒモ状になる (佐々木 1985)。卵膜周辺はゼリー状の物質に覆われて直径700㎛に達する (佐々木 1985)。子は浮遊幼生としてふ化し、幼生の殻長は390㎛ある;これは直達発生するヤマザンショウガイアコヤシタダミエゾチグサなど (265–270㎛) と比べてもはるかに大きい (佐々木 1985)。

その他:この属のメンバーは捕食者に対する物理的・化学的な防御反応を発達させている (Bryan et al. 1997; Herstoff & Iyengar 2011)。本種の貝殻にはしばしば破壊の跡と修復痕がみられるので、これが捕食(たとえば、カニ)からの生還を意味するのならば、やはり本種もなんらかの術をもっているということだろうか。

2018年8月 山上大きく割れた痕跡がある。カニに襲われるとこのような割れ方になる。
2020年7月@積丹 大友
2018年7月 山上
2020年9月@奥尻島 大友病気?のキタムラサキウニを食す
2020年10月 大友
2021年2月 大友
2021年6月 とみよし
2021年6月 とみよし


引用文献:

  1. Bryan, P. J., Mcclintock, J. B. & Hamann, M. 1997. Behavioral and chemical defenses of marine prosobranch gastropod Calliostoma canaliculatum in response to sympatric seastars. Journal of Chemical Ecology, 23: 645658.

  2. 佐々木良. 1985. 気仙沼湾周辺におけるエゾアワビ浮遊幼生の査定と出現. 水産増殖, 32: 199–206.

  3. Herstoff, E. M. & Iyengar, E. V. 2011. Individuals of Crepidula adunca (Mollusca, Gastropoda) avoid shared doom through host specificity. Journal of experimental marine biology and ecology, 406: 79–86.