ベルグウミウシ

Stiliger berghi Baba, 1937

レア度:めったに見ない?

形態:体長は2~3㎜ほどの極小ウミウシ。背面にミノを持つためにミノウミウシ (例えば→エムラ) の仲間に見えるが、本種には口触手がなく明瞭に識別できる。背面のミノは7~8対あり、透明で小白斑が散在し、中を通る消化管の朱色が透けて見える。マクサを食んでいる様子が見られたため、消化管の色は食物を反映しているのだろう。頭部にはつぶらな瞳が1対。触角は太く、先端近くに褐色の輪がある。体は透明だが、白い中身 (何だろうか…?筋肉?) が見えている。

生息域:葛登支の水路で採集したマクサを放り込んでいた水槽内で、壁面を歩いているところを発見。

生態:主に糸状の藻体をもつイギス目紅藻類をホストとし、それらの細胞内容物を吸っている (Klochkova et al. 2010; Trowbridge et al. 2010)。忍路湾では主にエナシダジア、副次的にイトグサ属に高密度に観察されている (Trowbridge et al. 2010)。本種が属する”嚢舌目からは葉緑体を取り込んで光合成し、エネルギーを得る種類が知られているが、本種にそのような能力はない (Klochkova et al. 2010)。交尾の際にはまず2個体が頭をつき合わせ、続いて体の右側面を併せるようにして相補的体制になったあと、数分で精子交換が済まされる (Trowbridge et al. 2010)。

その他:ミノと体が透明なため、消化管がミノの中まで入り込む構造がよく観察できて面白い。

2021年3月 大友
2021年3月 大友
2021年3月 大友

引用文献:

  1. Klochkova, T. A., Han, J. W., Kim, J. H., Kim, K. Y. & Kim, G. H. 2010. Feeding specificity and photosynthetic activity of Korean sacoglossan mollusks. Algae, 25: 217–227.

  2. Trowbridge, C. D., Hirano, Y. J. & Hirano, Y. M. 2010. Sacoglossan opisthobranchs on northwestern Pacific shores: Stiliger berghi Baba, 1937, and Elysia sp. on filamentous red algae. Veliger, 51: 43–62.